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2018年8月18日土曜日

ゾゾゾタウン

 8/25(土)-9/2(日)に当店にて開催する『柿渋染めかばん展』のお知らせです。柿渋で染めた鞄を展示するという、展示タイトルに一切偽りのない催しです。Yoshino Yashimachi(よしのやしまち)という名義で活動する、鞄作家と言っていいのかどうか、とにかく今は鞄だけを作っている青年の手になるものです。コットン紐をシルクのミシン糸でジグザグに縫いつけて柿渋で染めて出来上がる形と風合いは独特です。
 食うに困ってアパレル業の真似事を始めたように思われるかもしれませんが、それだと半分しか当たっていません。よしのさんとはとある場所で出会ったのですが、その時持ってたお手製鞄が素晴らしかったので声を掛けたら、展示の運びとなったというのがもう半分です。毎度のことながら成りゆき任せで今日まで生きてみましたという感じで感慨深いです。
 展示の打ち合わせをしに、後日店に来てくれたよしのさんが「鳥の巣の造形に憧れる」と言ったのが印象に残っています。鳥は小枝や枯れ草などを材料として唾液と混ぜ合わせて巣を形づくっていくのですが、よしのさんは自分の鞄の作り方はそれをなぞっていると言います。コットン紐が枝とか草で、シルクは蚕の口から分泌される唾液みたいなもの。という話を聞いて、妙な生々しさを感じておもしろいと思いました。会期中は古物や古書も仕舞い込まずに、鞄といっしょに並べておきます。鞄と古物、古物と古書、古書と鞄・・いろんな「と」の間を揺蕩っていただけたら幸いです。お待ちしております。



大中小の3種類を展示販売いたします

大 巾44×高さ31×マチ10センチ
採寸はだいたいです。個体差があるのであくまで参考程度に。

柿渋の発色は使用するシルクの色でかなり変わってきます。
これはオレンジに染めたシルク糸。染めは京都の染め屋さん
に発注しているそうです。               

出来立ては柿渋に塗り固められてる感じですが、使っている
うちに柿渋の色が落ちて形もクタッとしてきます。    

これは鉄分を媒介させて黒めに上げた柿渋
中サイズです。巾35×高さ27×マチ10センチ

小 巾27.5×高さ24×マチ14センチ
コロンとしてかわいい形。柿渋の染め直しもしてくれる
 とのことです。                   

2018年8月13日月曜日

夏枯れの黄昏のための言い逃れ

インスタグラムもぜひご覧ください→👃 

 お盆休みに入りましたが当店は通常営業です。この時期の中央区の醍醐味は、近辺から人々の喧噪が消えてしまうこと。昼時にランチを求めて行き交う勤め人もいなければ、通りを走り抜ける車も概ね見なくなる。代わりに黄泉の国からの来訪者の気配を、感じる人は感じるのかもしれませんが、自分はそのへんは鈍いので辺りはやはり静かなままです。『ミツバチのささやき』で、アナとイサベルが寝室で交わす会話のように密やかな声だけが、時おり物陰から聞こえてくるぐらいです。見る物すべての輪郭がぼやけている白い世界。その片隅の仄暗いビルの一室。そこに佇む物。
 そういえば、神楽坂のマキファインアーツで開催中の『メルド彫刻の先の先』を見てきたのですが、そこの物の佇み方には触発されました。レディメイド、もの派、アルテ・ポーヴェラなんかに興味を持つ人は、引っかかるところがあると思います。そして同じ建物の3FのSprout Curationでは『中原昌也 個展』をやってました。閑静な家並に混じっての先鋭的な展示に少しばかり興奮してしまい、心の昂りを抑えるために帰りに紀の善に寄ることを余儀なくされました。
 そんな自分の中の佇み熱を更に加速されそうで楽しみなのが、トライギャラリーおちゃのみずで開催される『長谷川迅太 キッチュ|Kitsch』です。物への対し方が、直感的なのかもしれないけど、期せずしてそれが批評的にもなっているという目を持った人です。合わせて清澄白河幾何、神田TETOKAでもいろいろな展示が行なわれるとのこと。夏枯れどころではなくなりました。当店はといえば、その前の週から『柿渋染めかばん展』というのを催します。柿渋で染めたかばんを並べる、タイトルそのままの展示です。詳細は追ってお知らせいたします。
 というわけで、お盆も爽やかに営業しておりますので、心おきなく八丁堀までお運びくださいませ。

ちょっとメルドっぽく並べてみました。気になるものが
写り込んでいたら、お気軽にお問い合わせください。 


マキファインアーツにて。段ボールやパッケージをハガキ大に
切って、絵ハガキとして売る麻生晋佑のプロジェクト。1枚25円。

DM、当店にて配布中。とりあえず1枚ずつ取って、
鞄の中に入れておいた方がいいです。       

紀の善にて。白玉ぜんざいにアイスクリームをのせる
という暴挙。                  

2018年8月4日土曜日

モンキーフリップツーリズム 後篇

 前回まで〜 地球規模の変革が問われる今、一介の古物商が為すべきこととは何なのか。西にその答えありと踏んで始まった東海行脚。そして自家製ジャムののったトーストを食べ、皮がパリッとした鰻を食べた。

 というわけで、Hさんのお店にはSさんに車で連れていってもらったのでした。窓越しに見る外観からして、すでにフォトジェニーなオーラを漂わせています。それでいながら、辺りを払うようなこれ見よがし感がないのは、店主の性格と才量によるものでしょうか。Sさんのところといい、岐阜の発するオルタナティブな気風は革命の萌芽を予感させます。夜にはHさん行きつけの、これまた旨いものを出すお店に案内していただきました。近辺に軒を連ねる飲み屋のレベルがどこも高そうで、田中小実昌のような徳を備えてないと、おいそれとは入れなそうに思えました。
 ところで懸念されるのは台風の進路で、なにやら変則な動きで人々を困らせているようです。次の朝は大須の骨董市に詣でて一山当てようと目論んでいたのですが、仮に開催されても出店はかなり少ないでしょう。果たして勇んで乗り込んだ大須観音ですが、案の定出ている人たちはいつもの半分以下のようです。それでも買い出し屋さんの荷解きを待って、ガツガツと漁ってまいりました。
 観音様脇の喫茶店でのモーニングの最中、S氏が愛知の異能の古物商Oさんに連絡を入れていました。Oさんの品物の選択眼やスタンスは、自分にとってほとんどリスペクトの域に達しています。この日は旅の目的のふたつ目である愛知県陶磁美術館の『知られざる古代の名陶 猿投窯』を見に行くことになっているのですが、大須に仕入にやって来るOさんが、合流後に美術館まで車で送ってくれるとのことでした。なんという僥倖。
 途中から美術館への道は、2005年に開催された「愛・地球博」会場への輸送手段として建設されたリニモの高架下に沿っていきます。ふいに書店勤務時代に、この万博関連の書籍やグッズが、売場に並べ切れないほど納入されてくるのに嫌気がさしたのを思い出しました。「なにがモリゾーとキッコロだちくしょう!こんなもの爆発してなくなってしまえ」ぐらいには怒っていたような気がします。このとき衝動に従って会場を爆破していたら、こうして愉快な珍道中にも出られなかったわけで、人生の内に遍在する機運を感じずにはいられません。さて、陶磁美術館の展示は言わずもがなのことながら、欲しいけど手に入らないものだけが並んでいました。指をくわえて見るという所作だけが妙に洗練されてきたりして、指咥道という流派を設立しようと思ったぐらいです。
 この後はOさんが多治見近辺の骨董屋さんを案内してくれて、何軒かお店をのぞくことができました。一応仕事のつもりでいるので、仕入の機会が増えるのは良いことです。品物の筋が東京とはずいぶん違うところがあって、そんなのを目の当たりするのも新鮮でした。多治見駅でOさんと別れて、名古屋に出てきしめんを食べて東京に戻ってきました。台風の雨脚とは微妙にズレていたようで、濡れずに帰ってこられたのですが、日頃の行ないの良し悪しは関係なさそうです。いろいろとお世話になることが多く、人の親切が身に沁みた旅でした。では、8月もどうぞよろしくお願い致します。
 

岐阜で見かけた一軒。とつぜん左腕の静脈を切断されそうな
佇まい。                       

大須観音。初めてやってまいりました。雨が降ったり止んだり。 
愛知県陶磁美術館の中庭。この頃には台風の気配が一時的に
消え去って、夏休みの始まりみたいな青空でした。    

南山9号窯跡。平安後期〜鎌倉後期のもの。

今展示の図録。税込2,500円           
図版はもちろん、資料ページも充実していています。
王様のブランチのブックランキングで紹介されても 
おかしくありません。              






2018年8月1日水曜日

モンキーフリップツーリズム 前篇

 皮膚を焦がす日射しの下、朦朧の体で店にたどり着いて冷房をつける。いつまでたっても涼しくならない。どころか、むしろ暑くなってきてさえいるのは何故だろうか。平成最後の夏が呼び起こした感覚崩壊・・と思ってエアコンの設定を見たら暖房になっていました。いっそもう旅に出たい・・。ということで、一泊二日の痛快東海ツアーに行ってまいりました。
 朝、名古屋に着いた人間が最初にするべきはモーニングを食すことですが、数ある喫茶店からひとつをチョイスするのは、人間性を試されているかのようで少しく緊張を要します。選んだところは名駅から歩いてちょっと、国際センター駅近くに三棟並ぶ花車ビルの一番古い南館に入る「KAKO花車本店」。クリームチーズと自家製コンフィチュールがのったトーストを注文しました。名古屋ではじめて自家焙煎のコーヒーを出したのがこの店だそうで、テーマパーク的レトロとは確実に一線を画した佇まいです。さすが名店、開店の9時を30分もまわると早くも満席。なかなかスポーツ新聞を開いてゆっくりというわけにはいかず。幸いにして名古屋も数日前の地獄の季節からは抜け出していて、歩いて名古屋駅まで戻っても命に別状はなさそうです。名鉄の駅で待ち合わせをして、頼れる同業仲間K氏S氏と岐阜の骨董屋さんに向かう手筈になっているのでした。
 今回の旅の目的のひとつは岐阜の名店探訪。赤い電車に乗って小駅で降りるとSさんが車で迎えに来てくれていました。まずは腹ごしらえに、地元の老舗の鰻屋に連れていっていただけるとのこと。眼前に山を臨み満々と水を湛える川が流れる豊かな土地。が、軒を連ねる商店はかつての繁栄を偲ばせるふうな様子。窓越しに過ぎていく沿道の街並は石のように黙殺された(©横光利一)という感じです。その中で、当の鰻屋さんだけが今なお往時の賑わいを見せてるようで、店の前には結構な行列ができていました。鰻を焼く匂いが辺りに漂っていて、それをおかずにご飯を食べればもう十分な気もするぐらいです。そんな古典落語の演目みたいな真似をしても誰も褒めてくれないので、もちろん店内で本物をいただきました。関東と違って蒸さずに焼くそうで、パリッと香ばしい皮の旨さに驚きました。
 さて、Sさんのお店というのが山道をグイグイ縫うように上った先にありまして、これは東京の小洒落たクリエーター集団が、予算をふんだんに使いエッジを効かせたデザインを実現させたところで到底叶わない先鋭的な立地と造りです。Sさん本人にとっては生活圏にある日常の一部でも、こちらにすればローリングトウェンティーズのような眩しさ。人を逸らさぬSさんの話と店の佇まい、品物の筋・・岐阜の骨董シーンはここから発信されているのだと思いました。その日はSさんと並ぶ岐阜の雄、Hさんのお店にも伺う予定になっていて、当初は電車とバスを乗り継いで行くつもりでしたが、それなら車で送りましょうとSさん。怖るべき優しさ。目の前が霞むのは台風接近に伴う湿度の増加のせいではなさそうです。なんだか要領を得ないことをダラダラ書き連ねました。後篇に続け!

KAKOのモーニング。上のコンフィチュールはどれも違う味。
マスターに聞きましたが忘れました。さっぱりして旨い。  
ビルの一画。

昭和40年代はじめのビル。

今回あまり写真を撮ってません。感動で震える手でかろうじて
撮った一枚。丼だとタレがしつこいから重にせよ、という助言を
得て注文。たしかに正解でした。もう一人前食べたかったです。