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2014年12月29日月曜日

鬼が爆笑

本日29日(月)で年内の営業は終了です。
年明けは1月4日(日)に有楽町東京国際フォーラムに出店、
5日(月)より店舗営業開始です。
よろしくお願い致します。

 昨日は東京都港区赤坂八丁目にある乃木神社で開催された骨董蚤の市に出店してきました。いっちょ儲けて来年はビルのひとつも建てるとするか、と意気込んでの参加でしたが、あまりの寒さに荷解きをして並べる時点で意気消沈。売上げ云々よりも、寒さとの闘いに終始しておりました。それでもいろいろ見ていただき、ありがたい限りです。乃木神社骨董蚤の市は、一の鳥居前から手水舎手前の階段辺りまで、30ほどの店が出ております。大江戸骨董市を見慣れた目からすればずいぶんと小さな規模ですが、それが却って昔ながらの露店の雰囲気を伝えているかもしれません。次回1月25日(日)も出店の予定です。どうぞお運びくださいませ。
 さて、本日29日が年内最終営業です。本年は開業の年でした。とにかく何も分からないまま飛び出した格好で、例えるならばポリネシアン・トライアングルをアガツマ製のアンパンマンベビーボートで横断しようとするようなものでしょうか。厳しい時代によくも死なずに済んだものです。ひとえに皆さまのお蔭と感謝しております。来年は少しばかりは進化したところをお見せしたいところです。なにとぞよろしくお願い申し上げます。


 
 

       後列左から    モロッコ製ミシュラン看板 SOLD OUT
『定義』谷川俊太郎 署名入 SOLD OUT 『薬玉』吉岡実        
前列左から 『スイス年代記』零葉 ヨハネス・シュトゥンプ SOLD OUT
        李朝堅手碗 SOLD OUT 土師小碗 SOLD OUTドイツオリーブオイル瓶  SOLD OUT
       大堀相馬猪口SOLDOUT『那珂太郎詩集』 献呈署名入 SOLD OUT 
                       無地刷毛目皿 SOLD OUT 米国製プルトイ「バジービー」

2014年12月24日水曜日

底冷えと灼熱のあいだ

明日25日(木)は仕入のため開店は14時半頃になりそうです。
26日(金)も仕入です。14時に開店いたします。

そして28日(日)は乃木神社骨董蚤の市に初出店いたします。
年内最終営業日は29日(月)です。
なにとぞよろしくお願い致します。


 尻がふたつに割れてしまいそうなほど底冷えのする店内。しかしそれを補って余りある店主の情熱が、暖房なしでも快適に過ごせる環境を提供しています。ということは一切なく、やはり気温の低下と比例してテンションも下がってしまうのが恒温動物の宿命のようです。大勢のお客様に来ていただければ店内温度も上がると思いますが、業界大手でさえ集客には頭を痛めているのですから、零細というか極微レベルの当店で、気温を左右するほどの集客はきわめて困難です。
 なんでも、先日の東京駅開業100周年記念の物販では、駅前に九千人も集まってしまい混乱を来したとのことですが、そのときの外気の温度変化をサーモグラフィで記録した研究グループはないのでしょうか。それだけの人数が当店に集結したとしたらどうなるでしょう。九人入ればいっぱいの店ですから、そこに九千人が入店したら圧縮による熱の放散で一気に気温が上昇しそうです。底冷えもあっさり解消。しかしワイト島ミュージックフェスティバル並みにアナーキーに拡散した熱量は、もはや収拾がつかないでしょう。
 というわけですので、いつも皆さまのお越しをお待ちしております。乃木神社の骨董市にもぜひお運びくださいませ。





 
『葬儀』ジャン・ジュネ        
  生田耕作訳 河出書房        
       1967年10月25日初版 カバー少痛 帯     

『聖母の贈り物』ウィリアム・トレヴァー
栩木伸明訳 国書刊行会       
2007年2月15日初版 帯       

『葬儀』600円      
『聖母の贈り物』1,100円

2014年12月22日月曜日

崩落の人

年内は29(月)まで営業いたします。
28(日)は乃木神社で開催される骨董蚤の市に出店予定です。
お運びをお待ちしております。

年明けは1/4(日)に有楽町東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店、
5日(月)より通常営業です。
よろしくお願い致します。

 昨日は当店の貴重な収入源である大江戸骨董市に出店、恐るべき寒波の襲来を予期して、完膚なきまでにみすぼらしい防寒対策で臨みましたが、口ほどにもない寒さにやや肩すかしといった感じでした。さらに足下からの底冷えを防ぐために履いてきたゴツい山靴のせいで、店からの搬出時に奥行の狭い階段を踏み外してしまう体たらく。閃光のように煌めく死の予感。走馬灯のように脳内を駆け巡る懐かしい思い出。二回連続で当たったマルカワのフーセンガム、食べ過ぎてしまった三色トリノ、遠足のバスのシートの隙間にこぼしまくったベビースターラーメン、甦る記憶はなぜか駄菓子のことばかり・・。
 さて、両手が塞がったままで崩れ落ちゆく体を無理に立て直そうとしたために、右腰と右膝を捻ってしまいました。云うなれば、アルゼンチンバックブリーカーとヒールホールドを同時にかけられた状況ですから、文弱の徒である自分などひとたまりもありません。とか言いながら、何事もなかったようにスタスタと国際フォーラムに駆けつけ出店準備。売って売って売りまくって、終わったらベンツにでも乗って帰るかと息巻いていたのですが、出足は不調。もりもりとビーフカレーを食べ終えたあたりから、ようやく物が動き始め、懸念していた餅代もなんとか捻出できそうです。それも通販サイトの最安値のパックのお餅ではなくて、魚沼産の杵つき餅ぐらい食べても罰は当たらなそうです。とはいえ、「人は餅のみにて生くるにあらず」と言いますから、当分はつましく暮らしていく所存です。
 では、今週もよろしくお願い致します。

李朝 白磁碗
口径15.6 高さ8.6 高台径7.1センチ

灰色がかった青白色の堅手と呼ばれて  
十把一絡げに扱われている雑器の碗です。
              九条ねぎをちらした素うどんが合いそう              
  ですが、一玉入るか微妙な大きさ。    
雑煮ならいけます。              





SOLD OUT







2014年12月18日木曜日

寒すぎる日々

12/20(土)は仕入と所用が重なりまして、営業時間が現時点で不明です。
改めてお知らせいたします。
12/21(日)は有楽町の東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店いたします。
相当寒いに違いないことが、ここ数日の冷え込みから予想されますので、
どうぞ防寒を万全にしてお出かけ下さいませ。

 サンタクロースに、とりあえず歳が越せますようにとお願いしてあるので、そのあたりはなんとかなると無邪気に信じています。だからと言ってクリスマスの朝、起きてみたら枕元の靴下の中に東証有望銘柄の株券が束になって入っているかもしれないと考えるほどおめでたくはありません。そんな都合のいいサプライズは存在しない、サクセスは自分で摑み取るんだ!といつもの空元気を沸騰させて、底冷えのするビルの一室で今日もひそやかに営業中です。
 少し仕入れをしてきましたので、大江戸骨董市で見ていただきたく思います。それで餅代ぐらいはなんとかなるでしょうか。とは言え、今どきはサトーの切り餅1kgパックなんかが698円で売ってますから、それぐらいの売上げでは仕方がないですね。年が明けて箱根駅伝を見ていても、悠々としていられる程度の余裕は欲しいものですが、開業一年目でそんなことを言うのが、そもそも図々しいのかもしれません。
 年末年始の営業はまだ決定はしておりません。追ってお知らせいたします。まずは今年の残り少ない日々をよろしくお願い申し上げます。



 
ステンドグラスの残欠
オランダ 18C.
最長部 縦24.7×横6.4センチ




SOLD OUT

2014年12月12日金曜日

油ハム警告

12/15(月)・16(火)は仕入のため休業とさせていただきます。
そのため、定休の14(日)と合わせて店舗は三連休となります。
変則の営業でご迷惑をおかけしますが、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

 昨日12月11日は、ポルトガルの映画監督マノエル・ド・オリヴェイラの106歳の誕生日でした。押し花電報でも送りたいところでしたが、もちろん知り合いでもないし、そもそも住所を知らないので、どうにもなりませんでした。1908年生まれですから、1903年の今日12月12日が誕生日の小津安二郎とは5歳しか違わないという事実が、時間のパースペクティブを狂わせてしまいそうです。小津がもはや歴史上の人物であるのに、オリヴェイラは100歳を越えてからも、映画史を刷新するような作品を撮っているわけです。生ける伝説などではなく、現役最前線24時の映画監督です。その作品はいつも、高齢者による功労賞のような映画ではなく、29歳ぐらいの新鋭監督が全霊を捧げて世に問うたような若々しさが漲っています。
 こんな人が生きているのを知れば、ちょっと仕入で買い込んだぐらいで、神保町から店までの荷物が重くてつらいとか言ってられません。オリヴェイラに倣って百まで現役です。などと先のことを言うと、果たしてそれまで店が続いているのか、だいいち生きてるのか、なにより日本が存続してるのか・・とペシミスティックな妄念に囚われてしまいそうです。そんな時にはオリヴェイラの『家路』を観て、心を和ませたいものですね。
 東京国際映画祭の舞台挨拶でオリヴェイラを見たことがあります。世界の映画界に君臨する傲岸不遜な王のような人物が現れるのかと思っていたら、袖から出てきた彼は、なんだかひどくモジモジしているおじいちゃんでした。


『マノエル・デ・オリヴェイラと
現代ポルトガル映画』
 エスクァイアマガジンジャパン
e/m books⑫ 2003年4月30日初版 帯

Manoel de Oliveiraのdeは今はドと表記する
のが一般的              

『不安』撮影中のショット 
右端がオリヴェイラ   
           このとき90歳になろうという頃         
                    背筋も伸びて頑健そうな体つき                    
SOLD OUT





 
 
 

 

2014年12月8日月曜日

プティキュ

12/9(火)は仕入のため14時から開店いたします。
なにとぞよろしくお願い致します。 

 設計をラファエル・ヴィニオリ、構造設計を渡辺邦夫、設備設計を森村設計が担当した東京都千代田区丸の内三丁目5番1号に所在する公的総合文化施設である東京国際フォーラムにおいて、昨日開催された大江戸骨董市に当店も出店してまいりました。予報通りの寒い中を予想以上に多くの方にお越しいただきました。ありがとうございます。
 骨董市とは、各々が泣きながら(必ずしもそうとは限りませんが)集め得たものを布の上に並べて、それを通行する人に見てもらい、値段、趣味嗜好、店主の風貌・人格などが許容範囲であると判断された場合にのみ売買契約の次の段階に入るという、生身のぶつかり度が高い原初的な商いという気がします。
 今回の出店場所は、東日本橋の不死鳥No CONCEPTさんの目の前でした。いつも多種多様な品揃えで、立ち止まる人も国際色豊かな店です。午後3時を廻り、そろそろ撤収という雰囲気が濃厚になってきた頃、No CONCEPTさんの前に佇む3歳ぐらいの小さな人。なぜかフルフェイスのヘルメットをかぶっており、シールドからのぞく顔から察するにハーフの男の子でしょうか。その日のNo CONCEPTラインナップからお気に入りを何か見つけたようで、その場から微動だにせず。やがて屈んで手を伸ばそうとすると、履いてるズボンの股上が浅いのか、腰回りがズルッと下がってお尻がペロンと見えてしまっています。それも半ケツを通り越して、ほぼすべての尻が晒された状態。しかしそんなことを意に介することもなく、ひたすら「もの」に没頭する少年。寒空の下に一個の人間の尻をこれほどまでに丸出しせしめるNo CONCEPTさんの商品力に驚嘆の念を禁じ得ない書肆逆光でありました。


『ユリイカ』 E・A・ポウ
牧野信一・小川和夫共訳 芝書店
1935年8月10日初版 函・本体背ヤケ


2,000円









  



 

2014年12月5日金曜日

皇帝と将軍

明日12/6(土)は仕入のため14時半から開店いたします。
12/7(日)は有楽町東京国際フォーラムで開催される大江戸骨董市に
出店いたします。
天気は問題ないようですが、寒波襲来でなにしろ寒すぎるとの予報です。
どうぞ暖かくしてお出かけ下さい。

 12月になり小売業界は年末商戦に突入、年間売上総利益の大部分をこの月で獲得しなければ生き延びることができない企業もあるでしょう。と、常に瀕死の状態にあるくせに、ひとごとのように語ってる場合ではない当店です。このままでは歳を越せないとはよく言いますが、あと二十何日間か黙ってジッとしていれば、地球が自転して自動的に年は明けるわけですから、とにかく歳が越せないということはない。ただ、越せばいいってもんじゃないというのが問題なのです。
 ただ、何らかの手立てを講じようにも、この店の入っているビルがやけに底冷えするものだから、座ってものを考えているうちに、徐々に思考能力が奪われていくのです。などとビルのせいにしている場合ではないのですが、ナポレオンでさえロシア遠征時には、あまりの寒さに敗走を余儀なくされたわけですから、一介の古物業者に至っては、八丁堀辺りの寒さでも十分逃げ腰になるに足るのです。
 というわけで、週末は気温にご留意のうえ、どうぞ古物漁りをお楽しみ下さいませ。

『冬の鹿』 真壁仁
潮流社 1983年12月30日初版
    函 背革 特装版限定500部 署名入



3,500円






 
 
 
 
 

2014年12月1日月曜日

洛陽紀行

 11/29(土)、30(日)に出張と称して京都に行ってきました。財政事情を鑑みれば歩きで行くべきでしょうが、宿泊や食費など却って経費が嵩みそうな気がするので、素直に新幹線を使いました。唐揚げ弁当を食べながら、とても速い乗り物だなあと思っているうちに京都に到着。都の空気を満喫する間もなく、JR琵琶湖線に乗り換えて石山駅へ。そこから帝産バスで50分、山の上のミホミュージアムへと向かいました。現在開催中なのが「獅子と狛犬--神獣が来たはるかな道--」展。
 例によって、どれか好きなものあげるよ、と言われた時に何を持ち出すかを物色しながら館内を練り歩きました。まずは鎌倉時代の信貴形水瓶。せめて獅子の鈕の部分だけでも欲しいものです。そして何と言っても法隆寺所蔵の行道面10面のうちの2面である獅子頭。作行きが良いからなのか、平安時代のものであるにもかかわらず、隣に陳列された室町の獅子頭より新しく見えます。狛犬もすごいものが数体ありましたが、抱えて持って帰る手間をおそれて、滋賀県大津市不動寺の石造の小さな狛犬一対にしておこうと勝手に決めました。これなら獅子頭をひとつは背負って、もうひとつは被ってしまえば、あとは持ってきたカバンに収まりそうです。いい展示は、こういう不埒な妄想を許す余地があるように思います。

見るからに速そうな佇まい


唐揚げ弁当及びお〜いお茶




受付にてチケット購入後、このアプローチを
くぐって美術館に向かうという演出    

雨で烟った風景が荘厳な雰囲気に拍車を
かけます              



 ランチを食した後バスで下界へと戻り、京都駅から市バスで百万遍へ移動。時にゴッドとさえ称される山本善行氏が銀閣寺近くに営む古書善行堂へ。小説があり詩集があり映画や美術の本があるという古本屋としてオーセンティックな構えの店。質量遥かに及ばぬながら、ウチもこういう感じにしたいなーと指針にしている店です。去年12月にこちらにお邪魔をして古本屋を始めますと勝手に宣言し、そして今年開業しましたと勝手に報告にあがった次第。アドバイスと激励と詩書2冊をいただいた後は市バス17番で京都市役所まで。河原町通りと寺町通りに挟まれた路地に店舗を構えるヨゾラ舎に向かいました。こちらは当店より少し早い3月に開業され、上林暁ばりの哀切なユーモア漂うブログが毎日アップされています。そこに刻まれた日々の苦闘はもはやひとごととは思えず、時おり自分と同一人物なのか?と錯覚してしまうほどです。ヨゾラ舎さんの強みは音楽関連書籍。店主の山本氏が元大手レコード店勤務だけあって、選書の目が利いています。文学関連も少数ながら粒選りのものが並んでいます。

二店で購入したもの

『パンテオン 第十號』第一書房
1929年1月 日夏耿之介、平井功、城左門 他

『半仙戯』石川道雄
同学社 1954年4月1日初版

『永田耕衣全句集 非佛』
冥草舎 1973年6月15日初版



 宿へと向かうべく、市営を乗り継いで嵯峨嵐山駅へ。観光地として名高い場所ですが、すでに暗くなった後では人もまばら。落日の都という言葉が浮かぶほどに辺りを漂う寂しさ・・。
 爽やかに晴れ上がった次の日の朝。せっかくの都、ベタな観光気分に浸るために早めにチェックアウトを済ませ、宿からほど近い天龍寺と渡月橋へ向かいました。天龍寺は期間限定早朝拝観実施中。紅葉は名残ながら、まだ随所で楽しめました。渡月橋辺りの風景は、時の彼方に去っていたかと思われた記憶を鮮やかに甦らせてくれました。修学旅行の自由行動の計画は完全に人任せだったので、当時は自分がどこを歩いているのか分かっていなかったのですが、そうか、ここが渡月橋だったんですね。何かが音を立ててつながった感覚。脳内が一気に覚醒。これが茂木健一郎云うところのアハ体験というやつでしょうか。



落ち葉のせいなのか、いい匂いが
漂っています         


作庭は伝夢窓疎石




人の気持ちを高揚させる紅葉



あー、ここかあ。と叫ばずには
  いられなかった渡月橋      

 

二条へと移動し、コメダ珈琲にてモーニング。市営で北大路に出て、バスターミナルから建勲神社前まで。近くに大徳寺があるのですが、ここの塔頭のひとつ玉林院が目的地です。先頃発刊された「工芸青花」の展観催事がここで催されるのです。通常は立ち入ることの許されない場所ですから、中に入るだけでも貴重な体験のはずです。
 院内には軸ややきもの、茶道具の名品が各席に置かれており、自由に出入りして見ることができるという贅沢ぶり。曾我蕭白や俵屋宗達の水墨画、一休宗純の墨跡や大聖武経、本阿弥光悦の黒楽茶碗、古田織部の茶杓などどれもすごいものですが、ただ、歴史上の名品が目の前にあるという事実に気圧されたのか、どれを見ても心が動かないという事態が発生。このような場においての立ち居振る舞いを全く身に付けていない自分の無教養さの引け目が、頂点に達したのかもしれません。とにかく何を見ても、「ふーん、すごいなあ」と思うだけ。いちいち物欲を介在させないと物が見えないというのは、やはり下衆な見方なのでしょうか。不埒な妄想が、この清廉な場では完全にシャットアウトされています。お道具拝見のような物の見方では、視線が空を泳ぐだけ。徐々に気分が塞いできて、何度もすすめていただいた茶席にも、結局入らずに出てきてしまいました。
 都の文物というのは、やはり手強いものだと感じ入りました。ガラクタを値踏みばかりしている眼なんかは、あっさり跳ね返されます。なんだか憂鬱な京都行きになりましたが、「お茶会」とか「茶道」ではなく「茶の湯」というものには出会ってみたい気持ちになりました。まだまだ過ぎた望みのようですが。
 それと、点心で出された瓢亭の仕出し弁当が、またやたらと旨いもので、これには驚きました。

利休七哲の一人、細川忠興創立の高桐院

こんなふうに記念の写真をパシャパシャ
撮ってる分には、楽しい京都です   







 
 
 














2014年11月25日火曜日

私の念願

11/27(木)は仕入のため14時30分の開店です。
11/29(土)は誰に頼まれたわけでもないのですが
出張に行ってまいりますので、店は臨時休業いたします。
何か仕入もできれば良いのですが、どうでしょうか。
なにとぞご了承くださいませ。

 俗に自転車操業とは、仕入と支払のサイクルをいっときたりとも休むことが許されない操業の喩えですが、自転車であっても操業されていればまだいい方で、漕ぐこともままならず、最初から倒れたままという者も中にはいることでしょう。いわゆる「あらかじめ倒れ続けた世代」です。「いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです」と言うカフカの顰みに倣って、いま思いつきで作ったので定義も決まってないのですが。ただ、競争を放棄した無気力な人を指すのではなく、いつも何か違うやり方を探していて、遅ればせに辿り着いた場所が実はみんなと同じ地点であることに気付いて、いっそう慌てふためいて足がもつれて転んでしまう者たちといった感じでしょうか。「不器用ですから」と言っても少しも格好がつかないので、倒れたままで考え続けている人たち。そんな人間にも優しい政治が、今度の総選挙を機に実現することを切に願います。と、取ってつけたように書いてしまいました。
 今週もどうぞよろしくお願い致します。


『私の念願』 柳 宗悦
不二書房 1942年6月30日初版
発行者:福島 武男
印刷者:興隆社 山縣 隆定
配給元:日本出版配給株式会社
定価:三圓八十銭 送料:三十銭

 




SOLD OUT



 
 
 




2014年11月22日土曜日

転倒者たち

 ギャラリー小柳で開催中の「UNSOLD」展を見てきました。杉本博司、ソフィ・カル、青柳龍太の現代美術家3人が去年、靖国神社で開かれた蚤の市に出店、そのときの売れ残り(UNSOLD)の品を並べるという展示です。作ったものではなく、すでに出来上がったものを美術館やギャラリーに陳列するというのは、もちろんマルセル・デュシャンに端を発しています。レディメイドはすでに美術史において確立した手法に見えますが、やった者勝ちの一発勝負の緊張感があって、当たり外れが大きいながらも、当たったときの面白さは格別です。陳列物を選ぶセンスと詐術的な価値転倒の妙味を包含したゲームの規則の洗練度がものを言うのでしょうか。15年ぐらい前にプラメン・デジャノフとスエットラーナ・ヒガーという2人組が、皿洗いのアルバイトで買ったものをギャラリースペースに並べるということをしていましたが、人を食った感じと垢抜けた雰囲気がありました。
 古物売買の現場は、まさに価値捏造のドキュメンタリーの趣があります。千円で仕入れたものに百万円の値を付けて売ることもできるわけです。とは言え古物業を営んでいれば、なんとなく相場観というものがまとわりついてきますから、あまり度外れた値段を付けると、何も言われてないのに居たたまれない気分になったりするものです。そこに何がしかの価値を付与することで、商品の価格を吊り上げるわけですが、そのステータスとなるものは、店の雰囲気であったり店主の人品であったりします。そこで「美は信用であるか」という例のテーゼが頭を擡げてくるわけですが、そんなことは知ったことではない、と言わんばかりなのが、この展示のなかなか痛快なところです。名の知れたアーティストによる出店というのは事前には告知されず、ごく秘密の裡に実行されたということですが、どことなくセットアップのようで胡散臭いのも、面白さに拍車をかけています


「追悼のざわめき」
土器、鉄、セルロイド、写真、麻布

1,200,000円




 
 

2014年11月20日木曜日

『工芸青花』発売

 本日11月20日に東京都新宿区矢来町に社屋を構える出版社の新潮社より『工芸青花』の第一号が発売されました。本体価格8,000円に消費税が加算されますから、現時点での消費税法で定められた税率によれば、8,640円分の貨幣との交換によって取扱各店舗にて入手が可能です。蓮實重彦『「ボヴァリー夫人」論』筑摩書房(税込6,912円)より高く、日本内経医学会『中国鍼灸史図鑑(全2巻)』国書刊行会(税込49,680円)よりは安い価格設定というわけです。
 四半期国内総生産の速報値によって、消費動向の悪化が明るみになった今、出版物としては比較的高額なこの本を果たしてどれだけの人が買うのかという懸念はありますが、現行の出版事情下での量的攻勢からの脱却を図る当誌の刊行は、大手の版元とは思えない企画と言えます。この値段ならハーゲンダッツの和栗味が35個ぐらい買えるんじゃないのか・・といった身近なものに換算することは御法度です。和栗味をそんなに食べたら飽きてくるはずですが、この本はいつまでも愉しむことができるように作られています。
 ここまで駄文を綴っておきながら、まだ内容には触れておりませんでしたが、下手な紹介よりも書名から察せられる風雅な感じから想像、妄想していただくのが良いかと思います。『工芸青花』とはいったい何の本なのか。少ない冊数ながら当店でも取扱っておりますので、ぜひ見にいらして下さい。


表紙は麻布張り、名物裂帖から選ばれた
           という文様が箔押しされています。       

 「青花」の書体は欧陽詢「九成宮醴泉銘」、
           欧文書体はエリック・ギルから採用。            

SOLD OUT

2014年11月17日月曜日

凡序美

11/21(金)が仕入で14時からの開店です。
ご了承くださいませ。

 昨日は初冬の晴天の下、有楽町東京国際フォーラムで開催された大江戸骨董市に出店してまいりました。出足が鈍くどうなることかと思いましたが、中盤になって盛り返してきました、と言いたいのですが、実のところあまり芳しいとは言えず、後半に差し掛かってようやく逆転の気配が漂ってきたかと言うとそうでもなく、結局のところ全体を通して冴えを発揮できずじまいでした。と言うと、ある局面でならば冴えたところを見せられるように聞こえますが、実際にはそんなことはありません。概ね凡庸で序破急に乏しい美学に徹するのが、当店の真骨頂と言えそうです。
 今週もよろしくお願い致します。

「セルロイドの力士」

昨日の骨董市での拾いもの          
遊び方は不明。ご存知の方、ご教示下さいませ。
古色を帯びたセルロイドが、およそ力士とは  
思えない儚さを映し出す。          
背中に張られた四股名も切ない。新海と寶川と 
書いてあります。              
   
       

凄まじい張り手争いがあったことを思わせる顔

三年先に強くなるための稽古    
当店も三年先の仕入をしたいものです

SOLD OUT

2014年11月12日水曜日

コントラスト

11/13(木)は仕入のため14時半頃の開店になります。
11/15(土)も仕入です。14時に開店いたします。
11/16(日)は有楽町東京国際フォーラムで開催される
大江戸骨董市に出店いたします。
皆さまのお運びをお待ちしております。

 六本木・白金のロンドンギャラリーで2カ所同時開催中の「仏教美術のよろこび」展を六本木の方だけ見てきました。逸品・名品・絶品と呼ばれ得るものが平然と陳列されていて、もはや眼にとって保養なのか毒なのか分からなくなりました。眼福という言葉では生ぬるいので、この状況を言い表すに足る造語を、文部科学省かどこかの民間団体が募集すればいいと思いましたが、展示は今月29日までですので今からでは間に合わないでしょう。
 例によって欲しいものはいくつかあったのですが、古美術商が展示するものですから、相応の対価を支払えば手にできる可能性はなくもないわけです。そこが博物館・美術館と違うところ。だからと言って、3千万円持って出かけてこれ下さいと言えば、少々お待ち下さいと包んで渡してくれるとも思えないので、商談に至るまでのこちらの知り得ないステップがあるのでしょう。
 六本木から八丁堀までは日比谷線で一本。凄いものを見た後は、当店にて小休止を。満漢全席の後の梅茶漬けといった感じでしょうか。




アルミの水筒 高さ15.5巾9厚さ5.3センチ
SOLD OUT
アルミの箱 縦10.7横7.5高さ2センチ  
SOLD OUT




 

 

2014年11月10日月曜日

ポンヌフの変人

11/13(木)・15(土)は仕入のため14時から開店いたします。
11/16(日)は有楽町東京国際フォーラムで開催される
大江戸骨董市に出店いたします。
皆さまのお越しをお待ちしております。

 初冬の晴天の下、店を開ける前に新橋のSL広場前で今日から開催されている古本市をのぞいてきました。SLと古本と青空・・過剰なまでに叙情的な道具立てが物悲しさを誘い、にじむ涙で物色に集中できませんでした。というのはもちろん嘘で、相当にあさましい風情で掘出し物はないかと本の山の間を右往左往。3冊ほど手にしたところで、空腹と時間切れにより離脱。新橋古本まつりは11/15(土)まで開催です。
 せっかくの新橋、それらしきランチを食してから店に行こうと、レトロな駅ビル内を彷徨っていると、名高い「カフェテラス ポンヌフ」が目に入りました。今にもドニ・ラヴァンとジュリエット・ビノシュが飛び出してきそうな店構え。ちょっと気圧されて、無難にナポリタンを注文。麺太め軟らかめ、ケチャップたっぷりの正統派です。他の人がオーダーしたハンバーグナポリタンの運ばれるところが視界に入ったのですが、山盛りにしたナポリタンにハンバーグがドテッと乗った命名に偽りなしの代物。まったくそのまま。圧倒的な即物主義。飲食におけるアルテ・ポーヴェラ。小細工なしの直球勝負が却って新鮮に映り、感に堪えなかった次第。
 では、今週もよろしくお願い致します。

『ジャン・ユスターシュ』
エスクァイアマガジンジャパン 
2001年3月7日初版
遠山純生編集

レオス・カラックスがリスペクトし、      
フィリップ・ガレルがオマージュを捧げてやまない
ヌーヴェル・ヴァーグの異才ジャン・ユスターシュ
の詳細が書かれたブックレット         

1,300円
       









2014年11月8日土曜日

灰色錫のそら

 とつぜんやって来た寒さになんの身構えもできず、生まれたての子やぎのように震えながら、千葉県八千代市大学町1-1に位置する秀明大学で開催されている学園祭「飛翔祭」に行ってきました。目的は、学生になりすましキャンパスに潜入して失われた青春を取り戻すことではなく、文学展として企画された「宮沢賢治展」を見るためです。当展示の目玉は、新発見の賢治自筆資料といわゆるブロンズ本と呼ばれる『春と修羅』。賢治以外にも同時代の周辺文献として、萩原朔太郎の無削除版及び与謝野晶子宛献呈署名入りの『月に吠える』や現存1部と云われる高村光太郎『道程』特製版、その他啄木、犀星、中也といった日本近代詩を彩る豪華メンツの稀覯本が、これ見よがしでなく当たり前のように陳列されている贅沢ぶりです。
 自筆資料は、同級生に宛てたハガキや書簡など。その筆致は、神話の世界の存在のような宮沢賢治が、東北の地で確かに生きて悩んでいたことの痕跡を生々しく表していると思いました。ブロンズ本というのは、聞くと頁が青銅で出来ているとんでもない代物に思いますが、実際は背表紙をブロンズの粉で塗りつぶしたものを称して、そう呼ぶそうです。「詩集 春と修羅 宮澤賢治作」と書いてあるのを恥ずかしく感じた賢治が、自分で塗りたくったと云います。自作の出来上がりを目にして何か屈折した感情を抱いた賢治が、わざわざ用意したブロンズの粉を本になすり付けている様は、想像すると感動的です。『「春と修羅」ブロンズ本』は、賢治の手の運動性を想起させるという意味で、おそろしく貴重な本というわけです。
 寒空の下を電車とバスに揺られて辿り着いた初めて降り立つ地。そこで見た詩集群は忘れられないものとなりました。

京成電鉄本線勝田台駅北口バス停付近
今回の自筆資料の旧蔵者、
成瀬金太郎宛のハガキ  
成瀬氏は賢治の     
  盛岡高等農林学校農学科第二部
  の同級生          



背表紙の3冊内左が普通のもの、
中と右がブロンズ本      

石川善助の没後刊行された『鴉射亭随筆』
賢治が追悼文を寄せている       
 石神井書林の内堀氏が、鶉屋書店の飯田氏に
 市場に出たら強く入札しろと教えられたのが
 この本ではなかったでしょうか。     


灰色の空と色づく葉っぱ