なにとぞご了承くださいませ。
本日も泣きながら仕入に行ってまいりました。なにも泣くことはないわけですが、嬉しさとも哀しさともつかないエモーションが心を覆うのです。それは現時点での人間界の文法では表すことができない名づけ得ぬ感情で、仕入とはどうやらそういう心の動きを惹き起こす行為のようだと、この仕事を通して知りました。そうは言っても、いい年してシクシクしながら町を歩いていたらいささか薄気味悪いので、はた目には多くの債務整理の案件を抱えた司法書士にでも見えるように振る舞っておりました。
さて肝心の商品ですが、なかなかによく分からないものを入手することができました。下っ端なので、振り手から遠い下座にいるわけですが、そこからだとどうも物がよく見えません。当てずっぽうで声を出して、あとで山を見ると、見当違いのものが混じっていたりして、誰だよこんなの落としたの!と独り憤るも、自分しかいないのですから、明らかに自分が落札したものです。ただ、自分の感度に引っかかるものばかり見ていても、徐々に行き詰まっていきますから、こういう偶然がもたらす機縁は大事にしないといけません。この業界、何がどう化けるか分からない。とはいえ、それにばっかりに期待しても山っ気が顔に出るので要注意です。
『日本見學旅行② 関東・北陸・中部篇』 中島徳行 金の星社 1943年12月31日初版 背色アセ、頁外れ箇所有 |
フランスの少年向け国内見学記に倣って 刊行された日本の社会見学のような体裁 |
状態はよくありませんが、これはちょっと うれしい買い物です |
『實地養蠶法』 明治43年5月15日 伊達蠶桑社 背破れ、表紙角破損・シミ |
どうしていいか分からない品物 現代の養蚕業にも通じるテキストかどうかは 分かりかねますが、表紙は特色金を使ったりして 割と瀟洒な風合い |
『實験 牛馬耕法』 長末吉 吉原丈作発行 大正9年11月20日 表紙破損有 |
これも手に入れてもどうすることもできない のですが、図版の絵は丁寧で楽しめます |
畦の耕し方の図版は二色刷りになっていて、 目に鮮やかに飛び込んできます |
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