山本亮平さんというと、柔らかなクリーム色の型打ちの輪花皿などが知られています。もちろん、この展示でも定番商品として展開されており、相変わらず見れば欲しくてたまらなくなるはずですから、財力の許す限り身銭を切るべきだと思います。ただ、今回の圧巻は展示タイトルに謳われている「系譜」です。わざわざこういう言葉が使われたのは、今いる場所からある地点まで歴史の線を遡り、批評的にやきものを捉えようとしている山本さんの営為を示してのことなのだと思いました。
つまり、初期伊万里やその発生に関連する唐津や李朝、染付けから濁手などを経て、現在ふつうに使われている有田焼の白磁に到る道を辿りなおすことです。だからと言って、この展示に山本さんの腕前のカタログ的なお披露目会の様相は全くありません。一見すると、いつもながらに素晴らしいしつらえの中に、割と地味な器がけれん味もなく並んでいるだけです。しかし手に取れば、これらの器が言葉の真の意味でラディカルであることが分かると思います。口縁を呉須でぐるんと囲んだお皿なんかは、草創期の萌芽を内に含んだ力強い美しさに漲っていますし、堅手写しのお椀だって、すごく素っ気ないのにいつまでも眺めていたくなるものです。
器が変わりゆく過渡期を自分の手で現前させるという、山本亮平さんのこの困難な仕事をどうか皆さん見てください。瀧口修造的な意味において、この仕事の目撃者になってほしいと思います。会期はあと2日、5/20(火)までです。平日ですからお勤めの方はなかなか大変だと思いますが、有休を取得するなり辞表を提出するなりして、ぜひお出かけください。
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