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2016年5月31日火曜日

日曜日は東国で

6月5日(日) 有楽町東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店

6月8日(水) 『点店3』搬入・展示準備のため臨時休業
6月9日(木)〜12(日) 『点店3』開催
6月13日(月) 搬出休

インスタグラムに店内商品を少しずつアップしています。
こちらからどうぞ。→👃 

 鎌倉東慶寺内の松岡宝蔵で開催中の「鎌倉の名宝 明月椀」展を見に行ってきました。花が咲き乱れ、緑がモサモサと繁る紅花栄(べにばなさかう)と麦秋至(むぎのときいたる)の狭間の北鎌倉。駅に降り立つと、高価そうなカメラを構えた人々が、ホームから溢れんばかりに陣取っており、さらには警察官の姿も。ハリウッドセレブでもやって来るのかと思い彼方を見やると、国鉄特急色と呼ばれる車輛がゆっくりと迫ってきます。俄に色めき立つ北鎌倉駅構内。早々に通過して踏切が開くのを待つも、どうやら線路内侵入があったらしく、列車は遠くで止まったままです。

485系特急型電車のY157記念列車

こんな車輛が近づいてきたら、誰もが
にわか撮り鉄になってしまいます。 
意味ありげに「指定席」のプレートを
写してみたり。          


ようやく通過していきました。


 小津安二郎の映画を一本上映できたのでは、と思われるほど待たされて、ようやく踏切を渡ることができました。いかにも要害の地という感じで、平たい場所が少ない鎌倉。物陰から今にも佐分利信と佐田啓二が飛び出してきそうです。駅から左に折れて鎌倉街道を真っ直ぐ、道筋の奥まったところに東慶寺の階段と山門がすぐに見えてきます。境内が狭いので、花々に挟まれるようにして歩きます。
 
かっこいい山門。



八重咲きのドクダミが咲いてました。 
イワタバコの花。

 展示を見る前に、まずは小林秀雄の墓に挨拶。すると、その瞬間とつぜん、現代日本における批評的視座が一幅の絵のように明瞭に目の前に開けたのでした・・ということは一切なく、変わらずぼんやりした頭で展示会場に向かいました。中はこぢんまりとして小規模ですが、なかなか漆器だけの展示というのもないので、ひとつ本腰を入れて、貰えるならどれを持って帰るかを検討しました。明月椀の展示なんだから、明月椀を貰わなければ失礼だろうなあ、でもやっぱり薺絵の秀衡椀が欲しいなあと、ひとしきり交わされる脳内会議でのやり取り。それにしても、文学の玉座が詩から小説へと渡って久しいように、器といえば、今や漆器ではなく陶器を云います。詩の復権を願いつつも、あまりの空腹に離脱。
 もはや名の知れた店はどこも混んでいて、すぐには入れず。そこらを歩いて、外から空席の見える店に転がり込んで、ハンバーグを喰らって腹ごしらえをしました。その後は亀ケ谷切通しを歩いて鎌倉駅方面へ向かいます。道は舗装されているのですが、山ノ内の登り口に一歩入った瞬間から気温が急に低くなり、異世界に突入した気分になります。それからずっと空気が冷え冷えとしているのですが、道路の色が塗り変わったところに足を踏み入れるや否や、また気温が元に戻るのです。ちょっと不思議な体験でした。
 さて鎌倉と云えば、当然誰もが足を運ばざるを得ないのが、ロングトラックフーズとロミ・ユニコンフィチュールです。二軒ともきっちり廻ってきました。もちろん、若宮大路をずんずん歩いて、由比ケ浜に出向いて海も見てきました。

 

おにぎり、クレープ、鳩サブレー、あの夏の想い出など、
油断していると何でも浚っていこうとする鳶。     

 帰りは、明らかに熱中症と思われる症状に苛まれながら帰宅しました。5月の終りでこの体たらくでは、今年の夏を乗り切れるのでしょうか。まずは今週もよろしくお願い致します。


いま店にある漆器です。秀衡、根来、南部箔などの
名のある物はありませんが、名づけえぬ物にこそ 
漆器の魅力は潜んでいるはずです。       

 







2016年5月28日土曜日

詩と考古

6月5日(日) 有楽町東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店

6月8日(水) 『点店3』搬入・展示準備のため臨時休業
6月9日(木)〜12(日) 『点店3』開催
6月13日(月) 搬出休

インスタグラムという画像共有アプリケーションソフトウェアを当店も
使っております。こちらからどうぞ。→👃

 かつて古ツアこと古本屋ツアー・イン・ジャパンこと小山力也氏が当店にいらした時のこと。小山氏の帰り際、店主は氏に「ここを詩と考古の店にしたい」と、いかにも口から出任せのような妄想じみたことを言い放っています。→2014年7月22日の記事。開業して3ヶ月も経っていない頃の話です。あれからおよそ2年の月日が流れたわけですが・・。

 


 現在の店内風景。一見、土器片や詩歌の本が並んで、有言実行が成されたようでもありますが、あちこちに散らばっているものを机の上に集めて、もっともらしく見えるように仕込んだだけです。言わばヤラセ写真ですね。それも火焔土器もパレス式も遮光土偶の残欠もなく、朔太郎や賢治の初版本もボン書店の一冊もないような品揃え。それでも右から左に動いて利益を齎してくれるのならば何よりの話ですが、たいていは店に一度居座ったら、頑として動かないものばかりです。人が買いたい物を揃えてこその商いなのに、誰も欲しがらない物を集めてくる業者とは何者なのでしょうか。
 欲望を欠如を埋めるための感情と考えると、日々の暮らしの中で土器や詩書が必要とされる機会が巡ってくることはあまり無さそうです。不要不急でないものの価値。マルエツにキュウリを買いに来たけど、とつぜん北関東出土の縄文土器片が欲しくなった。転勤で住居物件を探していたら、安井浩司の句が読みたくなった。欲望が是非そういうものであることを願って擱筆いたします。と、とってつけたように終わります。『点店3』のお越しをお待ちしております!



 
 
 
 
 
 



 

2016年5月16日月曜日

土器土器サンデー

20(金) 仕入のため開店は14時になります。

22(日)・23(月) 荒ぶる本堅地職人、相田雄壱郎氏による金継ぎ教室開催のため
18時に閉店。言葉がリゾームのように錯綜する相田氏のブログ「雄壱郎雑記」を
ぜひ読んでください。

28(土) 『詩について・対話篇 8回目』開催のため店舗営業は16時半まで。


 大江戸骨董市の出店申し込みに間に合わなかったせいで、苦しまぎれの取ってつけたような企画『あぶれ者の骨董市』が、昨日(15日)当店にて開催されました。国際フォーラムの骨董市の出店にあぶれるというのは、死活に関わる重大事なので、急遽実施することにしたのでした。突然の申し込み締切りだったので、他にあぶれた業者もいるだろうと同士を募ってみたのですが、一切音沙汰なし。聞けば、みなさん普通に申し込みは済ませてあって、いつも通り出店するとのこと。生き馬の目を抜く業界をサヴァイヴするだけあって、さすが誰もが盤石の備えだと感心しました。
 日曜日の八丁堀は、人跡未踏の土地のように人影が無いので、店舗での骨董市開催は無理があるだろうと半ば諦め気分でしたが、意に反して多くの方に足を運んでいただきました。どうやらフォーラム出店者のみなさんが、お客さんにこちらにも行くようにと案内してくださったようで、まさしく有り難さに涙溢るる事態でした。
 
 
せっかくなので、店内のディスプレイを骨董市っぽくしてみた
のでした。中津川フォークジャンボリー的な不穏さを醸し出す
ために、BGMは加川良。                 


新潟県の馬高・三十稲場遺跡出土の縄文土器片の
つかみ取り大会を実施。大会といっても参加者は1名。
いい土器片をごっそりゲットしていきました。

 というわけで、なんとか日銭を得ることができたのでした。ご来店のお客様、宣伝告知にご協力くださった皆さまに感謝申し上げます。
 

 さて、来月6/9(木)〜12(日)は『点店』というイベントを開催いたします。新富町・八丁堀・新川・東日本橋に点在する古道具を売買する店舗が、身を寄せ合って一つの祝祭空間を形づくる壮大かつささやかな企画。スケジュールの調整をしていただけましたら幸いです。


逆光は教草・じんたの各氏と共演。というか狂宴。

 では、今週もどうぞよろしくお願い致します。









 

2016年5月10日火曜日

八八八

15(日) 大江戸骨董市の出店にあぶれてしまったので、店舗で
『あぶれ者たちの骨董市』を開催予定。他にあぶれた業者の方が
いらしたら、ぜひ当店でご一緒に。

22(日)・23(月) 会津若松の人間風車、相田雄壱郎氏による金継ぎ教室開催のため
18時に閉店。体中に国産漆が流れていると言われる相田氏のブログ「雄壱郎雑記」を
ご一読のほど。

28(土) 『詩について・対話篇 8回目』開催のため店舗営業は16時半まで。


 ひとつ一から出直さなくてはと急に思い立ち、どうせならいっそ五千年ぐらい前から出直そう、ということで長野県茅野市の尖石縄文考古館に行ってきました。新宿から高速バスで3時間、上諏訪まで行き、中央本線でひと駅茅野に戻り、そこからメルヘン街道バスで20分。降り立てば、すでに標高千メートルを越えた地なので、清澄な空気が辺りに漲っています。八ヶ岳山麓の台地に広がる尖石遺跡は、ここら一帯のみならず縄文文化全体を象徴する遺跡と言われています。
 

とても素敵な物件。突然の渡辺篤史の来訪にも
 なんら慌てる必要はない。          

当地で出土した土器を惜しげもなく並べて
います。並べまくっています。     

 考古遺物の展示を見ていつも思うのは、もし「スタートレック4」的なタイプワープでこの時代に行ったとしたら、果たして集落のみんなとうまくやっていけるかということです。ドングリばかりじゃなくてたまにはグラタンとか食べたいなーなどと、わがままを言うつもりはもちろんありませんが、分担作業をこなせずに迷惑をかけてしまいそうで気が引けます。イノシシ猟は危ないから土器作りに廻そうと、首長的な人にせっかく気を遣ってもらったのに、土の捏ねもろくに出来ずに、イラついた親方に石斧でぶん殴られやしないかとヒヤヒヤしたり。争いのない相互扶助の社会と言われる縄文文化ですが、現代人の鈍い感性に、さすがの彼らも少しムッとしやしないかと心配です。

遺跡の名前のもとになった尖石。当時は  
磨製石斧を作るときの砥石として使っていた
    のではという説もあります。           


 それにしても、これだけの豊穣な遺物が土の下に眠っていたのを思うたびに、不思議な気持ちになります。文字なき世界の詩句であり音階である土器や土偶の文様・造形のすべてを目にしたとき、かつて知られることのなかった壮大なオーケストレーションが全貌を顕わすのではないか、という夢想に浸ってしまいます。あまり夢想に浸りすぎたため、考古館の近くにある温泉でサウナに入り、尻をヤケドしてしまったくらいです。
 
尻をヤケドしたのでは?と思わせる造形。

大河原邦男の造形センスを五千年前に
先取り。             

 先日の八戸えんぶりのイベント、今回の八ヶ岳、そして八丁堀。この「八」の頻出は、何かの予兆でしょうか。今後の末広がりの暗示ならばいいのですが、八方ふさがりだと困ります。などと考えながらバスで新宿に戻り、思い出横丁に寄って岐阜屋でワンタンメンを食べてから家に帰りました。
 というわけで、今週もどうぞよろしくお願いいたします。




 



2016年5月5日木曜日

デイドリームネイション

8(金) 行商や仕入などで開店は15時頃になりそうです。

15(日) 大江戸骨董市の出店にあぶれてしまったので、店舗で
『あぶれ者たちの骨董市』を開催予定。出店業者様募集中です。

22(日)・23(月) 会津の暴れ馬、相田雄壱郎氏による金継ぎ教室開催のため
18時に閉店。血で書かれていると言われる相田氏のブログ「雄壱郎雑記」を
ぜひ。


 


 世間が大型連休と呼び慣わす状況においては、昼時の八丁堀界隈もいつもと違う様子です。人の気配もなく、風もなく、じりじりと降り注ぐ陽の光だけが、かろうじてここがうつつの世界であることを知らせてくれます。でなければ、自分が白昼夢に迷い込んだまま出られなくなった夢の旅人だと信じてしまいそうです。もっともこんな商売を続けていること自体、夢から抜け出せなくなった証しなのかもしれません。
 視線を走らせれば、網膜を横切る青い閃光。と思ったら、ゆで太郎の看板でした。昼ご飯を食べようにも、開いてる店といえば、コンビニかゆで太郎ぐらい。仮に他に開いている店があっても、もはやコンビニかゆで太郎しか使ってないので、特に不便はないのですが。
 日常の喧噪から離脱したいというのならば、これほどふさわしい場所はないかもしれません。皆さまのお越しをお待ちしております。


夢への扉の向こう側には・・。

 











2016年5月4日水曜日

予め祝うこと

15(日) 有楽町東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店の予定でしたが、
油断していたら定員満数になってしまいました。
そこで書肆逆光店舗にて『あぶれ者たちの骨董市』を開催いたします。
15(日)の大江戸骨董市にあぶれてしまった業者で出店希望の方がいらしたら、
メールでご連絡ください。

6/9(木)〜12(日) 中央区銀河英雄伝説『点店』の三回目が開催されます。
皆さまのお運びをお待ちしております。

サンパウロ育ちのマイク・クリーガーがソフトウェア開発を担当した
インスタグラムに店舗の商品を少しずつアップしています。
あわせてご覧ください。こちらから→👃 


 詩人に最も残酷な月と詠われた4月の最終日、日本各地の民俗芸能の情報をネットで発信する「仔鹿ネット」の発表会『仔鹿のまなざし』が当店にて開催されました。第一回目となる今回は青森県八戸市の「えんぶり」について。田畑の地ならしに使う柄振り(えぶり)が名称の由来というだけあって、田楽から派生した五穀豊穣・無病息災を祈る芸能です。現在のえんぶりには、多分に明治近代以降の西洋体育的な動きが加味されているかもしれませんが、それでも所作のところどころに、民族の最古層から響いてくるものが感じられ、怖いようなかっこいいようなものを見た気になります。
 今回の映像は、サイトを運営する高橋亜弓さんが、2月に行われたこの祭りの取材のために、数日間現地入りして撮ってきたものです。見るという行為は全てを公平に視界に収めることができないわけで、ということはつまり撮影された画像とは、撮った人間の身体性や生活史の刻印であり、その視線の質的な厚みこそが、イベントタイトルにも使われている「まなざし」と言えるのかもしれません。
 30以上あるえんぶり組の中、高橋さんが張り付いたのは八太郎と呼ばれる組です。縁を取り持ったのは、韓国太鼓を学ぶチェ・ジェチョルさんと八戸を拠点に活躍するアートコーディネーターの今川和佳子さん。ジェチョルさんは、八太郎の高橋常男通称たかつねさんが踊る恵比寿舞の素晴らしさに魅せられて、ついに今年のえんぶりに参加してしまった人です。恵比寿舞というのは、大衆芸能として後になってえんぶりにくっついたものだそうで、たいていの組では子供が担当するこの舞を、八太郎組ではたかつねさんが踊ります。型に沿った子供達の踊りとは違って、酸いも甘いも噛み分けたたかつねさんの舞は、登場するや一挙に場の空気をさらいます。まさに民俗芸能界のロバート・ジョンソンと言っても過言ではありません。
 映像を見ていると、こうして場面が映っているのは、高橋さんがかつてそこにいたからだ、という当たり前の事実に不意に驚かされます。居合わせた現場の親密な空気を、高橋さんのまなざしは確かに捉えていて、それが仔鹿ネットの映像がありきたりのドキュメンタリーと一線を画す点なのだと思いました。
 というわけで、仔鹿ネットの今後の活動になにとぞご注目ください。そして、言祝ぎが大いに振り撒かれた後のめでたい逆光にもぜひお運びください。


たかつねさんへの愛が昂じるあまり、背中に
たかつねさんの図像が憑依した仔鹿ネットの
主宰者高橋亜弓さん。          


ふだん訳の分からないものが並んでいるテーブルには
当日八戸の市場から直送された旨いものどもが犇めき
あっています。                 

隅でおそらく塩辛を取り分けていると思われるところの
ジェチョルさん。                 

人々。

たかつねさん&孫。唐突に実現した舞による
即興セッション。