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2015年3月21日土曜日

とびだせ、大作戦!

22日(日)は乃木神社の骨董蚤の市に出店いたします。
皆さまのお越しをお待ちしております。


 ジャン=リュック・ゴダール監督『さらば、愛の言葉よ』を見てきました。ゴダールが3Dの映画を撮るという話を聞いた時には、家から手作り立体メガネをかけたまま映画館に駆けつけなくては!と意気込んでいましたが、封切り後しばらく経ってしまい、結局いまになってようやく見ることができました。ゴダールの3D映画製作というのは、例えるならば大江健三郎が富士見ファンタジア文庫からライトノベルを刊行するようなものだろうか?ぐらいに考えていたのですが、実際は完全にそれを凌駕する凄い事態でした。
 まず、3D映画鑑賞用のメガネというのが、子供向け科学雑誌に綴じ込みで付いてるような赤と緑のセロハン仕様のものではないことを今回初めて知りました。入場時に借り受けるメガネは、なにやら信号を受信して平面を立体に錯視させる精密機器なのでした。それをかけて見るゴダールの凄さ。ほんとに飛び出しやがった、というのが素直な感想です。映画創成期、リュミエール兄弟の「ラ・シオタ駅への列車の到着」を見た観客は、画面上の迫り来る汽車に叫び声を上げて逃げ出したと言われていますが、今回のゴダールの映画もそんな草創期の驚きに満ちたものです。
 ゴダールの映画が難解だと言われるのは、映像と音の絶え間ない切断と溢れかえる引用のせいでしょうか。平面で見ると、どうしても登場人物の台詞やショットのつなぎが、なんらかのストーリー展開に加担していると思い込んで見てしまいがちですから、その見方でゴダールの映画を楽しむのは、たしかに難しいでしょう。しかしこれが3Dになると、状況は一変します。男と女がいて、誰かの声がして、車が走り去って、空を鳥が横切って、岸辺に水が押し寄せ、犬が転げまわる。ふだんの私たちが生きている世界と特に変らない出来事が錯視による立体空間で69分間ほど展開されて、なんだこれは、どうなってんだ、すごいな、と思っているうちに終わる。一種のスペクタクルであり、この作品がアメリカで受けたのも分かる気がします。
 果たしてこれほどの驚きを古物の売買でも齎すことができるのでしょうか。石野真子がジュリーがライバルと歌ったように、ゴダールがライバルと古物業者は言い得るのでしょうか。

 
 
 
『別れる理由 Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』小島信夫
講談社 1982年初版 函帯 月報

小説表現を三次元化したとも言えそうな小島信夫の
問題作。虚実の混交ぶりが凄い。        

8,500円

 

 

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