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2014年6月16日月曜日

そこはかとない伝説

 来ないとなれば、申し合わせたように誰も来ない八丁堀の路地のとあるビルの一室。このまま書を捨てて街に出て、そこらへんをほっつき歩いてたって誰に文句を言われることのない素晴らしい職業・・それが古本屋です。梅雨の谷間の陽気に誘われて、ついその辺までのそぞろ歩きが、いつしか若大将のゆうゆう散歩ばりの町歩きに変貌。今日はちょっと足を延ばして銀座2丁目の路地裏に店舗を構える中村活字さんまでやって来ました。
 やって来たって、なんら生産的活動に従事するわけではないのですが、私はここで以前、店の名刺を作ってもらって、社長の中村明久氏と顔見知りになりました。といっても、この中村さんが実に人を逸らさない人物で、一見客の自分にもガハハハ笑いながらいろんな話題を振ってくれて、すぐに10年来ぐらいの知り合い気分にさせてくれたのでした。で、今日はせっかく来たので、当店のDMを置かせてもらうことに。はいよ、そのへん置いときなと言わんばかりに快諾。そのDMを作ってくれたデザイナーさんとは、中村さんの店で知り合ったのですが、たまたま居合わせたところをいい塩梅で引き合わせてもらったという感じです。その辺の妙を心得ているのが中村さんの凄いところで、それがあまり凄く見えないところがまた凄いと言えます。 
 聞けば、ずいぶん有名な人も中村さんのところに出入りしているようで、名前を言えばうちの母親あたりでも知っていそうな人物もいます。だからといって、有名人御用達の店といった趣を見せないので、母親以外は名前を知らないような自分でも躊躇することなく入れるのです。界隈の情報が行き交う場所でありながら、ガートルード・スタインのサロンのようなスノッブさもなく南天堂の2階みたいな猥雑さもありません。ただ路地裏の爽やかな風がひゅーっと吹き抜けていく感じでしょうか。1910年創業だそうですから、今年で104年目。これ見よがしでないところが、老舗の風格なのかもしれません。

中村活字、入って右手。格好いい印半纏と
木味のいいテーブル。このテーブル、いらなく
なったら売ってくださいと言っても、
ガハハハと中村さんは笑うばかり。





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