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2019年1月1日火曜日

羨ましきは鴉共に我が肉喰えやと言いたる詩人よ

 明けましておめでとうございます。旧年中の皆さまのご愛顧によって、恙無く新年を迎えることができました。心よりの感謝を申し上げると共に、本年がより良い発展の年となることを祈念して、まずは今年一回目のブログです。
 と言っても、新年恒例そこらをうろついてきただけのいつもの雑記です。しかも路面軌道でも敷いてあるかのごとく、毎度変わらぬ道筋を歩いているので、もはや言い立てることは何もないのですが、いくら反復といえど全く同一の現象が起こるわけもないので、その交換不可能性を信じて今年も漫ろ歩きをしてきました。
 まずは遅めの朝ご飯に、大納言小豆を煮たお汁粉にてエネルギーチャージを済ませました。年末に古い漆椀を手に入れたので、これでちょっと甘味を食してみたら小粋な事態が発生するのではと思って使ってみたのですが、特に何も発生はしませんでした。が、なにかしら好い事をしている錯覚に陥ることができるので、ぜひ皆さんにも試していただきたいと思います。現代科学では数値化できない微細な感覚が研ぎ澄まされていくような気がします。


右は東北の根来。江戸初期と言いたい古格。    
左の半筒型は北陸辺りでしょうか。江戸中期は   
ありそうです。                 
                   

 さて地元の神社にお参りしてから、わざと脇道を迷い込むように歩いてみたのですが、たいていの道がローマに通じているように、入り組んだ細い路もそのうち大通りにつながってしまいます。結局迷子になることもできずに、ふつうに明治通りをスタスタ進んでいきました。向島百花園の板塀を左手に過ごし道沿いに歩いて行くと、白鬚橋東詰の交差点あたりでニュージャーマンシネマ的な風景が心の中に広がります。何がそう思わせるのかは分からないのですが、早稲田松竹でヴェンダースの三部作を観た時の索漠とした気持ちが甦ります。

明治通り沿いに存在する中華料理屋。少し建物のパースが
狂っているようです。いつか入りたいと思いつつ果たせずに
いる場所。今はもちろん年始休み。           

白鬚橋手前。急に視界が開けて人工的な風景になります。



福原信三的風景 
堀野正雄的光景

 ふいに右手を見てみたらば、例年はなぜかスルーしていた石濱神社が目に入ったので、寄り道。ていうか、散歩なので直行も寄り道も関係ないですが。本殿が神明造で社格が高そうなオーラが漂っています。案内を見れば、神亀元年(724年)創建だと云うから、たしかに古いですね。境内には富士遥拝所とか庚申塚とかあって、古代・中世というよりは近世江戸の趣きをよく残しています。川沿いにあって、側にきれいな公園があって、なにより賑わいがあって、とてもいい神社です。

浅草名所七福神会の九社寺のひとつでもあります。




 一般に、日光を見るまで結構と言うな、バッハに行くまでブッフバルトと言うな(意味不明)と言われるとおり、人は生ある限りバッハに通ってしまうようです。初詣は毎年バッハに、という方も多いのではないでしょうか。泣きながら泪橋交差点を渡って左折したあたりで、今度はファスビンダー的な心持ちになるのを感じます。交番を過ぎ伝説の居酒屋を横目にやり過ごすと、バッハの看板が見えてきます。ここで働く人たちの水際立った動きは、己がいかに怠慢であるかを写す鏡です。そして毎度恐れ入りながらバッハブレンドとチョコレートケーキを注文するのです。ある種、身を浄める行為であると言えます。
 



 だけど人間の欲望というのは足ることを知らないから、せっかく浄められた身を「バッハもいいけどゴトーもね」という、どこからともなく聞こえてくる内的な声にたやすく穢されてしまうのです。浄めと穢れ、ハレとケ、光と闇・・元旦早々鬩ぎあう解けない二元論。というわけで、浅草寺を越え、花やしきを過ぎ、爽やかにフルーツパーラーゴトーに到着。正月は皆さん、他の飲み食いに気を取られているので、いつも混んでるゴトーもこの時ばかりは狙い目かもしれません。襟を正して「9種の果実の冬色のパフェ」というのを注文してしまったんです。もはや仕方のないこと、すべては遅すぎたのかもしれません。意味がよく分かりませんが。

この時期すべては冬色に染まります。人も風景もそして
パフェでさえも。9種の果実の冬色のパフェ。    
    洋梨、柿、りんご、いちご、ざくろ、紅まどんな、      
   べにばえ、西南のひかり、日向夏。            

 
 いったいどれだけ食べれば気が済むのか。ほとんど七つの大罪のひとつ「貪食」を犯している気がします。清新と堕落による両輪の永久運動。しかしそのつもりで出掛けて、その通り食べてきたのだから、すべては計画通りだったわけです。一年の計は元旦にあり。今年は幸先が良さそうです。それでは本年も何卒よろしくお付き合いのほどお願い申し上げます。

隅田川流れる岸辺 想い出はかえらず

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