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2018年12月28日金曜日

漆、音、物

 いったい何が納まったというのか、そんな疑問符を背負いながら、逆光は本日12月28日(金)が仕事納めです。ただいま『Oubai 漆・蒔絵展』を開催中で、年明けて1月4日(金)から6日(日)まで同展示を継続いたします。年またぎ爽やか企画です。Oubaiさんは年の瀬だというのに、仕入の旅に行ってしまいました。なので、4日には何か新入荷が並ぶかもしれません。動向を虎視眈々とチェックしておいてください。この辺の近代漆器は、時代が近すぎるために編年研究なんかも特にないし、高級品以外はぞんざいな扱いをされがちです。そのシーンにOubaiさんが単独で果敢にハードコア・モッシュを仕掛けました。工芸、骨董、民俗、産業など、様々な線が錯綜する場を切り拓いていくOubaiさんの土性っ骨にぜひ注目してください。
 その後は12日(土)にひとつ、コンテンポラリーアーティストの中島吏英さんのパフォーマンスを逆光にて行ないます。音を出すインスタレーションやパフォーマンスを主軸にして、ロンドンを拠点にヨーロッパや中国などで活動している作家で、今回のイベントは作品集『おとになるーー30個のオブジェと10分の音』(トゥルーリング刊)の刊行を記念しての言わばドサ回りであります。主宰は発行元であるカワイイファクトリー。八丁堀がにわかにバーゼルのように様変わりするかもしれません。
 最後になりましたが、本年もいろいろな方にお世話になりました。本当にありがとうございます。来年5月で開業5年を迎えます。ほとんど地面に接しているぐらいの低空飛行の態でここまで続けられたのは、言わずもがな皆さまのお蔭です。一日でも長く、あと35年ぐらいは続けたい、と欲深い年の瀬であります。それでは、どうぞ良い年をお迎えくださいませ。来年もよろしくお願い申し上げます。








2018年12月24日月曜日

八丁堀かくれ里伝説

 12.25(火)-28(金)/1.4(金)-6(日)年末年始の年またぎ痛快企画『Oubai 漆・蒔絵展』の準備が整いました。というか整ったことにしないと、いつまでもキリがないことこの上なしといった感じです。おもに明治・大正あたりの時代椀や盆や皿などが並びました。桃山・江戸初の古格があるわけでもなし、松田権六や北大路魯山人の際立った作家性、磯矢阿伎良や奥田達朗の明瞭な批評性を備えているわけでもない、半端物の扱いで専門に取り上げる業者もいないようなジャンルに、あえて決死のダイブを試みる骨董界の荒くれ七面鳥ことOubaiさんの入魂のワーク・イン・プログレスをこの機会にぜひご覧ください。 
 こんなにも漆器が並ぶ様は、『遠野物語』のマヨイガの話を思わせます。「牛小屋ありて牛多く居り、馬舎ありて馬多く居れども、一向に人は居らず。終に玄関より上がりたるに、その次の間には朱と黒との膳椀あまた取出したり。」
 このマヨイガの一節は、立派な門があって、庭に一面花が咲いて、鶏や牛馬がたくさんいて、という農家の理想的風景と思われる描写のあとに、漆の椀が出てくるのがおもしろいところです。椀貸伝説のような類型的な伝承然り、やっぱり漆器は富を象徴する威信財だったんですね。そもそもこの店が、なぜこんなところでこんな物を売ってるのかという隠れ里的ポジションですので、漆椀が山積みになってる光景は、案外しっくりきたりするものです。
 それと、昨年当店でも展示をしてくれた植木智佳子さんが、新川の魔窟「マレビト」にて『ギンエンの密約』という展示をしています。12.22(土)-30(日)13時-20時、最終日18時まで。逆光⇄マレビトは徒歩で7~8分。マヨイガとかマレビトとか、なにやら師走にとつぜん口を開けた柳田・折口的な異界への穴に迷い込んでみてください。









2018年12月13日木曜日

漆ならびに膝

 今年の世相を漢字一文字で表すと、というイベントが公益財団法人日本漢字能力検定協会の主催で毎年開かれています。公募で集まったうちの最多応募数の漢字を、清水寺貫主の森清範師が手ずから、舞台に設えられたやたらと大きな和紙に揮毫している姿がテレビに映るのがこの時期です。自分なんかは、この報せを聞かないと師走になった気がしないものです。などということはまったくないどころか、一体どういうニーズに支えられてこの種のキャンペーンが、それなりに長く続いているのだろうかと、少しばかり頭を悩ませたりもするのです。そうして物思いに耽った後に頭を上げ外に目をやると、冬の低い光が雀や鳩や犬の糞を照らしているのが視界に入り、ああ、師走がやって来たんだなと実感します。 
 さて、では当店にとっての今年の漢字は何か。と、特に誰も知りたいとは思えないことに考えを巡らせると、「夜」とか「逃」とか「消」とか「失」といった漢字は幸いにして浮かんできません。それじゃ何だろうと考えてみるも、これといって思い浮かばず。それで今年のブログを見直してみたら、結構な大事件として「ゆで太郎八丁堀店」と「中華シブヤ」の閉店がありました。当店に起きたことではありませんが・・。その時の膝から崩れ落ちるような喪失感、涙を流すことさえ許さないような衝撃の記憶から、当店の今年の漢字は「膝」に決定しました。

 そして年末25日(火)からはOubai『漆・蒔絵展』です。血反吐を吐きながら集めた漆器どもの咆哮を聞け!とOubai工藤さんも息巻いて止まない渾身の企画です。幕末・明治・大正・昭和初期・・このあたりの漆器の展示販売というのは、ありそうでなかったと思います。逆光もOubaiさんの品物に合いそうな古漆器や焼き物や民具なんかを並べます。併せてご覧いただければ幸いです。
 26日(水)は18時半からトークイベントを入れております。『民藝のインティマシー 「いとおしさ」をデザインする』や『<民藝>のレッスン つたなさの技法』の鞍田崇さんとOubai工藤さんの漆と民藝のあれこれを巡る爆裂トーク。参加費1,500円。お酒、飲み物、つまみ等をご用意しておきますので、ガツガツと飲み食いしながらバンバン二人に突っ込んでください。席はまだございます。ご予約は逆光の方でまとめてお受けしているので、どうぞ奮ってご参加を。お名前・お電話番号明記の上、gyakko3@gmail.comまでお願い致します。→満席となりました。ありがとうございます。
 暖冬の予想だった割にしっかりと寒い今日この頃、皆さま何卒ご自愛のほど。そして元気な足取りでのお越しをお待ちしております。











2018年12月6日木曜日

逆走せよ!黄梅サンダーロード!!

青い空 いつまで どこまで耐えられるのか
              ーーーマイナーリーグ

 展示会のお知らせDEATH。12/25(火)-28(金)、1/4(金)-6(日)の7日間、弊店逆光にて『Oubai 漆・蒔絵展』を開催いたします。年内最後にして年始最初の、年をまたいだ展示会。「Oubai」の屋号で大江戸骨董市やイベントに出店している工藤さゆりさんが選んだ、蒔絵を中心とした漆器を展示販売いたします。江戸時代後期以降の金銀粉や貝殻などによって装飾された漆器が、Oubaiさんの主軸商品です。が、このあたり、根来や合鹿みたいなブランドが確立してるわけでもなく、石斎とか権六のような作家性で推すわけでもないという、売り買いするにはちょっと難しいカテゴリーであります。明治維新で上層の身分が解体してしまって、そこに抱えられてた各地の職人勢は大きな打撃を被ったと。そこで腕利きたちは、輪島に移って経済力を付けつつあった庶民階級を相手にハレの家財を作ったり、輸出振興の波に乗って万国博覧会向けの工芸品を手がけたみたいです。装飾の技法も豪華絢爛になって、いま見るとどうなんだこれはというのも結構あるわけですが、そこにOubaiさんは果敢に切り込んでいって、今の暮しに合うものを拾い上げてくるという次第なのです。
 漆器、それも蒔絵となると、いかにもハレの器と思われがちですが、使って楽しいならば断固として普段から使わなければならぬ!という、蒔絵界の伝道師として時代を逆向きに激走して止まないOubaiさんが、ついに八丁堀に降臨します。万障お繰り合わせ且つお誘い合わせの上でお運びくださいませ。
 ※お配りしているDMの営業時間が12時→18時となっていますが、正しくは12時→19時です。どうせ間に合わないと諦めることなくお出掛けください。
 
 12/26(水)はイベント内イベントとして、18時半より逆光店舗にてOubai工藤さんと哲学者の鞍田崇さんのトークを開催します。漆と民藝を軸として、縦横無尽、四方八方、前後左右に話が展開する予定です。酒とその他の飲料水&おつまみを用意してお待ちしております。お一人1,500円。ご予約は逆光で一括してお受けいたします。メールアドレスgyakko3@gmail.comまでお名前・お電話番号を明記の上でお申し込みください。小さなスペースですので、先着15名様で締切りとさせていただきます。→満席となりました。ありがとうございます。