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2015年3月9日月曜日

谷保紀行(たにやすのりゆき)

12(木)は仕入のため15時頃の開店、
13(金)も仕入で14時の開店となります。
15(日)は有楽町の東京国際フォーラムで開催される
大江戸骨董市に出店いたします。
なにとぞよろしくお願い致します。


 国立市谷保にあるcircleで開催中の「伏木庸平『ケ』」を見てきました。谷保駅には初めて降りたのですが、どことなく北鎌倉的な、土地の力満載といった空気が漂っているのを感じました。北口を降りてロータリーから真っすぐ進めば、きれいに区画された道路を辿って国立駅に着きますが、その日の目的地に行くには、回り込んで線路を越えて反対側に向います。circleは空き家になった地元名士の敷地を改修して作られた「やぼろじ」という有志のコミュニティの一角にある本屋&ギャラリーです。駅からの道のりは、分かりやすい地図が用意されているので迷うことはありませんが、途中どうかと思うほどの細い路地に入り込むので、そこでちょっと怯むかもしれません。その路地脇にある共用の畑の辺りに、大変いい顔をした猫がいました。こんな面構えの猫が悠々と徘徊しているあたり、やはり谷保というのはすごい土地であるようです。

にゃーと一声啼いて近づいてくるも、
 触らせるでもなく逃げるでもない絶妙な
  距離を保ちます。どうやら「くーちゃん」
   という名があるようですが、風貌からの
     連想だと「ブッチャー」か「ボブチャンチン」。


 さて、伏木庸平さんの作品というのは、布切れに色とりどりの刺繍糸を執拗なまでに刺し続けたもので、過剰な糸の集積により、基盤となる布は縒れ、捻れ、平面から逸脱してタブローからスカルプチャーに生成する様を見せています。壁面に据え付けられたいちばん大きな作品などは、盛り上がる糸が生命体の様子を帯びて、まるで原生動物から海綿、棘皮動物への進化過程の絵巻のようにも見えます。刺繍という表現形態は、刺す行為が端的に身体性の強いアクションであるから選んだものであると、伏木さんは言います。細い糸を刺し込んでいくので、それを作品と呼び得るまでにはどうしても時間がかかります。その時間のおかげでしょうか、叩きつけるようなダイナミズムや身体の情念はやわらぎ、伏木さんの作品は、縄文の土器や土偶の造形が洗練されているのと同じ意味で洗練された印象を与えます。
 展示場所のcircleさんは古い蔵に手を入れた、天井の太い梁と窓から入る光と谷保が持つ謎の力が渾然となった素晴らしい空間です。ここで伏木さんの作品を見てたら、不思議な気分になってきて、家賃や年金の支払いなどが夢の彼方に吹っ飛んでしまいました。外に出ると、カフェとして使われている隣の家屋の庭の梅が満開で、いっそう夢気分は深まるばかり。
 甲州街道でバスに乗って、谷保天満宮の鳥居を左手に見て右折した辺りで、急に雰囲気が変わって目が醒めました。国立で小島信夫になったつもりでロージナ茶房に立ち寄り、ビーフドリアとレアチーズケーキをもりもり食べてから、北口の器や古道具のお店をのぞいて帰宅しました。



縄文早期の土偶
千葉県船橋市(BC8800年頃)
  縫い進めていく中で造形をコントロール
することは出来ないとのこと。   
    DMに使われたこの作品はあたかも     
 縄文土偶のよう。            














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