　逆光手帖: 無為無策

　商いの世界で言うところのニッパチに突入しました。2月と8月はとにかく売上が悪いという、そのジンクスの原因は様々に分析されていますが、結局のところ、寒かったり暑かったりすれば、人間の行動は否応なく鈍くなるものなのではないでしょうか。生物学的なレベルで個体を維持することにエネルギーが割かれるため、経済活動に走る気にはなれないというか。食品であればともかく、不要不急品の古本や古道具をこの時期にわざわざ買いに来て、エネルギーを消費するようなことはしたくない。もっとも、自分は古本を買ってないと死んでしまうんだと言い張る方もいて、その人は、年中古書展や即売会に出向いては小山のように本を買い込んで、家中を本に占拠させて家族に疎まれているそうです。且つ、蔵書の流出を心待ちにする古書店主たちからは、早く死んでほしいと思われているという。それほどのネガティブな感情を他人から受け続けていれば、精神衛生上なんらかの害を被りそうな気がしますが、そういう人に限って案外長生きなのが世の常です。　
　さて、この時期の企業は売上の確保に躍起になって、経営陣は管理職クラスに補填対策の捻出を無理強いしているかと思います。私なんかは、勤めの頃は常にその手の課題からは口八丁で逃げ切っていました。「へえ、だから八丁堀に開業したんですね？」と人から言われたら、「ええ、そうなんです。」と爽やかに答えたいものです。今日も多くの方にご来店いただき、いろいろ得難いお話をうかがえた上にお買上げまでいただいて、実にありがたい限りです。そういう出会いを利益に計上していいのならば、この商売は大儲けの業態なのですが。