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2019年3月7日木曜日

うるしドリフト

 弥生の終わりにイベントを一本入れました。相田雄壱郎『うるしドリフト』3.28(木)-4.3(木)です。野澤亜希子さんによる美しいDMが出来上がりました。店に置いてあるので、ぜひ手に取ってください。DMに載せた相田さんの声明には、用と美を満たすだけが工芸の役割であろうか、そこからズレていく純粋な創作としての工芸もあるのではないか、といったことが書かれています。作ることそのものの快楽を経て得られる「形」を主題として展開してみたいと彼は考えているようです。快楽の漸進的横滑りの実践といったところでしょうか。
 相田さんは輪島に徒弟として入り修業したれっきとした職人です。彼の親方は名の知れた腕利きで、お父さんも民藝筋からはよく知られた塗師であります。さて、ウチで展示をするという話になって「どんな展示にするのか」と聞くと、彼は「家を並べる」と答えました。なぜ漆職人が家を作って並べるのか。三井ホームの住宅展示場じゃあるまいし、隈研吾か中村好文にでもなったつもりでしょうか。しかし彼はたしかに家を作り、すでに実験的に展示会でそれを並べてもいます。それは木っ端切れに窓や出入り口用の穴が刳ってあり、屋根の勾配も付いていて、たしかに家と認知できる最小限の手が加わっています。素朴な郷土玩具のようでもあり、北欧の知育玩具のようにも見えます。不思議な洗練が見て取れて、窓際にいくつか並べておきたい衝動に駆られるかもしれません。
 相田さんは匙好きで、古作の気に入ったものを手元に置いて、創作の参考にもしているそうです。DMに載せた奇妙な透し彫りのスプーンはその一例でしょう。ほとんど一点もので、展示会で並べるとすぐに売れていくとのこと。会期の後半に行っても売れてしまって無いので、実は自分は見たことがないのです。生活工芸と名づけられたシーンがあり、そこで見られる使いやすそうでシンプルな作行きのものとは対極に思えます。修業で培った日用に即した器物からは大きく離れた得体の知れない抽象衝動が、相田さんの中に渦巻いているのかもしれません。まさに横滑りと漂流、このドリフト感をぜひ見にいらしてください。どんな光景が展開するのか、自分も楽しみです。


工芸界を静かに揺るがす作品 
ペドロ・コスタが撮るリスボン郊外の家並みにも
見えてきます。               



ミニマルな営み


椀も並びます。


椀と家。あまり見たことのない光景。

DM。絶賛配布中です。
 ※地図に一点誤記がありました。           
誤:昭和通り→正:八重洲通りです。お間違えのなきよう、
迷われた際にはDMの電話番号にご一報くださいませ。 
ご案内もしくはお迎えにあがります。         


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