たとえば、吉祥寺にある時計店のチラシ。期間中百圓以上の買上げで抽選ができるとのことで、当選した暁には、買上げ金額全額が返金されるという魅惑的な文言が紙面に踊っています。薄紙のペラ1枚に赤一色で刷られて、端っこがちぎれて折りジワがくっきり残っています。状態から推察するに、特に大事にされてはいなかったようですが、廃棄までには至らなかった。その理由を探るために名探偵コナン気分になるのも一興ですが、それでたったひとつの真実を見抜けるかは定かではありません。
「北京のどぶ」と書かれた小さなフライヤー。一橋大学演劇研究部と女子美術大学演劇部の名が表記されているので、共同企画による芝居の宣伝なのでしょう。新書サイズの水色の紙を二つ折りにしているので、文庫本より小さいサイズです。中にはアジテーションめいた文言。裏に記された場所と日時の案内には、都電高円寺一丁目下車とあり、時代特定の大きなヒントになります。
その他、有線放送電話機の使い方だとか蚕糸の光一月号付録だとか、なぜこの世に残ったのかよく分からないものが結構あるのです。そこに書かれた言葉は、もちろん容易に読解可能な情報を伝えているのですが、徐々に意味が剥落して詩に近づいているようにも見えてきます。
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