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2019年6月6日木曜日

偶々多摩の魂

 多摩美術大学美術館で始まった『古布 -無名の妙- 坂田和實・蒐集の審美』を見てきました。最寄りは多摩センター駅。改札からつながるデッキに広がる都市機能はもはや小さな国家のようで、この区画から出ずに一生を終えることが可能かもしれません。二千年後に発掘調査が行なわれたら、この辺りが当時の日本の中心だったという推測も出てきそうです。そしたらサンリオピューロランドは、さしずめ大規模な宗教施設でしょう。
 展示されているナスカやコプトの布などは、ほとんど自分の所有物だと記憶を捏造できるぐらい、本で見て松濤の展覧会でも見て網膜に焼きつけたのですが、改めて現物を前にすると、全然入手の叶わないことを思い知らされます。こういう考古遺品は言わずもがな、酒袋のような近年の民具だって、ここに展示されている類いの繕いのおもしろいものは、もう市場では見かけません。結局は評価の先鞭をつけた坂田さんの蒐集品を後になって、良いとか好きとか言ってるだけかーという事実を突きつけられ、ちょっとガックリ。ただあまりうなだれていると、肩が凝るし、姿勢が悪くなって内臓疾患を誘発するおそれがあるので、前を向かないといけません。そうすると、多摩丘陵の樹々が目に優しく映ります。目には青葉 山ほととぎす 初鰹ってやつでしょうか。そういえば、ジブリの『平成狸合戦ぽんぽこ』は多摩センターの駅周辺がロケーションハンティングされてますね。監督の高畑勲というのは、傍若無人に見える宮崎駿さえ頭が上がらなかった人で、それは高畑が聖人の如き人格者だからではなくて、逸話を聞けば、とんでもなく悪魔じみた人だったからみたいです。ジブリの組織というのは、子供っぽい駿を諌める大人の勲という構図で廻っているのかと思いきや、そうではなかったのでした。なんだか山田宏一著すヌーヴェルヴァーグ勃興時のゴダールみたいだと思いました。
 というようなことを持ち出して、坂田さんが高畑勲やゴダールみたいだと言いたいわけではなくて、蒐集と創作というのは営為は違えど、どこかデモーニッシュなものに憑かれないと、人の心を動かせないなと思ったのであります。展示は7.15(月)まで。見に行ったら逆光に寄ってぜひ感想を聞かせてください。では、6月もどうぞよろしくお願い致します。

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