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2014年10月11日土曜日

紙片及び詩篇

 仕入と買取で少し本が増えて、店が古本屋みたいになってきました。生業が古本屋ですから、そのこと自体は実に申し分のない話ですが、競り落としたものの中に時おり混じっている謎の紙片の扱いに頭を悩ませています。と言うわりには、そこらへんに放ったままにしてありますが、これらが日の目を見るときは来るのでしょうか。
 たとえば、吉祥寺にある時計店のチラシ。期間中百圓以上の買上げで抽選ができるとのことで、当選した暁には、買上げ金額全額が返金されるという魅惑的な文言が紙面に踊っています。薄紙のペラ1枚に赤一色で刷られて、端っこがちぎれて折りジワがくっきり残っています。状態から推察するに、特に大事にされてはいなかったようですが、廃棄までには至らなかった。その理由を探るために名探偵コナン気分になるのも一興ですが、それでたったひとつの真実を見抜けるかは定かではありません。
 「北京のどぶ」と書かれた小さなフライヤー。一橋大学演劇研究部と女子美術大学演劇部の名が表記されているので、共同企画による芝居の宣伝なのでしょう。新書サイズの水色の紙を二つ折りにしているので、文庫本より小さいサイズです。中にはアジテーションめいた文言。裏に記された場所と日時の案内には、都電高円寺一丁目下車とあり、時代特定の大きなヒントになります。
 その他、有線放送電話機の使い方だとか蚕糸の光一月号付録だとか、なぜこの世に残ったのかよく分からないものが結構あるのです。そこに書かれた言葉は、もちろん容易に読解可能な情報を伝えているのですが、徐々に意味が剥落して詩に近づいているようにも見えてきます。

上左から「協和堂時計店チラシ」「日立製作所 有線放送電話機の使い方」
「立体版画の技法」立体版画普及会発行       
下左から 「最新桑園経営年中行事」「北京のどぶフライヤー」「千代紙?」

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