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2018年10月9日火曜日

いざ鎌倉的な

 歴戦の猛者たちの末席に加えていただき、『秋の鎌倉古美術展』に参加することとなりました。11/10(土)11(日)の二日間、11-17時、場所は西御門サローネという古い洋館で、里見弴が大正末年に自ら設計して家としたところでもあります。里見弴は本名を山内英夫と云い、有島武郎と生馬を兄に持ち、彼らとともに志賀直哉、武者小路実篤らの「白樺」同人に参加しました。どういう謂れなのか、志賀たちからは伊吾(いご)の愛称で呼ばれていて、同人中では弟扱いのイジられキャラの役回りであったようです。志賀に対する里見の感情は憧れ交じりの複雑さがあり、折りに触れて衝突がありました。お坊ちゃんどうしの自意識のぶつかり合いでしょうか。里見が小説『善心悪心』を出した時には、志賀をモデルにした登場人物の扱いが志賀の勘気を蒙り、ついに絶交状態になりました。志賀直哉というのは相当に気難しい人で、その直情潔癖から生じる行動に周りの人間はかなり振り回されたようです。正宗白鳥が「資産家だからいいようなものの、あれで生活苦だったら葛西善蔵よりヒドいかも」みたいなことを書いてました。そういう動物じみたところと神様扱いされてしまうような部分の同居が、得体の知れない魅力を放散する源だったのでしょうか。どうも志賀という人間は気に喰わないぜ、と勇んで本人に会いに行ったら、すっかり魅了されて帰ってきたという話は結構伝わってます。里見と志賀の仲も幼馴染みの腐れ縁で、いつの間にか元どおりになりました。里見弴の顔はネットを検索すればいくらでも出てきますが、若い時も老年に至っても、好きな事だけしてきた遊び人みたいな風貌です。なかなかこんな筋金入りの面立ちというのは、昨今ただ界隈を歩いているだけでは見られない気がします。というわけで11/10(土)11(日)の『秋の鎌倉古美術展』、お誘い合わせでもお一人様でも、古都の散策を兼ねてぜひお運びくださいませ!

のっぺりと平たい街の雑居ビルの一室から、自然と歴史が
渦巻く都へ。スケジュール空けておいてください!   

2018年9月22日土曜日

北より来たりて

 みんな見たのでしょうか。太川陽介(本名 坪倉育生)と古村太(本名 古村太)との接近遭遇を。かつて「昇れ!太陽くん」のキャッチフレーズで世に出た都倉俊一の秘蔵っ子が、見慣れたビルの階段を上がっていく様子は、これといった演出がない分、かえって異様な緊張感を放っていました。そしてルイルイがドアを開けると、そこにはかなり見知った人の笑顔が。ちょっと怯んでしまうほどに古村さんがテレビ映えしている・・。このままサンミュージックに入れるんじゃないかと思うぐらいに。そんな古村さんのお店『マレビト』が出店している有楽町の大江戸骨董市には、弊店逆光も出ています。まずは直近9/23(日)のお運びを心よりお待ち申し上げております。と、古村さんの悠久の大地のごとき広い心に付け込んでの露骨な便乗宣伝で恐縮ですが、新入荷も持って行きますので、どうぞよろしくお願い致します。

 悠久の大地といえば北海道。彼の地ゆかりのアーティスト、ともちゃん9さいの1stアルバム『世界の果て、はて、ハテ。』が入荷してます。弊店が場を提供している詩人の会に参加している才能の士、全身表現者です。ジャンルはポエトリーリーディングですが、タワレコなどのショップでのカテゴライズだとJ-HIP-HOPのところに並んでいるそうです。だとすると、た行で鎮座DOPENESSの近くに位置してますね。鎮座さんとともちゃん。いっしょに積み上げたら、不安定な物質どうしの化学反応で爆発しそうです。
 音楽に合わせたポエトリーリーディングというのは日本だと馴染みがないですが、アメリカだったらルー・リードみたいな人がいて、『LULU』というとんでもないアルバムを出してます。それじゃ、ともちゃん9さいはガーリッシュなルー・リードかと言うと、だいぶ違う気がしますが、そういう名前を聞いて徐々に買う気が触発されてくるなら素晴らしいことです。自分が聴いて浮かんだのは、コーネリアス、頭脳警察、リリアン・ギッシュ、魔女の宅急便、エミリー・ディキンソン、ユリ熊嵐、油壺マリンパークetc. ああ、なるほど、なんとなく分かってきた、という方はぜひ。



はためくフラッグ 

かつてない緊張が走る。が、太川氏はリュック片方掛けの
リラックスムード                  
この場所、逆光から20メートルぐらい。ここまでニアミスして
おきながら、寄ってもらえなかった不甲斐なさ。      

『世界の果て、はて、ハテ。』特典CDRが付きます。2,160円。
下は久々入荷の石器類。長万部出土のレッテルが貼ってある
ものもあります                    

2018年9月10日月曜日

ひとつの戦い

インスタグラムで店内商品を紹介しております→👃 

 
 日曜日。先週の大江戸骨董市中止の痛手を癒すため、門前仲町まで行商へ。3年ぶりとなる富岡八幡宮への出店でした。あてがわれた場所が蟻の巣穴のたくさん開いた土の上で、そこに敷き布を広げれば当然蟻の出入りを塞いでしまうことになります。実際、品物を並べた布の上を、帰る家を失った蟻たちが右往左往しておりました。相済まない思いではありましたが、こちらも食い扶持を得るためのある種の生存競争に参加してるのですから、おいそれと場を譲るわけにはいきません。そこには昆虫も人間も変わらぬ切実な思いがあるはずです。そんなを気持ちを察知してか、蟻たちも「みなさん、ここで買ってあげてくださーい」「とても目利きで良心的な値段の店ですよー」と言って、自分のことを応援してくれているような気がしました。というのはウソで、「早くそこどけ!」「なんで金を稼ぎに来てんのに、割れたものばっかり持ってくるんじゃ!」「汝窯の水盤でも用意してみろや!」と、どうやらなかなか手厳しい意見を口にしているようです。向こうは数を恃みにして好き勝手言ってますが、こっちは4時前に起きて一人で来てんだよ、と意味不明の開き直りで対応しました。それにしても久しぶりの門前仲町、まだまだ蒸し暑いさなかをたくさんの方が足を運んでくださいました。八丁堀であれば、冷やした店内でゆっくりとお買い物ができますので、ぜひお店にも。それでは今週もよろしくお願い致します。




骨董市の日曜日、堅気だった頃に胸を高鳴らせてくぐった鳥居

御大が写り込みました

2018年9月5日水曜日

おはようこんにちはさようなら

 悲しみの涙は甘いそうだから、料理にこぼしてせっかくの塩加減を台無しにしてはいけない。平日のお昼前。八丁堀。中華シブヤ。ここ最近は足が遠のいていたので、ドラマ版『孤独のグルメ』の舞台になったことも、卸売市場の豊洲移転をきっかけに閉店することも知らずにいました。閉めると知ってノコノコ出向くのも、ちょっとダメな感じで気がひける・・とかいった自意識は彼方に捨て置き、久しぶりに行ってみたら、開店直後にもかかわらず満席&行列。すでにカウントダウンイベントの様相を呈していました。
 厨房は2,3人の増員態勢で臨んでいるので、回転は速いです。注文がいちばん多いニラ玉であれば、オーダーの有無を問わず見込みで作り続けているから、タイミングが合えば5秒ぐらいで出てくるかもしれません。もちろん作り置きではなくて出来立てです。注文→配膳のスピードは、ことによったら現時点の世界の飲食業界で最速かもしれません。これも経験の為せる業でしょう。創業は八丁堀の地で、先代から数えて六十余年とのこと。最終営業日は今月28日(金)。土日祝休み。営業時間は11:00〜14:00、17:45〜21:30。ですが、夜の部はすでに最終日まで予約でいっぱいだそうです。いつ行っても混んでいるお店でしたが、さすがに今の混雑ぶりは別格でしょう。お蔭でウェットな抒情に浸る間もないから、涙を流す余韻も今はありません。きっと店が閉まってからのある日、あの角を曲がって灯りの消えた赤い看板を目にした時に、大事なものがまた一つ、本当になくなったことが心に染みるのだと思います。

ニラ玉 ライスを付けて800円。ニラは毎日築地の市場に主人が
自分で買い付けに行くそう。160束ぐらい仕入れるとのこと。
地の利のお蔭でお昼の仕込みに間に合っていたのが、市場の
豊洲移転でそれも叶わない、というのが閉店のきっかけ。  


開店数分まえの光景。

小さな店内。厨房を含めて、逆光より少し広いぐらいでしょうか。

 

2018年8月29日水曜日

空の青

 M,U,S,G(屋号頭文字)で連れ立って広島出張へ。降り立つのは初めての地。東京に比べて体感で28%ほど暑いと思いました。まずは広島ならではのB級グルメ的なもので腹を満たすつもりでいましたが、到着が早すぎたようでどこも開いておらず。そのうち結構な勢いの通り雨に降られて、仕方なしに駅前のプレミアム系のハンバーガー屋に入らざるを得なくなりました。着いて早々に散財です。
 大きなガラス越しに外を見ると、路面電車の行き来が目に入って、にわかに興奮します。人間という生き物は、路面電車や懸垂式のモノレールを見ると幸せを感じるものです。お蔭でセロトニンとドーパミンがほどよく分泌され、いい仕入ができそうな錯覚を覚えました。このまま路面電車で世界の果てまで乗っていきたくなりましたが、そんな誘惑を抑えてタクシーで交換会会場へと向かったのでした。今回買った品物は、店や骨董市などでご覧に入れる機会があるかと思います。どうぞよろしくお願い致します。
 会が終われば張られる宴。今回は1→2→3次会出席と、自分としては珍しく、飲み会エリートのような立ち振る舞いをしてしまいました。芸州の濃密な土地の力の賜物でしょうか。次の日は、原爆ドーム→お好み焼き→安芸の宮島という半日弾丸観光。僅かながらも、日本の縮図と言われる広島の豊かさに触れた気がしました。ふだん中央区の平坦な地に居るので、少しの接触が却って印象を濃くしたかのもしれません。
 帰りの新幹線では、隣席の人が日本酒の小瓶を空けて、仕入れた盃にせっせと味付けをしており、最後の最後まで仕事への意識を途切らさないプロフェッショナリズムに感動したのでした。

橋と夕焼けと路面電車。何もかもが申し分ない光景。

 

架線と石畳。

宴会場までの道のり。佇まいからレベルの高さが
伺える店があったような気がしました。    

二次会でしょうか。一升瓶入れてます。きちんと
空けました。                

たしか三次会の店です。

次の日。爽やか。しかし台風が徐々に接近していた。




心の中で勝手に姉妹都市条例を締結。

有名店、来ました。

各自注文したものを強引にシェア。写真映えを
狙った盛り付けのはずが、残飯のような出来栄え。
が、美味かったです。            

こんな光景が普通に見られるという。

架線と分岐フェチが昏倒しそうな街並。 
終点マニアが号泣しそうな絵面。

来ました、宮島。厳島神社の鳥居。

わーーっと駆け寄る間もなく撤収。帰りの新幹線の
時間が迫っていました。            

鹿が。

台風に追いかけられての帰還でした。隣りには
独り宴会をする人。            

2018年8月18日土曜日

ゾゾゾタウン

 8/25(土)-9/2(日)に当店にて開催する『柿渋染めかばん展』のお知らせです。柿渋で染めた鞄を展示するという、展示タイトルに一切偽りのない催しです。Yoshino Yashimachi(よしのやしまち)という名義で活動する、鞄作家と言っていいのかどうか、とにかく今は鞄だけを作っている青年の手になるものです。コットン紐をシルクのミシン糸でジグザグに縫いつけて柿渋で染めて出来上がる形と風合いは独特です。
 食うに困ってアパレル業の真似事を始めたように思われるかもしれませんが、それだと半分しか当たっていません。よしのさんとはとある場所で出会ったのですが、その時持ってたお手製鞄が素晴らしかったので声を掛けたら、展示の運びとなったというのがもう半分です。毎度のことながら成りゆき任せで今日まで生きてみましたという感じで感慨深いです。
 展示の打ち合わせをしに、後日店に来てくれたよしのさんが「鳥の巣の造形に憧れる」と言ったのが印象に残っています。鳥は小枝や枯れ草などを材料として唾液と混ぜ合わせて巣を形づくっていくのですが、よしのさんは自分の鞄の作り方はそれをなぞっていると言います。コットン紐が枝とか草で、シルクは蚕の口から分泌される唾液みたいなもの。という話を聞いて、妙な生々しさを感じておもしろいと思いました。会期中は古物や古書も仕舞い込まずに、鞄といっしょに並べておきます。鞄と古物、古物と古書、古書と鞄・・いろんな「と」の間を揺蕩っていただけたら幸いです。お待ちしております。



大中小の3種類を展示販売いたします

大 巾44×高さ31×マチ10センチ
採寸はだいたいです。個体差があるのであくまで参考程度に。

柿渋の発色は使用するシルクの色でかなり変わってきます。
これはオレンジに染めたシルク糸。染めは京都の染め屋さん
に発注しているそうです。               

出来立ては柿渋に塗り固められてる感じですが、使っている
うちに柿渋の色が落ちて形もクタッとしてきます。    

これは鉄分を媒介させて黒めに上げた柿渋
中サイズです。巾35×高さ27×マチ10センチ

小 巾27.5×高さ24×マチ14センチ
コロンとしてかわいい形。柿渋の染め直しもしてくれる
 とのことです。                   

2018年8月13日月曜日

夏枯れの黄昏のための言い逃れ

インスタグラムもぜひご覧ください→👃 

 お盆休みに入りましたが当店は通常営業です。この時期の中央区の醍醐味は、近辺から人々の喧噪が消えてしまうこと。昼時にランチを求めて行き交う勤め人もいなければ、通りを走り抜ける車も概ね見なくなる。代わりに黄泉の国からの来訪者の気配を、感じる人は感じるのかもしれませんが、自分はそのへんは鈍いので辺りはやはり静かなままです。『ミツバチのささやき』で、アナとイサベルが寝室で交わす会話のように密やかな声だけが、時おり物陰から聞こえてくるぐらいです。見る物すべての輪郭がぼやけている白い世界。その片隅の仄暗いビルの一室。そこに佇む物。
 そういえば、神楽坂のマキファインアーツで開催中の『メルド彫刻の先の先』を見てきたのですが、そこの物の佇み方には触発されました。レディメイド、もの派、アルテ・ポーヴェラなんかに興味を持つ人は、引っかかるところがあると思います。そして同じ建物の3FのSprout Curationでは『中原昌也 個展』をやってました。閑静な家並に混じっての先鋭的な展示に少しばかり興奮してしまい、心の昂りを抑えるために帰りに紀の善に寄ることを余儀なくされました。
 そんな自分の中の佇み熱を更に加速されそうで楽しみなのが、トライギャラリーおちゃのみずで開催される『長谷川迅太 キッチュ|Kitsch』です。物への対し方が、直感的なのかもしれないけど、期せずしてそれが批評的にもなっているという目を持った人です。合わせて清澄白河幾何、神田TETOKAでもいろいろな展示が行なわれるとのこと。夏枯れどころではなくなりました。当店はといえば、その前の週から『柿渋染めかばん展』というのを催します。柿渋で染めたかばんを並べる、タイトルそのままの展示です。詳細は追ってお知らせいたします。
 というわけで、お盆も爽やかに営業しておりますので、心おきなく八丁堀までお運びくださいませ。

ちょっとメルドっぽく並べてみました。気になるものが
写り込んでいたら、お気軽にお問い合わせください。 


マキファインアーツにて。段ボールやパッケージをハガキ大に
切って、絵ハガキとして売る麻生晋佑のプロジェクト。1枚25円。

DM、当店にて配布中。とりあえず1枚ずつ取って、
鞄の中に入れておいた方がいいです。       

紀の善にて。白玉ぜんざいにアイスクリームをのせる
という暴挙。                  

2018年8月4日土曜日

モンキーフリップツーリズム 後篇

 前回まで〜 地球規模の変革が問われる今、一介の古物商が為すべきこととは何なのか。西にその答えありと踏んで始まった東海行脚。そして自家製ジャムののったトーストを食べ、皮がパリッとした鰻を食べた。

 というわけで、Hさんのお店にはSさんに車で連れていってもらったのでした。窓越しに見る外観からして、すでにフォトジェニーなオーラを漂わせています。それでいながら、辺りを払うようなこれ見よがし感がないのは、店主の性格と才量によるものでしょうか。Sさんのところといい、岐阜の発するオルタナティブな気風は革命の萌芽を予感させます。夜にはHさん行きつけの、これまた旨いものを出すお店に案内していただきました。近辺に軒を連ねる飲み屋のレベルがどこも高そうで、田中小実昌のような徳を備えてないと、おいそれとは入れなそうに思えました。
 ところで懸念されるのは台風の進路で、なにやら変則な動きで人々を困らせているようです。次の朝は大須の骨董市に詣でて一山当てようと目論んでいたのですが、仮に開催されても出店はかなり少ないでしょう。果たして勇んで乗り込んだ大須観音ですが、案の定出ている人たちはいつもの半分以下のようです。それでも買い出し屋さんの荷解きを待って、ガツガツと漁ってまいりました。
 観音様脇の喫茶店でのモーニングの最中、S氏が愛知の異能の古物商Oさんに連絡を入れていました。Oさんの品物の選択眼やスタンスは、自分にとってほとんどリスペクトの域に達しています。この日は旅の目的のふたつ目である愛知県陶磁美術館の『知られざる古代の名陶 猿投窯』を見に行くことになっているのですが、大須に仕入にやって来るOさんが、合流後に美術館まで車で送ってくれるとのことでした。なんという僥倖。
 途中から美術館への道は、2005年に開催された「愛・地球博」会場への輸送手段として建設されたリニモの高架下に沿っていきます。ふいに書店勤務時代に、この万博関連の書籍やグッズが、売場に並べ切れないほど納入されてくるのに嫌気がさしたのを思い出しました。「なにがモリゾーとキッコロだちくしょう!こんなもの爆発してなくなってしまえ」ぐらいには怒っていたような気がします。このとき衝動に従って会場を爆破していたら、こうして愉快な珍道中にも出られなかったわけで、人生の内に遍在する機運を感じずにはいられません。さて、陶磁美術館の展示は言わずもがなのことながら、欲しいけど手に入らないものだけが並んでいました。指をくわえて見るという所作だけが妙に洗練されてきたりして、指咥道という流派を設立しようと思ったぐらいです。
 この後はOさんが多治見近辺の骨董屋さんを案内してくれて、何軒かお店をのぞくことができました。一応仕事のつもりでいるので、仕入の機会が増えるのは良いことです。品物の筋が東京とはずいぶん違うところがあって、そんなのを目の当たりするのも新鮮でした。多治見駅でOさんと別れて、名古屋に出てきしめんを食べて東京に戻ってきました。台風の雨脚とは微妙にズレていたようで、濡れずに帰ってこられたのですが、日頃の行ないの良し悪しは関係なさそうです。いろいろとお世話になることが多く、人の親切が身に沁みた旅でした。では、8月もどうぞよろしくお願い致します。
 

岐阜で見かけた一軒。とつぜん左腕の静脈を切断されそうな
佇まい。                       

大須観音。初めてやってまいりました。雨が降ったり止んだり。 
愛知県陶磁美術館の中庭。この頃には台風の気配が一時的に
消え去って、夏休みの始まりみたいな青空でした。    

南山9号窯跡。平安後期〜鎌倉後期のもの。

今展示の図録。税込2,500円           
図版はもちろん、資料ページも充実していています。
王様のブランチのブックランキングで紹介されても 
おかしくありません。              






2018年8月1日水曜日

モンキーフリップツーリズム 前篇

 皮膚を焦がす日射しの下、朦朧の体で店にたどり着いて冷房をつける。いつまでたっても涼しくならない。どころか、むしろ暑くなってきてさえいるのは何故だろうか。平成最後の夏が呼び起こした感覚崩壊・・と思ってエアコンの設定を見たら暖房になっていました。いっそもう旅に出たい・・。ということで、一泊二日の痛快東海ツアーに行ってまいりました。
 朝、名古屋に着いた人間が最初にするべきはモーニングを食すことですが、数ある喫茶店からひとつをチョイスするのは、人間性を試されているかのようで少しく緊張を要します。選んだところは名駅から歩いてちょっと、国際センター駅近くに三棟並ぶ花車ビルの一番古い南館に入る「KAKO花車本店」。クリームチーズと自家製コンフィチュールがのったトーストを注文しました。名古屋ではじめて自家焙煎のコーヒーを出したのがこの店だそうで、テーマパーク的レトロとは確実に一線を画した佇まいです。さすが名店、開店の9時を30分もまわると早くも満席。なかなかスポーツ新聞を開いてゆっくりというわけにはいかず。幸いにして名古屋も数日前の地獄の季節からは抜け出していて、歩いて名古屋駅まで戻っても命に別状はなさそうです。名鉄の駅で待ち合わせをして、頼れる同業仲間K氏S氏と岐阜の骨董屋さんに向かう手筈になっているのでした。
 今回の旅の目的のひとつは岐阜の名店探訪。赤い電車に乗って小駅で降りるとSさんが車で迎えに来てくれていました。まずは腹ごしらえに、地元の老舗の鰻屋に連れていっていただけるとのこと。眼前に山を臨み満々と水を湛える川が流れる豊かな土地。が、軒を連ねる商店はかつての繁栄を偲ばせるふうな様子。窓越しに過ぎていく沿道の街並は石のように黙殺された(©横光利一)という感じです。その中で、当の鰻屋さんだけが今なお往時の賑わいを見せてるようで、店の前には結構な行列ができていました。鰻を焼く匂いが辺りに漂っていて、それをおかずにご飯を食べればもう十分な気もするぐらいです。そんな古典落語の演目みたいな真似をしても誰も褒めてくれないので、もちろん店内で本物をいただきました。関東と違って蒸さずに焼くそうで、パリッと香ばしい皮の旨さに驚きました。
 さて、Sさんのお店というのが山道をグイグイ縫うように上った先にありまして、これは東京の小洒落たクリエーター集団が、予算をふんだんに使いエッジを効かせたデザインを実現させたところで到底叶わない先鋭的な立地と造りです。Sさん本人にとっては生活圏にある日常の一部でも、こちらにすればローリングトウェンティーズのような眩しさ。人を逸らさぬSさんの話と店の佇まい、品物の筋・・岐阜の骨董シーンはここから発信されているのだと思いました。その日はSさんと並ぶ岐阜の雄、Hさんのお店にも伺う予定になっていて、当初は電車とバスを乗り継いで行くつもりでしたが、それなら車で送りましょうとSさん。怖るべき優しさ。目の前が霞むのは台風接近に伴う湿度の増加のせいではなさそうです。なんだか要領を得ないことをダラダラ書き連ねました。後篇に続け!

KAKOのモーニング。上のコンフィチュールはどれも違う味。
マスターに聞きましたが忘れました。さっぱりして旨い。  
ビルの一画。

昭和40年代はじめのビル。

今回あまり写真を撮ってません。感動で震える手でかろうじて
撮った一枚。丼だとタレがしつこいから重にせよ、という助言を
得て注文。たしかに正解でした。もう一人前食べたかったです。