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2018年7月23日月曜日

酷暑観光界

 暑くてどうにもならないから不必要にコンビニに居座り続ける。それしかできない夏。オハヨーのジャージー牛乳プリンに手を伸ばした刹那、若い母親に背負われた鎮座DOPENESS似の赤ん坊と目が合う。それだけでもう、この日の仕事は終わった気分。新入荷もあるので、ぜひお店に見に来てくださーい。と、もはや口には出せない夏。ひとまずインスタグラムに随時アップしていきますので、ぜひそちらをチェックしてください→👃  品物のお問い合わせはメールかインスタDMにどうぞ◎
 
 そんな凶暴な夏のある日、上野の櫻木画廊で開催中の松井寛泰個展を見てきました。昨年11月の弊店での展示から少し置いて、今年6月に横浜中華街の一画で開催、そこから間を空けずの展示会。八丁堀→横浜→上野と来て、次はドクメンタかエリゼかという流れがあるかどうかは分かりませんが、いま買っておいた方がいい筆頭の写真家、というか現代美術家です。
 前回の展示を訪ねる前に、腹ごしらえでチャーハンを食べたのが刷込みみたいに作用して、松井さんの展示を見るときはチャーハンを食べなければいけない気分になってました。根津から行ったので、幸い途中に名店「オトメ」があり、そこでハムチャーハンにありつけました。根津、上野、鴬谷、どこの駅からも万遍なく離れた場所なので、猛暑の中を歩くのは苛酷ではあるのですが、万全の態勢で臨んでまで見る価値のある作品が並んでます。松井さんのプリント技術へのこだわりは、しばしば同業者から変態呼ばわりされるほどなのですが、今回の作品もそう呼んで差し支えないものでしょう。松井さん本人が至って気さくなおニイさんだけに、ギャップが醸し出す静かな衝撃は稀有な体験です。会期は7/29(日)まで。25(水)・28(土)・29(日)は松井さんが終日在廊するそうです。
 

横浜の展示で少し並んでたスリットによる撮影の作品が
今回のメイン。抽象と具象の交ざり具合がカッコいい写真。
素人目には分からない超絶技巧の産物。        


ハムチャーハン。薄味。

帰りに根津の芋甚にて。今季初の氷。
芋甚 there's no heaven~と誰もが唄い出す。

 

2018年7月4日水曜日

鶏頭冠突起はおいしそう

 東京国立博物館で始まった『縄文ー1万年の美の鼓動』を観てきました。近いうちにNHKの日曜美術館で特集をするでしょうから、そうなると入場までに2年ぐらい待たされるほどの混雑が予想されます。開始早々に見ておくのが得策だと踏んで、モワッとした空気に包まれた上野の山まで行ってきました。
 国宝指定されている縄文時代の遺物6件すべての土器・土偶が出揃う(縄文のビーナス&仮面の女神の展示は7/31〜)というのが当展の呼び物ですが、概してオールスターキャストの映画が大味でおもしろくないように、これもその手だろうと舐めてかかっていたのが正直なところです。結果を言えば、トーハクの関係各位に戸別訪問で謝罪して回らなければいけないと思いました。6つの章立てのコンセプトに沿った陳列も見やすかったですし、展示ケースが壁面から離れているので、後ろにも回り込めて四方から見られるのも嬉しい作りでした。ことに国宝コーナーの展示ケースは柱状なので、グッと近くに寄って見ることで、文様を施す手跡や手取りの重さまで感じられそうでした。
 図録や資料で見た気になっていたものが実際に目の前に現れるというのは、やはりなかなか興奮するものです。人によっては物欲の嵐に揉まれて、それに耐えるだけで疲れると思います。自分は「彫刻木柱」と名づけられた能登から出た遺物2点に惹かれたのですが、かなりの大きさとおそらく重量があるので、搬出のために赤帽を依頼しておいた方がいいだろう、という程度の妄想は繰り広げました。とにかく沖縄の線刻石板とか岩手の狼形鹿角製品とか、ふだん都内近郊では見られそうもないものが出ていて胸が高鳴りまくります。
 物販コーナーの縄文グッズも充実してました。そういう変なノリはいらないぜ!という人もいると思いますが、土偶のクッションみたいのを4つも5つも買い込んだり、ピンバッチのガチャを30回くらいやってる女性もいて、すでに結構な盛り上がりを見せてました。やっぱりこの夏の必見の展示会だと思いました。で、毎度のことでしつこくなって恐縮ですが、上野から八丁堀までは日比谷線で一本です。熱中症に十分ご留意の上、逆光にもお運びくだされば幸いです。

 夏休みが始まったら人で溢れかえりそうな

開館第一弾の入場 係員に先導されながらグレイシートレインの
ように隊列を組んで入口まで向かいます          

縄文文化というのは、どこか人間の中の陽性の部分を
触発するような気がします 館内はどこかしら明るい
雰囲気でした                  

ワー

ワーワー

暑いのでひとまず甘味を 上野アトレ内の「みはし」にて
注文時にトーハクの半券提示で白玉を2個サービスして
くれます                      





2018年7月2日月曜日

緊張の夏

 垂直の熱射によって、風景はフラッシュが炸裂したまま時が止まったかのよう。早すぎる夏の到来で街が狂気を帯びはじめる中、神楽坂の路地の一画では別個の狂気が芽吹いていたのでした。一水寮101にて『骨董の起源』と題された展示が始まっています。うつわノート松本さんのプロデュースのもと、拙庵の岩橋さんとtitcoRetの牛抱さんの蒐めた物が並んでいて、見たり買ったりすることができます。
 "骨董の起源"とは大きく出たな、と思うかもしれません。が、骨董という言葉がごちゃごちゃとある古い物全般を指して云うのならば、もとよりその定義は曖昧です。二人の品物を見て、「え、これが骨董?」と世間が疑問を呈するほど、かえって価値観の共有が生むヒエラルキーの外枠を際立たせます。アウトサイドからの視点は、そのジャンルの発生当初にまで考えを遡らせるのです。
 感覚と知的好奇心を同時に揺さぶってくる展示です。この夏一番の素敵な贈りものになるかもしれません。展示を見たあとは、一水寮とほとんど背中合わせになってるこれまた素敵な喫茶店「珈琲日記」でひと休みするべきでしょう。さらにその後は東西線で茅場町まで出てきて、新川・八丁堀・新富町界隈を怖るべき七月の光に気を付けながら徘徊するのがいいと思うのです。

展示についての鼎談が行なわれた日の会場 NYの女王が来日中
竹橋のゴードン・マッタ=クラーク展と併せてぜひ