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2014年9月29日月曜日

若大将気取り

10/1(水)は所用のため臨時休業いたします。
なにとぞご了承くださいませ。
また、10/5(日)は有楽町東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店いたします。
皆さまのお運びをお待ちしております。

 ビルの一室にこもって仕事をしているのが、あたかも罪悪であるかのような日和が続いているので、定休の半日を費やして自宅近辺をそぞろ歩いてきました。
 10月中旬くらいまでは暑かった気がしたここ数年だったのに、今年はずいぶんあっさりと秋めいてしまって、どうしちまったんだ地球のやつ・・と思わなくもないのですが、なにしろ清々しいのは有難いかぎり。まずは、テレビで今が見頃だと知った萩のトンネルをくぐるためだけに向島百花園へと足を運びました。テレビの情報は概ね話半分ですから期待をせずに行ったのですが、これは良かったです。半円状に編んだ竹の柵に沿うように萩が咲いて、ほんとにトンネルになっています。萩は朝顔みたいに勝手には巻き付かないので、トンネル状に竹柵に乗っかっているのは、職人の手によるものだと入口で職員が解説していました。園内は広くありませんが、入園料150円で維持するのは大変だと思いました。
 明治通りに出て、てくてく歩いてデニーズ墨田堤通り店にて昼食。ファミレスはコストパフォーマンスが悪くメニューに外れが多いので、できれば避けたいところでしたが、空腹に堪えかねたので仕方なく入店。しかし空腹は最高の調味料の言葉通り、図らずも充実のランチを満喫。ここのデニーズは外に大きな人工池があって、それが窓際の席から臨めるのですが、金魚が群れていたり、鶺鴒が水辺で尾を振ったりするのが見えて、結構楽しいのでした。
 それから格好いい白鬚橋を渡って荒川区へ入りました。この辺りは土地に起伏がなくて、やけに平たくて見通しがいいところが続きます。坂が多くて陰影のある町並みとは違って情緒がないように思えますが、フラットな人工感と川辺の景色の混交は、白日夢のような感覚を喚び起こします。これは山手や他の下町では味わえないでしょう。ホッパーの絵が好きな人にはオススメできそうです。
 そして有名な泪橋の交差点を左折、てくてく歩いてこれまた有名なカフェバッハに入りました。コーヒー好きと唐津好きは昔からやかましいものですが、そんな人も黙って味わっているのが、バッハのコーヒー。だからと言って、気難しいヒゲのマスターなんかはおらず、週刊少年ジャンプやモーニングの最新号がきちんと配備されているのも素晴らしい限りです。
 バッハを出て吉野通りを東にてくてく歩いていると、いつの間にか台東区に入ります。日曜日の閑散とした道も、今戸のバス停を過ぎた辺りから徐々に賑わってきて、浅草が近いことが分かります。そして六区あたりの喧噪に突入。漫画喫茶でしばし時間を潰してから外に出ると、夕暮れの仲見世がとても感傷的に目に映るのでした。こうして下町を三区も歩き廻ると、誰にも握手を求められなくても加山雄三にでもなった気分です。
 というわけで、今週もよろしくお願いいたします。

百花園内のススキ



萩のトンネル。



隅田川




白鬚橋



とちまるくん


「土師器」
胴径12センチ、高さ12センチ
やわらかな肌とふっくらとした形。
口まわりに欠け有り。      
SOLD OUT

 
 
 
 
 



2014年9月25日木曜日

たまたまのたまもの

10/1(水)は所用のため臨時休業させていただきます。
なにとぞご了承くださいませ。

 本日も泣きながら仕入に行ってまいりました。なにも泣くことはないわけですが、嬉しさとも哀しさともつかないエモーションが心を覆うのです。それは現時点での人間界の文法では表すことができない名づけ得ぬ感情で、仕入とはどうやらそういう心の動きを惹き起こす行為のようだと、この仕事を通して知りました。そうは言っても、いい年してシクシクしながら町を歩いていたらいささか薄気味悪いので、はた目には多くの債務整理の案件を抱えた司法書士にでも見えるように振る舞っておりました。
 さて肝心の商品ですが、なかなかによく分からないものを入手することができました。下っ端なので、振り手から遠い下座にいるわけですが、そこからだとどうも物がよく見えません。当てずっぽうで声を出して、あとで山を見ると、見当違いのものが混じっていたりして、誰だよこんなの落としたの!と独り憤るも、自分しかいないのですから、明らかに自分が落札したものです。ただ、自分の感度に引っかかるものばかり見ていても、徐々に行き詰まっていきますから、こういう偶然がもたらす機縁は大事にしないといけません。この業界、何がどう化けるか分からない。とはいえ、それにばっかりに期待しても山っ気が顔に出るので要注意です。



『日本見學旅行② 関東・北陸・中部篇』
中島徳行 金の星社 1943年12月31日初版
背色アセ、頁外れ箇所有

フランスの少年向け国内見学記に倣って
刊行された日本の社会見学のような体裁

状態はよくありませんが、これはちょっと
うれしい買い物です          

『實地養蠶法』
明治43年5月15日 伊達蠶桑社
背破れ、表紙角破損・シミ

どうしていいか分からない品物
現代の養蚕業にも通じるテキストかどうかは
  分かりかねますが、表紙は特色金を使ったりして
割と瀟洒な風合い            

『實験 牛馬耕法』
長末吉 吉原丈作発行 大正9年11月20日
表紙破損有                 

これも手に入れてもどうすることもできない
のですが、図版の絵は丁寧で楽しめます  

畦の耕し方の図版は二色刷りになっていて、
目に鮮やかに飛び込んできます      
 

2014年9月23日火曜日

箱の中の箱

9/25(木)は仕入のため開店時間が14時頃になる予定です。
10/1(水)は所用のため臨時休業いたします。
ご了承のほど、よろしくお願い申し上げます。

 開店前に南青山OVEで今日から始まった「手の仕事、使う愉しみ これあったいいな」展を見てきました。Web上で工芸作家等を紹介しているパノラマによるギャラリー展示です。名実を兼ね備えた当代の人気作家の作品が一同に会する機会とあって、秋空の下を血眼になって小走りで道行く人を見かけるかと思ったのですが、土地柄なのかそんな人を目にすることもなく、目的地OVEに到着。目当ては、4人のギャラリーオーナーと1人のデザイナーが、ガラス付ボックスの中に各々手持ちの作品を陳列するというコレクションボックスを一目見ることです。店内には作家の作品が数多く並んでいますが、よんどころない事情で物欲を刺激されては困るので、意図的に視野を狭くしてボックスだけを見るようにしました。主催のパノラマさんにとっては、この手は歓迎すべからざる客でしょうから、目的を済ませたら早々に退散する予定です。
 ふだんは店という空間に人を招き入れて設えを提示するギャラリーが、小さな箱の中でそれを表現しないといけないのですから、いわば中編小説を五・七・五に収斂させるみたいなものでしょうか。ここで駄文を連ねても仕方ないので、どうか足を運んで実際に見てください。個人的にはうつわノートのオーセンティックな並びの中にあった梶原靖元氏の茶碗が欲しくなりました。ガラスケースを叩き壊して奪取する妄想も浮かびますが、ギャラリーですから適正な対価を支払えば入手は可能でしょう。そこが博物館・美術館との違いです。身銭を切れば自分のものにすることができる。当たり前の話ですが、恐ろしい法則です。それではいくらあっても足りないではないですか。


 
当店のコレクションボックスはこんな感じです
セルロイドの小箱 縦5.1×横2.7×奥行1.6センチ蓋付 SOLD OUT
左から土錘の欠片 SOLD OUT、 弥生時代 SOLD OUT、鳥が線刻された土錘 南米、
ファーバーカステルの鉛筆削り ドイツ製  SOLD OUT       

2014年9月22日月曜日

プリミティブ

9/25(木)は仕入のため開店時間が14時ぐらいになるかと思います。
また、10/1(水)は所用のため臨時休業いたします。
なにとぞご了承くださいませ。

 昨日は有楽町の東京国際フォーラムで毎月第1・第3日曜日に開催される大江戸骨董市に初出店をいたしました。懸念されていた天気ですが、起きて窓を開けたら、朝焼けのベランダで戸惑ってしまうぐらいのいい日和。で、よし1年分ぐらいの家賃を稼ぎ出すぞ!と勇んで出かけたのですが、そもそもすべての商品を売り上げてもそんな額にはならないのですから、初っ端の意気込みからすでに間違っているわけです。
 とにかく目についたものをやたらめったらバッグにぶち込んで持って来たつもりだったのに、並べてみるとかなりスカスカで寂しい限り。両隣の充実具合に挟まれていたたまれない気持ちでしたが、あまりの気候の良さにいつしかそんなことも忘れて、葉山の保養所にでもいるかのような行楽気分に浸りながら商売をしておりました。そんな日和ですから人出もあって、店ではついぞ経験したことがないほどに、多くの方にものを手にしていただきました。毎日これぐらい店で売ってたらビルが建つんじゃなかろうかと妄想していたら、長時間おかしな体勢で座っていたためか、下腿三頭筋のあたりがつってきました。売ったらもちろんその分を仕入れてこなければならなくて、それこそがこの商売の苦労なわけで、買いが仕事ってこういうことかあと今さらながら実感した次第なのでした。
 なんにしろ、ペラッと敷いた布切れの上にものを並べて売り買いをするというのは、商いの原初的な形態という感じで面白いものでした。



よくわからない商品構成
次回10/5も出店いたします。いいものを探してまいりますので、
よろしくお願い致します。                 

2014年9月19日金曜日

沈黙の詩人

9/21(日)は有楽町東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店いたします。
売上げはもちろんですが、まず早起きできるかが最大の懸案事項です。
皆さまのお運びをお待ちしております。

 昨日の帰宅途上の裏路地で、ポロシャツを後ろ前にして着ている老人男性を見かけました。Tシャツならばあり得そうな話ですが、ポロシャツは初めて見ました。いったいどういう了見でそんな着こなしをしているのかを聞いてみたかったのですが、どこか人を寄せ付けないオーラを発していて、どんなに人懐っこい人であっても語りかけるのが憚られる雰囲気でした。
 スティーブ・ジョブズの着こなしをアイコンとするノームコアという流れがここ数年のファッショントレンドだということを、最近知りました。凄い普通という意味だそうですが、巡り巡って人と区別のつかない格好が最先端になるというのは、まるでデュシャンのレディメイドのようです。もしかするとあの老人の格好は、理屈先行に陥りがちなコンセプチュアルなシーンに一石を投じる言葉にならない詩だったのでしょうか。





詩人たちの本が数冊入りました。
前列右『高橋新吉の詩集』日本未來派発行所 1949年初版 SOLD OUT
                          前列左『川崎洋詩集』国文社 1968年初版 SOLD OUT           
                        後列右『忘れられる過去』荒川洋治 みすず書房  2003年第4刷 SOLD OUT       
     中『夜のある町で』荒川洋治 みすず書房  2000年第4刷 SOLDOUT      
                                 左『母系家族』長谷康雄 思潮社 1964年初版  SOLD OUT                            

2014年9月18日木曜日

発見の発見の発見

9/19(金)は仕入のため開店は14時からです。
9/21(日)は有楽町国際フォーラムの大江戸骨董市に出店いたします。
どうぞよろしくお願い致します。

 開店前に東京ステーションギャラリーで開催中の『ディスカバー、ディスカバー・ジャパン「遠く」へ行きたい』展を見てきました。1960年代の高度経済成長により金銭的な復興は遂げた日本ですが、公害や乱脈な開発などによる国土の荒廃という代償を払わなければなりませんでした。その疲弊からの脱却としての旅、ということで「ディスカバー・ジャパン」と銘打たれたキャンペーンが、70年代に入ってすぐ日本国有鉄道をクライアントとして大々的に打ち出されたわけです。
 日本のどこだか分からない場所で女性モデルが写り込んだブレブレの写真。いま見てもかなりかっこいいポスターです。期を経るにしたがい、国鉄の意向でキャプションめいたコピーが入ってくるのですが、初期のビジュアルはイメージ戦略の純度が高く、こんなのがまとめて古書市場に出たら良い値が付きそうだなあと思いながら見ていました。藍柿より初期伊万里、キュビスムより青の時代、ヒクソンよりエリオ。より初期の方が人の心を打つのでしょうか。
 ところで、関連展示として放映されていたTVの「遠くへ行きたい」1973年2月5日放送〜伊奈谷の冬〜が面白かったです。伊丹十三が長野の下栗という山奥の村を訪ねるドキュメンタリーなのですが、伊丹の端正で人を食ったようなナレーションと珍妙なファッションが、荒っぽい16ミリフィルムの画面とマッチして、デザインとコマーシャリズムの人としての伊丹十三の面目が遺憾なく発揮されていると思いました。そしてなぜか村の随所にいて、唐突にカットインされる当時18歳ぐらいの高沢順子。フィルムの説話論的持続とは無縁に映っていた高沢が、伊丹のナレーションによって、この子は明日嫁ぐこの村の娘だとおもむろに紹介されます。それで、この放送が最初から疑似ドキュメントであることが正式に明かされるわけですが、そのことの是非はともかく、若き日の伊丹十三と高沢順子が見られるというだけでも入館料900円を払う価値はありました。
 このギャラリーは出口を出ると、東京駅丸の内北口の吹抜けの2階回廊に出る造りになっています。下を行き交う人々が妙に絵になりすぎていて、まるで画面の向こうの出来事のように見えて、一瞬現実から乖離した印象を受けるのも面白いと思いました。



 
 

『ディスカバー、ディスカバー・ジャパン
「遠く」へ行きたい』展図録
2014年9月12日発行
東京ステーションギャラリー内
トレニアートにて発売中   
2,000円    

2014年9月15日月曜日

尾張之國紀行

9/21(日)は有楽町の東京国際フォーラムで開催される大江戸骨董市に出店いたします。皆さまのお運びをお待ちしております。

 13日土曜日に、店を閉めて帰宅した後、身じたくを整えなおしてふたたび東京駅に出て、高速バスの夜行便で名古屋へ行ってきました。三連休ということもあってかバス乗り場はすごい混雑で、到着待ちの人たちが座り込んで足の踏み場もないほどでした。実際に2人ぐらいは踏んづけてしまった気がします。すみませんでした。
 乗ったバスの作りが手狭で、窮屈でほぼ一睡もできないまま、朝6時過ぎに名古屋駅手前の笹島に到着。朦朧とした頭上には爽やかな快晴の青空。その下をバスから降りた人間が一斉に名古屋駅に向かいます。まずは名高い喫茶店のモーニングを求めて交差点をぐるぐるウォーニング。と、どうでもいいライムをかましながら歩き廻るも、なにしろ初めての土地、駅前にあるはずの有名な「リヨン」さえも見つけることができず、結局は空腹に堪えかねて、JR駅構内のすみっこに佇むドトールにて朝食。
 そして市営東山線と名鉄瀬戸線を乗り継いで、尾張瀬戸駅へ向かいます。目的地はそこから歩いて数分の「瀬戸蔵ミュージアム」という公益財団法人施設。とあるブログで、そのミュージアムの3階にあるという発掘の山茶碗を編年でずらりと並べたコーナーの写真を見て、いったい誰がこんな地味な博物館に行くのだろうかと思い、自分が行くことにしたのでした。そんなマイノリティの優越に浸りながら、各駅電車に50分ほど揺られて着いた終着駅が尾張瀬戸です。
 最果ての街にポツンとひとり降り立つ、つげ義春的光景を夢想していたのですが、どうも改札から出る人の数が尋常ではありません。これほどの人が山茶碗に関心を!?さすが焼き物の土地だ・・と驚いていたのですが、どうやらこの日は、近隣の陶器屋や窯元が商品を安値で放出するせともの祭りがあるみたいです。川を挟んだ両側道沿いにテントがズラリと連なっています。陶器だけでなく食べ物の出店もあり、朝早いにもかかわらず賑わいが始まっています。横手やきそばの露天もあります。瀬戸と横手ではずいぶん距離があるけど・・と思いましたが、そういう鷹揚さがお祭りなのでしょう。
 さて、目的の瀬戸蔵ミュージアムは予想外に立派な建物で、施工には相当費やしたことが想像されます。
長机がいっぱい並ぶところが
   商工会のお祭りっぽいですね。  

吹抜けの天窓から青空が

入ってすぐ。昔の瀬戸線。












猿投です。上から三段目の左端の
段皿は欲しいです。      


端正な形の初期山茶碗


一挙陳列といったおもむき


 瀬戸の発掘物を堪能してから名古屋に戻り、せっかくなのでランチにひつまぶしを食べることにしました。まずは名鉄9階の「まるや」に行ってみるも、今日中に食べることは不可能ではないかと思われるほどの大行列。ぼんやりと食べログあたりで察しをつけて、笹島交差点方面の「うな善」に行ったらすぐに入れました。名物にうまいものなしと言いますが、うな丼をだし汁で食すなんてうまくないわけがないわけで、実際たいへん旨いものだと思いました。
 食後は市営桜通線で車道まで出て、ギャラリー「feel art zero」で開催中の「遥かなるシルクロード 長谷川竹次郎」展を見てきました。人間国宝に師事した作家が手がける金工の茶道具となると、自分には縁遠いだろうと思っていましたが、中に入るなり欲しいものが数点目につきます。危険な兆候です。自分へのご褒美と言ってものを買う人がいますが、私の場合、褒美に価する働きがありませんのでこの言い訳は通りません。結局しばらくギャラリー内を右往左往して、これひとつ買ったからといって即廃業に追い込まれるわけではないと理屈をつけて、小さなものを一個購入。泣きたいような嬉しいような気持ちで名古屋に戻りました。
 次は名鉄本線で神宮前まで行って熱田神宮を参拝。改札を出てすぐに見える鬱蒼とした木々からして社格の高さがうかがえます。ジャリジャリと砂利を踏みしめながら本殿をお参りしてから、神宮内の茶屋で休憩。蚊におののきながら大盛りのかき氷を平らげました。名古屋に戻り、名鉄地下街の「コンパル」にて帰りの高速バス車内で食べるエビフライサンドを購入。ひつまぶしやら竹次郎やらエビフライやら、喜寿のお祝いかと錯覚するような贅沢ぶりですが、これが人生の余剰というものでしょうか。
 帰りのバスは横浜あたりで渋滞にひっかかり、東京駅到着が大いに遅れました。最寄地下鉄の終電までもはや数分のところを、カラックスの登場人物になったつもりで真夜中の街を疾走して、ギリギリ間に合にあった次第。コンパルのエビフライサンドは超絶的に旨いものでした。


 
熱田神宮東門を入ってすぐ
木のトンネル      

樹齢千年を越すと言われる楠木



名古屋コーチン?参道を堂々と横断



強行スケジュールでしたが
楽しい旅でした。     

2014年9月13日土曜日

秋の断想

 11〜13日は開店を遅らせて仕入に東奔西走(というほどではありませんが)しておりました。昨日今日と、とつぜんに空気が爽やかになり、あまりの清々しさに外に出たとたん走り出してしまったのですが、すぐに息が切れてしまいました。考えてみれば、走る理由など特に無かったので、気を取り直してのんびりと仕入にでかけました。 
 3日も仕入に費やせば、さぞかし山のように在庫が増えて滝のように売る準備が整ったのかと思いきや、まったくそうでもないあたりが自分らしいと言わざるを得ません。そんな自分らしさをこれからも大切にしていきたい。とか暢気なことを言ってる場合ではありません。古物業なんて、ある程度の量を捌くことで経験と知識を蓄積させて、ある日忽然とブレイクスルーがあり得る仕事なのに、気に入ったものだけチマチマ集めていて、果たしてどうなることか。とは言え、買った荷物の袋を肩に食い込ませながら店に向う道というのは楽しいものです。電車などで大荷物を抱えて薄笑いを浮かべている人がいたら、8割がた古物業者と見ていいかもしれません。


入荷したものの一部をご紹介
        前:『郷土玩具 ①紙 ②木 ③土』読売新聞社 1969年 SOLDOUT            
その上:英国製のメジャー                       
後ろ右から:ガラスの蓋もの SOLD OUT 中:『葛飾北斎』野口米次郎私家版 1930年 SOLD OUT
 左の本:『色ガラスの街 復刻』尾形亀之助 名著刊行会 1970年 元版1925年惠風館 SOLD OUT
                    その下:土師器高坏残欠 古墳時代 SOLD OUT その左:穴あけパンチ ドイツ製     

2014年9月11日木曜日

頓珍漢パラダイス

9/12(金)・13(土)は仕入のため14時からの開店です。
ご了承くださいませ。

 本日は仕入のため、遅い開店でした。前回は何も仕入れられずに帰ってきたので、今日は張り切っていくぞと思いながらも、張り切り過ぎると空回りすることが人生での経験上分かっているので、適度に張り切りたいところなのですが、その加減が難しく、テンションの調整がつかないままで終始してしまいました。
 競合いになると踏んで高めにヤリを突いたら、自分しか声を出してないとか、それを踏まえて安く落とそうと思ったら、今度は安過ぎて不成立だったり、競って落としたら目当てと違う山の商品だったとか、今日は概ねそんな感じでした。それでも買えないよりは楽しいものです。問題はその楽しさがお客様にも伝わって、身銭を切ってもらえるところまでつなげられるかです。独り善がりの物差しがどこまで通用するのか。度が過ぎると薄気味悪いものですが、偏りがなくては人はこちらに転んでくれないでしょう。平均から遥か遠ざかりながら、普通の顔して生活していく。変な商売です。


『朝鮮のやきもの 李朝』
赤星五郎・中丸平一郎 淡交社
写真 坂本万七・牛尾喜道 
1972年4月28日再版
カバー少痛み 見返し蔵書印

今日買った山に入っていた1冊。       
著者の赤星五郎は小林秀雄の随筆「徳利と盃」で
    Aと表される人物。やきもの収集家の赤星との珍妙な
 駆引きの末に、小林は 刷毛目の徳利と鶏龍山の
    盃をまんまとゲット。                            




今となっては名品図録のようなおもむき
ですが、眼の保養に。        

SOLD OUT


 
 
 
 


2014年9月9日火曜日

胡散

9/11(木)・12(金)・13(土)は仕入のため14時からの開店です。
よろしくお願い致します。

 ここ数日のうちでは、カラッとした秋らしい陽気になりました。そして季節の移ろいに同期するように、当店の売上もカラッとし始めています。もっとも、その前はジメッとしていたし、もっと日が経てばヒューヒューしてくるでしょう。いずれにしろ、財を成すのを促すようなオノマトペというのは、なかなかないようです。
 それでも立ち寄って店内をいろいろ見てくださるお客様もあり、ありがたい限りです。なにしろ誰かしらに来ていただかなければ、成立しない商売です。ゼロをいくら積んでもゼロなので、とにかく一人でも足を運んでいただく。そう言いながら、集客に対する販売促進や営業戦略をまったく講じていないあたり、企業ではあり得ない話でしょう。そんなあり得ないことを成し得るのが、この商売の醍醐味かもしれません。どうです、皆さんも新規参入してみませんか?

『機械』
横光利一 白水社 装幀 佐野繁次郎
1931年4月10日初版 函少痛み 頁一部書込み

極度に不穏で胡散臭い人間関係。
永遠の新感覚小説『機械』所収。

SOLD OUT


2014年9月8日月曜日

崖の上の

 武蔵小金井のはけの森美術館で開催していた「猪熊弦一郎展  どんなことをしても僕なんだ」を見てきました。この辺は、武蔵野台地から沖積層へとなだらかに下る国分寺崖線という地質にあたり、そこを「はけ」と呼ぶそうです。「はけ」の地は古来から湧き水に恵まれ、美術館の敷地内にも小さな水の流れがありました。水の豊富なところには、当然のごとく木々がよく育ちます。黒々とした木が生い茂り、その名の通りはけの森なのでした。
 猪熊弦一郎は三越の包装紙のデザインで知られますが、出自は洋画家です。とにかく器用で瀟洒な画風の人というのが第一印象です。10 歳の頃の牛を描いた絵が掛かっていましたが、子供らしからぬデッサン技術がすでにあって、あまり上手いので、尋常小学校の先生が、図工の時間は猪熊に絵を教えさせたそうです。だからと言って、ピカソみたいに悪魔的に上手くて反感を覚えるような感じはなくて、どことなく微笑ましいところがあるのは人柄なのでしょうか。描こうと思えばなんでも描ける人らしく、若い時の絵はそれこそピカソ風であったり、ゴーギャンっぽかったり、モンドリアンもどきだったりします。
 1938年にフランスに渡りマティスに絵を見てもらう機会を得ましたが、「上手すぎる」と言われてショックを受けたといいます。私なんかも小学生の頃に、教頭先生が掘り返した花壇の土に二階から正座のまま飛び込んで、担任から「馬鹿すぎる」と言われたことがありますが、子供はこんなことを言われると却って得意になったりするものです。猪熊の状況とはまるで違います。上手さが逆に枷になるとは辛いことでしょう。渡仏中は自分の身体を丸ごと作り替えるような厳しい潜行期間だったのかもしれません。
 好きなものをひとつ持っていけと言われたら(言われたことはありませんが)、樽の上に乗ったロバ?の背中に猫が載った小さなペン画をいただきたいと思いました。博物館・美術館に行くたびに妄想コレクションが増えていきますが、実際の店の方にいい売り物が並ばなければ意味がないですね。今週もよろしくお願い致します。


 
連雀通りから入る北門をくぐると、こんな
森のアプローチが美術館入口まで続きます。


分かりづらいですが、葉陰には水が流れて
います。               

2014年9月6日土曜日

サマーリーフ

 島田潤一郎氏が吉祥寺のマンションの一室でひとり営む出版社、夏葉社が5周年を迎えたことをお祝いするイベントが、阿佐ヶ谷のギャラリーで開催されることを耳に挟んで、仕入を兼ねて出向いてみました。夏葉社と縁のある古書店何店舗かが、いいものを並べるとのことです。この手の催しには予想外に多くの人が集まると察して、開場時間前に到着したのですが、ギャラリー前にはすでに予想外に多くの人が並んでいました。
 ボン書店や書肆ユリイカなど、プライベートプレスというのは古くから存在していましたし、今もありますが、出版斜陽の時代に敢然と版元を立ち上げるのは、勇気と無謀の区別がつかない行為でしょう。そんな島田氏の蛮勇に惹かれた人たちが、夏葉社の一層の発展を願って全国各地から集まったというわけです(想像)。
 さて、いざ開場しますと瀟洒なギャラリーはたちまち満員のモッシュ状態に。さながら81年に法政大学で行なわれたスターリンのライブのようです。名だたる古書店からの出品だけあって良書揃いですし、値付けもお祭り価格なのか破格です。一見すると、みんな漁書に夢中で5周年記念はそっちのけの感がありますが、実はこの賑わいこそが、夏葉社を言祝ぐ祝祭空間の表れなのだと言えます。というわけで、島田氏と面識はありませんが、夏葉社5周年おめでとうございます。

各店舗の破格の値付けに、レジ担当の島田氏も
  思わず「安いなー」と漏らしていました。    







 

2014年9月5日金曜日

毎日がエブリデイ

9/6(土)は仕入のため14時からの開店です。
ご了承くださいませ。 

 関根書店版の『春と修羅』の初版本が二千円ぐらいで買えないかなー、とムシのいい妄想に耽りながら、駿河台下の交差点を渡り古書会館へ。空気がカラッとし始めて秋の気配を漂わせていたのに、今日はまたもや湿度はやや高め。デコに汗を滴らせながら、たしかに台の下というだけあって、けっこうな勾配を上って会館に到着。とにかく今日は質より量を買おう!と決めていたのに、集中力が続かず1時間半ほどで離脱。ランチを求めて本の街を彷徨うもどこも決めかねて、腹を空かせたまま都営新宿線で馬喰横山へ移動し、東日本橋のNo CONCEPTへ。一見すると、セレクトされたジャンクとヴィンテージのバッグや服が並んだ店ですが、しばし沈思してものの取り合せを眺めていると、とりあえずここにあるもの全部もらっておくか、そう言いたくなるような店です。とか言いながら、いつもひとつふたつ(しかも安いもの)しか買わず、且つ長っ尻で迷惑をかけており、面目ない次第。No CONCEPT(東日本橋)から当店、書肆逆光(宝町)までは都営浅草線で三駅ですので、散策コースとして脳内にインプットしていただければ幸いです。
 その後、自分の店を開けて少し経ったところで、本日はBROWN'S Cafe&Beansさんにお立ち寄りいただいただき、嬉しいものを頂戴してしまい恐縮の至り。個人で仕事をしていくことの楽しさをいつも教わっています。
 こうして書き連ねていると、知り合いとのダベり自慢みたいで、非常にいけ好かない雰囲気が濃厚ですが、これはこれで仕事の一部なのであります。ただし費用対効果は、おそろしく低い。果たして生き残ることはできるでしょうか。なにとぞよろしくお願い致します。




『うるわしき日々』
小島信夫 読売新聞社 1997年10月16日初版
認知症の妻を介護する年老いた夫。     
うるわしき、とは逆説ではなくて、そうとしか
呼びようがない、そういう日々が過ぎていく。

SOLD OUT

2014年9月3日水曜日

神々のキノコ炒め

9/5(金)・6(土)は仕入のため14時からの開店です。
よろしくお願い致します。

 開店前に出光美術館で開催中の「宗像大社国宝展−−神の島・沖ノ島と大社の神宝」を見てきました。宗像大社とは沖ノ島の沖津宮と筑前大島の中津宮と本土宗像市の辺津宮の三社の総称です。中でも島そのものが御神体として奉られている沖ノ島から出土した神宝が、展示の目玉です。海の正倉院の別称にふさわしい当時の最高級のものを見られるだけでなく、祭祀という人類の不思議な営為の原始形態を知るうえでも見逃せない展覧会だと思います。
 今回は欲しいものがたくさんありました。「せっかくだから、どれか好きなの1個持っていきなよ」と係の人が気さくな感じで言い出さないだろうか、そんな妄想は出光の厳かな雰囲気の中では介入する余地はありません。とは言え、展示物の中で欲しいものをどれか1つに絞るという勝手な鉄則を自分に課しているので、なかなか大変。棘葉型杏葉なんか、細工がきれいに残っていて大きさもあり迫力があるのですが、立派すぎておそろしい。滑石の子持勾玉も大きくてすごい質感で、メリケンサックとして使えそうです。鉄製人形は珍しいでしょうが、ちょっと地味かもしれません。人に見せても、こんなの下の子が幼稚園で作ってきたよと言われそうです。というわけで、今回は十七号遺跡出土の車輪石にしておきます。
 と、心の中で自分勝手な所有宣言を決め込んだら、お腹が空きました。最高級のものを見た後は、やっぱり最高級のお昼ご飯。ということで、歩いて宝町の中華シブヤまで。キノコ炒め&ライス800円。国宝と宝町。この秋のオススメです。


管状土錘、球状土錘、石錘、その他土製品
SOLD OUT

『宗像大社国宝展 神の島・沖ノ島と大社の神宝』図録
公益財団法人 出光美術館発行 2014年8月16日発行
判型A4 135頁 税込2,000円
出光美術館ミュージアムショップにて販売中



 

2014年9月1日月曜日

一次情報

 小売に取って雨は大敵です。ただ、当店の場合は晴れても雨でも集客に大差ないので、雨は敵ではないようです。では真の敵はどこにいるのでしょうか。そんなものは本当はいないのかもしれません。売上を雨のせいにする店主の怠慢さを除いては・・。
 雨の八丁堀。きっとそんなタイトルの演歌があるような気がして、ネットをあたってみるもヒットなし。世の中が便利になりすぎて、居ながらにして全ての情報を掌握できる気になりがちですが、決してそんなことはないのでした。
 「ああ、雨の八丁堀ね。いたねえ、この界隈の流しでそんなレコード出したのが。それ1枚きりで見なくなったよ。」
 あるいは、この辺の飲み屋を廻っていれば、そんなことを言う人に出くわすかもしれません。暖簾をくぐってきっちり身銭を切って、人との出会いから話を聞き出すという、いわば情報収集における身体性の回復。それだけのことを知るためだけに金を積むという、圧倒的なまでの効率性の度外視。真の情報は結局のところ足で見つけるものなのだとしたら、ネットなんか止めて直接お店に来るべきではないでしょうか。と、そんな凡庸なことを言うためにもってまわった駄文を連ねてしまいました。今週もよろしくお願いいたします。


『夢二詩歌集』
竹久夢二 野ばら社
1957年11月3日初版
SOLD OUT

雨で物憂げな気分の日には
ぜひ夢二を。