ページ

2020年1月23日木曜日

大常設展、それは・・

 22日から大常設展が始まっています。仕入れた品物を店に並べて、来店されたお客様に見ていただくという企画です。それって普通の営業じゃね?と疑義を呈する方もおられると思いますが、概ねそのとおりで、それをイベントの体裁にして人を呼び込もうとするのは、マルセル・デュシャン的な詐術のようですが、そんなスマートなアイロニーでは済まない切実さが、ダダ漏れになるほど流れていることに気づいてほしいのです。
 参加店舗は敬称略・順不同で、画餅洞(京都)、百芍丹(京都)、大吉(京都)、toripie(大阪)、タユタフ(石川)、南方美術店(東京)、gallery uchiumi(東京)、Antique what's(東京)、Galerie Azur(東京)、弊店逆光(東京)。古物や骨董や器が好きで、ふだんからお店や企画展示を巡っている人ならば、これが尋常ではない布陣であることに気づくはずです。業界の一枚看板から清澄な眼の新鋭、やや常軌を逸した品筋の業者までが、店舗巡りの楽しさの復権を賭けて集いました。と言っても、各々がそれぞれのお店で通常営業をしているだけですが。
 あれだけの物量の品が一同に集まるわけですから、イベントが楽しいのは言うまでもないのですが、ある程度の大きさの施設に人や物が揃うと、どうしても公的な色彩を帯びてきます。するとそれが私的な(この場合は店舗)ものをつまらなく思わせてしまいます。古い物が好きになったきっかけがイベントだという方は、ぜひそこから私的空間の仄暗いゾーンにダイブを試みてください。店主たちは手ぐすね引いて待っているはずです。

たのしいものがあるはずだけど・・という店主の
私的な妄念が渦巻く場所、それがお店です。  

2020年1月3日金曜日

狩人の昼

 新年明けましておめでとうございます
 旧年中の皆様からのご厚誼によって2020年を
 恙無く迎えられましたことに
 心よりの感謝を申し上げます
 本年もどうぞよろしくお願いいたします


 2000年代という西暦のよそよそしさにもそのうち慣れるかと思っていましたが、なかなかそうもならずに迎えた2020年。数字の並びがもたらす無機的な近未来感は格別ですが、これといった感慨は湧かないものです。大晦日はしいたけ占いの2020年上半期を見て、来るべき年に向けての作戦を構築しようと考えていましたが、途中でRIZIN.20が始まったので止めました。とにかくジョン・マカパという選手の打たれ強さには恐れ入りました。こういう肝の太さと土性っ骨を、遅ればせでも養っていかなければならないだろうと感じました。すごく取ってつけたような感想ですが。

 明けて元旦、例によって山谷のカフェバッハまで。近未来なのに、やることは毎年同じ。これがドゥルーズの差異と反復というやつでしょうか。違いますか。素敵なタイミングで待たずに入れたことがなによりでした。当たり前のように旨いものを出して、なんの気取りも衒いも見せずに続けていくことの凄さに、毎度頭が下がります。下がりまくります。それから浅草寺を突っ切って、フルーツパーラーゴトーへ。これも毎年同じ。まるでギリシャ悲劇のように避けられない宿命であるかのごとく。浅草寺の参拝客の溢れかえりぶりには毎度のことながら驚愕します。境内に200億人ぐらいはいるんじゃないでしょうか。地球人口77億の時代にあって考えられないことです。列について初詣を済ますまでに5年はかかるでしょう。果たして5年後の日本はどうなっているのかと思いを馳せつつ、居酒屋の軒先で出してるモツ煮込みとゴトーの冬色パフェを食って帰途につきました。

 次の日は東京国立博物館へ。年始の落ち着いた雰囲気の公的機関で学級の徒を気取りたい。と思っていたのですが、意に反して凄まじい混みっぷり。現在、高御座と御帳台を無料公開中なので、そこに人々が押し寄せていたのでした。密度の濃い行列がすでに噴水広場からも目に入って、ちょっと腰が引けました。その影響なのか、常設展示もいつもよりは賑わっていましたが、素晴らしきものを見る楽しみは、皆で分かち合わなければいけません。あーいいなー、欲しいなーとか、いちいち聞こえよがしに声に出して廻ってしまいました。はしたない振る舞いではありますが、いいものを見たら致し方のないことです。
 いいもの見すぎて糖分が足りなくなったので、上野駅のみはしで苺クリームあんみつ。トーハクや都美の半券を見せると、白玉2個のトッピングサービスがあります。人として忘れたくないことですね。

 そんな次第で予測不可能な近未来ではありますが、改めまして本年も逆光を何卒よろしくお願い申し上げます。


巷で噂の横河の兎 
白鬚橋 イルミネーション用の化粧を纏って
いるそうです              

バッハ 尊いですね

10種の果実の冬色のパフェ 
北斉の菩薩立像

後背の細工がすごい

握りしめたくなる量感

徐渭『花卉雑画』からの一葉

『不動利益縁起絵巻』14世紀 南北朝時代
身代わりで冥界に連れて来られた不動明王を巡って
黄泉の国は大パニック!みたいな愉快なノリの絵巻物

慌てて頭を下げる冥王その他
「うげっ!マジか!ヤバい奴連れて来やがった!!」
みたいなシーンなんでしょうね       

隼人石像碑拓本
ルチャリブレのレスラーみたいに見える鼠

みはし 苺クリームあんみつ