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2018年8月1日水曜日

モンキーフリップツーリズム 前篇

 皮膚を焦がす日射しの下、朦朧の体で店にたどり着いて冷房をつける。いつまでたっても涼しくならない。どころか、むしろ暑くなってきてさえいるのは何故だろうか。平成最後の夏が呼び起こした感覚崩壊・・と思ってエアコンの設定を見たら暖房になっていました。いっそもう旅に出たい・・。ということで、一泊二日の痛快東海ツアーに行ってまいりました。
 朝、名古屋に着いた人間が最初にするべきはモーニングを食すことですが、数ある喫茶店からひとつをチョイスするのは、人間性を試されているかのようで少しく緊張を要します。選んだところは名駅から歩いてちょっと、国際センター駅近くに三棟並ぶ花車ビルの一番古い南館に入る「KAKO花車本店」。クリームチーズと自家製コンフィチュールがのったトーストを注文しました。名古屋ではじめて自家焙煎のコーヒーを出したのがこの店だそうで、テーマパーク的レトロとは確実に一線を画した佇まいです。さすが名店、開店の9時を30分もまわると早くも満席。なかなかスポーツ新聞を開いてゆっくりというわけにはいかず。幸いにして名古屋も数日前の地獄の季節からは抜け出していて、歩いて名古屋駅まで戻っても命に別状はなさそうです。名鉄の駅で待ち合わせをして、頼れる同業仲間K氏S氏と岐阜の骨董屋さんに向かう手筈になっているのでした。
 今回の旅の目的のひとつは岐阜の名店探訪。赤い電車に乗って小駅で降りるとSさんが車で迎えに来てくれていました。まずは腹ごしらえに、地元の老舗の鰻屋に連れていっていただけるとのこと。眼前に山を臨み満々と水を湛える川が流れる豊かな土地。が、軒を連ねる商店はかつての繁栄を偲ばせるふうな様子。窓越しに過ぎていく沿道の街並は石のように黙殺された(©横光利一)という感じです。その中で、当の鰻屋さんだけが今なお往時の賑わいを見せてるようで、店の前には結構な行列ができていました。鰻を焼く匂いが辺りに漂っていて、それをおかずにご飯を食べればもう十分な気もするぐらいです。そんな古典落語の演目みたいな真似をしても誰も褒めてくれないので、もちろん店内で本物をいただきました。関東と違って蒸さずに焼くそうで、パリッと香ばしい皮の旨さに驚きました。
 さて、Sさんのお店というのが山道をグイグイ縫うように上った先にありまして、これは東京の小洒落たクリエーター集団が、予算をふんだんに使いエッジを効かせたデザインを実現させたところで到底叶わない先鋭的な立地と造りです。Sさん本人にとっては生活圏にある日常の一部でも、こちらにすればローリングトウェンティーズのような眩しさ。人を逸らさぬSさんの話と店の佇まい、品物の筋・・岐阜の骨董シーンはここから発信されているのだと思いました。その日はSさんと並ぶ岐阜の雄、Hさんのお店にも伺う予定になっていて、当初は電車とバスを乗り継いで行くつもりでしたが、それなら車で送りましょうとSさん。怖るべき優しさ。目の前が霞むのは台風接近に伴う湿度の増加のせいではなさそうです。なんだか要領を得ないことをダラダラ書き連ねました。後篇に続け!

KAKOのモーニング。上のコンフィチュールはどれも違う味。
マスターに聞きましたが忘れました。さっぱりして旨い。  
ビルの一画。

昭和40年代はじめのビル。

今回あまり写真を撮ってません。感動で震える手でかろうじて
撮った一枚。丼だとタレがしつこいから重にせよ、という助言を
得て注文。たしかに正解でした。もう一人前食べたかったです。








 
 

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