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2014年7月29日火曜日

潤三が来た

 ジュンゾーがキテるらしいという噂はちらほらと耳にははさんでいました。ここに来て噂が実体化しつつある証左を二、三のブログ記事で見かけました。そのうちのひとつが、先日伺った古書ますく堂の増田さんの記事です。『親子の時間』という庄野潤三のアンソロジーが岡崎武志編纂で夏葉社から出版されたとのこと。岡崎氏は古書界隈では名の通ったライター・書評家、夏葉社は絶版入手不可の文芸書の復刻や読書家のツボを突く出版物を出す社員ひとりの版元です。
 庄野潤三はいわゆる第三の新人と称された一連の作家のひとりです。こうしたジャーナリスティックな呼称は、作品の概観や雰囲気はある程度伝えますが、書かれたものを個別に味わうと途端に無効になります。庄野潤三の文章は、たとえばよく知られた『静物』なんかを読むと、「」の会話文や改行が多くて紙面が白々としており、難しい言い回しも出てこないし、政治的な葛藤や思想転向のシーンも描かれません。イメージの中にあるいかめしい文学とはずいぶん違う。それでいながら、純度の高い童話か詩でも読んだような気持ちになり、すごい小説を読んでしまったと感じます。同じ第三の新人に分類される小島信夫のすごさとは全然似つかない。
 ごく簡潔な言葉の連なりが、どうしてこんなに面白いのかが何度読んでも分からない謎の作家、庄野潤三こそが今年度下半期の日経ヒットランキングの大穴ではないでしょうか。



当店の庄野潤三在庫です。微温的と評されますが、
研ぎ澄まされた文体は、けっこう厳しいのです。 


















 

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