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2022年7月4日月曜日

夏泥棒さんたち

 早すぎた夏の償いを理不尽に転嫁されたかのように、近辺に生命反応を一切探知できなくなった街、八丁堀。ここは死の欲動に誘われて、主体の存立基盤さえ揺らいでしまいかねない危険な都市なのだ、とベンヤミンも言っています。いや、言ってないんですが、言ったも同然なぐらい、この夏の巻き気味な前倒しぶりは不気味ですよね。そんな年は決まって何かが起きるもの。何が起きるのかというと、現時点で分かっている限りでは、あなぐりです。骨董屋が八人集まって昨年の二月に神楽坂のギャラリーで開催した古美術の展示即売会なのですが、良き評判をいただいたことを幸いに、今年も同じ場所で実施します。公式アカウントで出展商品の宣伝が始まりましたので、のぞいてみてください。
 さっき店に来るとき、鳩がこちらの真正面に向かって、すごい速度で走ってきました。明らかに体当たりの勢いなのですが、野生の生き物がおいそれと人間にぶつかるはずもないだろうと高を括って避けずにいたら、ぶつかりました。鳥類と人類の予期せぬ接触(コンタクト)。やはり今年の夏は危険な匂いがします。


   小さすぎた水無月と雨漏堅手茶碗

2021年12月28日火曜日

ぷちぐり

本日をもって逆光の今年の営業はお仕舞いです。皆様のお陰をもちまして、弊店も2022年の日の目を見ることができそうです。有り難きことこの上なし。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

👇そしてご挨拶もそこそこに催事のご案内です

ぷちぐり
日時
2022.1.29(土)-2.13(日) 13-18時 最終日16時まで
※2.1(月)-3(水)、7(火)-9(木) close
場所
606-8383
京都府京都市左京区二条通川端東入ル新先斗町133サンシャイン鴨川102
出展者

名称は先の2月に開催した"あなぐり"のグループ内ユニット的な立ち位置ということで、発想の元ネタは言わずもがな、モーニング娘。に配するプッチモニ。この場合、つんく♂氏への挨拶は済ませておいた方がいいのか、という議論も出ましたが、この件は曖昧に放置されたままです。
ともあれ、大脳皮質の記憶を司る部分にスケジュールを刻みつけておいていただけると幸いです。皆様のお運びを一同手ぐすね引いてお待ちする所存です。

   三十三間堂伝来 木彫狛犬


2021年7月23日金曜日

飛び出せ、夏泥棒

 今にもくずれ落ちそうなLoneliness

                                              ―――――TOM


暑いとか客足が無いとか、言わずもがなのことを口にしても通帳の残高が増えるわけではないので、黙っていたい今日この頃。しかしことによったら、何か人智を超えた力が作用して、暑いと言うごとに誰かが口座にいくらか振り込んでくれたりはしないだろうか、という思いが頭をかすめてネットで確認してみるも、先月分のヤマトの運送料が引き落とされていて、むしろいっそう残高が少なくなっていることに気づいてうなだれる、、そんな日々が続いて皆さんもさぞ気疲れしていることと思います。

そこでたぶん朗報としてお伝えしていいと思うのですが、8月21(土)と22(日)に銀座のソニーパークという商業施設のB1とB2のフロアで10時から16時まで「道具屋めいてい研究所こっとう市」なるイベントが開催されます。当初5月開催の予定が延期になり、ようやく実現の運びに漕ぎつけた次第です。出店メンバーは書くのも憚られる恐るべき人たちなので書きませんが、他に類例がない組み合わせであることに驚きを禁じ得ないと、巷では専らの噂です。弊店が超末席に加わっているのはこの際どうでもいいことで、まずは取り急ぎスケジュールを空けておいていただけたら幸いです。

久しぶりに文章を書いたら大脳皮質の言語野が破裂しそうなので、このへんで止めておきます。皆さま、どうぞご自愛ください。












2021年1月27日水曜日

あなぐり

使っているパソコンとbloggerとのアレがどうにかなったようで、450年ぐらいブログを更新できずにいました。今も実際アレのままなのですが、スマートフォンからは書き込めるようなので、試しにアップしてみます。

現在、"あなぐり"と名付けられた骨董・古美術・古道具の展示即売会の準備に追われている最中です。追われていると言っても、感染状況がマシになるのと、当日の天気が晴れますようにと祈っているだけで、あとは共催の仲間たちに万事お任せといったところです。
仲間たちというのは、IMADO・うまのほね・花元・志村道具店・トトトト・トリピエ・南方美術店(五十音順 敬称略)で、皆自分にとっては尊敬措く能わざる同業者です。この面々が一同、必死で手元に寄せて且つ手放すのが惜しい物を並べます。インスタグラムの公式アカウントにも出品が出揃ってきました。まずは国民の義務だと諦めてフォローの上、なんやかんやと物色をお楽しみいただけましたら幸いです。
厳しい時勢は承知の上で、開催を目指して着実に準備が進んでいます。2月27(土)28(日)という日付を脳裡に刻んでおいてください。
どうぞよろしくお願いいたします。



2020年8月3日月曜日

上毛に噛み付け

 必要緊急の案件で高崎まで。群馬県立歴史博物館で開催中の『綿貫観音山古墳のすべて』を見に行ってきました。今年の3月に文化審議会が、この古墳からの出土品を国宝に指定する旨を文化科学大臣に答申したことを受けての記念企画・・の予定が新型コロナウイルスの感染拡大により休館。7月にようやく開催の運びとなったのでした。博物館のあるのが群馬の森という公園の中で、折しも梅雨が明けて雨雲が払われた空の下に濃い緑が広がるいい場所です。園内には二科展上がりみたいな謎の抽象彫刻とかを置いたりせずに、ブールデルとか宮脇愛子を配するあたりもポイント高し。などと偉そうなことをブツブツ言いながら館内へ。
 ヴィスコンティの『若者のすべて』みたいなタイトルですが、展示物はその次の『山猫』を思わせる支配階級層の絢爛たる遺品です。上毛野国(かみつけのくに)という土地がヤマト王権の威光をいかに色濃く浴びていたかが分かる凄い展示。会場に入ってまず目にする鍍金のよく残る王子形水瓶も、参考に並んでいる東博所蔵の伝・近畿出土の水瓶より線がふくよかでナリが良く見えるし、雲珠や轡や杏葉などの馬具も中央に引けを取らない作行き。藤ノ木古墳や奈良桜井の遺物も並んでいて、見比べられるのがおもしろいところです。東国屈指の豪族の墓であることに加えて、未盗掘であったことが驚くべき質と量の原因だそうです。ズラリと並ぶ金ピカの飾り金具を見てた隣りのおばあさんが、一つぐらいくれないかしらね、と言ってました。カタギの人がそう言うぐらいですから、業者が目にした日には、物欲の滾りを見咎められて出入り禁止になりやしないかと心配になるほどです。地域の一古墳から出土した一流の文物という観点だけではなく、東アジアという大きな地理を射程に入れた流れの中での遺物、という視点を教えてもらえる素晴らしき展示でありました。生きとし生けるものすべてが見に行くべき企画展だと思います。
 梅雨もいつの間にか明けましたが、今のところは去年みたいな凶暴な暑さを発揮してませんね。夕涼みも楽しめそうないい時節。では、八月もどうぞよろしくお願い致します。

上毛の空

群馬県立歴史博物館。立派な建物です。

観音山古墳出土

伝・近畿地方出土

ハーリー・レイスとかリック・フレアーが巻いていた
頃のNWAのベルトみたいな大帯。鈴の紐帯というのか
合わせ目の厳しい作りがすごい。         

雲珠と辻金具。花弁一枚くらいならいつの日か
手に入るだろうか・・と妄想。       

杏葉各種 



八幡塚古墳。群馬は前方後円墳天国。

かみつけの里

秋葉のバス停付近


 

2020年7月2日木曜日

さわやか人間選手権

働かずして文句か男たち
       ----------宮本浩次

 梅雨の谷間の恩寵のような青空の下を全力で駆けてみたら、35メートルぐらいで息が上がりました。なんという生命力の欠如。我ながら驚きです。こんなことで、生き馬の目を抜く古物の業界で生き抜いていけるのか、それを思うと気鬱で夜も眠れず。ということは全くなく、グーグー寝てます。むしろ寝過ぎで頭が痛い。それよりも、交換会や市場も再開したわけですから、物を買える喜びや人と会える嬉しさを言祝がなければいけません。少量ながら新しい品物も並んでいるので、ぜひ店にもお運びください。
 久しぶりにブログなどというものを書き付けてみましたが、ほとんど日本語を出力する能力が退化しています。もとよりそんな能力など無かったのかもしれません。前頭葉のあたりが痛くなってきたので、今日のところはこれぐらいで。今月もよろしくお願い致します。

 
意味ありげなMVっぽい映像。

つかみ取り大会を実施したいぐらいの土器片。
ほとんどが縄文晩期のものです。      

2020年4月25日土曜日

あつまれ にんげんの林

あんなに近づいたのに遠くなってゆく
              ----------岸田繁 


 経営的なことを云うなら、常日頃から緊急事態宣言を発令している当店ですが、もはやそんな局面ではなくなりました。前代未聞の事態に、用が無いのに慌てふためきつれえのなんの(by宮本浩次)となるならまだしも、手の施しようがなくてむしろ落ち着き払った風情の今日この頃。派手に寝坊してすでに大幅な遅刻が分かり切ってるので、かえってのんびりし始めている心理に似ているでしょうか。動じず慌てず、出来る大人の仕事術10の法則。とか言ってる場合ではなくて、貧すれば鈍するで、対処すべき案件が容量を超えたために思考回路が遮断された状態です。三人寄れば文殊の知恵といっても、そもそも人の集まりが禁忌の昨今。真の独創は孤独から生まれると開き直っても、足りない脳からは何も出てきません。メールやリモートで案を出し合っても、やはり同じ空間でいろんな声を響かせ合うことには及ばない気がします。それにしても、たった一月前に差し向かいで飲んだ人たちが懐かしく感じるという不思議さ。
 
 というわけで逆光は店は閉めておりますが、インスタグラムで通信販売の品物を鋭意ご紹介中ですので、なにとぞお目通しを!→👃
 それとちょっと差し出がましいと思いつつ、友人や同業仲間の企画などをご案内。まずは漆工の相田雄壱郎さんが今月下旬から銀座のギャラリーで展示会を予定してましたが、当然のごとく中止に。まだ具体的には上がってませんが、今後何か通販的なことを画策してるようですので、随時チェックしてみてください。今回の展示については本人からもコンセプトを聞いていて、そこから察するに何やら80年代のゴダールみたいな過渡期のエモーションを纏った制作物が登場するようです。
 そして京都のトリピエさんでは渡辺林平さんの個展をwebにて4月25日から5月24日まで開催。渡辺さんは岡山出身・在住で、備前を皮切りに朝鮮や唐津や須恵などから着想を得たものまで作風を伸ばしている作家です。作品は全地下式の穴窯で焼かれるとのことで、詳しくはないのですがたぶん歩留まりは悪そうです。が、いい上がりの物が集まったみたいです。
 青山のそらんじさんは今年から満を持してインスタグラムを始めて、そこで独自の目筋で集めた物を紹介しています。開業の際のこのご時世に青山に店舗かよ!という周りの驚きを尻目に、店主は至って飄々としているようないないような、品物もそんな風情を纏ってます。
 広島に今年openした而二不二さんもかなりの独自路線を走る古物と作家ものの店。ニニフニと、日に何度も口にしたくなる屋号です。あっさりと店舗を構えてみせる土性っ骨とサイトから察せられる静謐な品揃えの対比に驚かされます。
 もう一軒驚かされるのが京都のGallery三さん。以前に高円寺で甘味処をやっていて、そこから紆余曲折を経てどうしてるのかと思っていたら、いつの間にか今年の春に京都に器屋を開いていました。肝の据わり方が突き抜けてますね。
 もひとつ、「賽」という骨董の小冊子を今年同人で刊行したのですが、そのweb版を現在公開中ですので、ぜひご覧ください→🌻 参加業者は志村道具店うまのほね坂本大toripie、逆光です。

 それでは皆様、どうかご無事にお過ごしください。収束後の解放感を夢に見つつ、今は地下潜行でもしてるつもりで、虎視眈々と世界の行く末を目に焼きつけましょう。


「賽」号外に載せた女神像です。いい像容だと思います。

 
よろしくお願い致します。