自筆資料は、同級生に宛てたハガキや書簡など。その筆致は、神話の世界の存在のような宮沢賢治が、東北の地で確かに生きて悩んでいたことの痕跡を生々しく表していると思いました。ブロンズ本というのは、聞くと頁が青銅で出来ているとんでもない代物に思いますが、実際は背表紙をブロンズの粉で塗りつぶしたものを称して、そう呼ぶそうです。「詩集 春と修羅 宮澤賢治作」と書いてあるのを恥ずかしく感じた賢治が、自分で塗りたくったと云います。自作の出来上がりを目にして何か屈折した感情を抱いた賢治が、わざわざ用意したブロンズの粉を本になすり付けている様は、想像すると感動的です。『「春と修羅」ブロンズ本』は、賢治の手の運動性を想起させるという意味で、おそろしく貴重な本というわけです。
寒空の下を電車とバスに揺られて辿り着いた初めて降り立つ地。そこで見た詩集群は忘れられないものとなりました。
京成電鉄本線勝田台駅北口バス停付近 |
今回の自筆資料の旧蔵者、 成瀬金太郎宛のハガキ 成瀬氏は賢治の 盛岡高等農林学校農学科第二部 の同級生 |
背表紙の3冊内左が普通のもの、 中と右がブロンズ本 |
石川善助の没後刊行された『鴉射亭随筆』 賢治が追悼文を寄せている 石神井書林の内堀氏が、鶉屋書店の飯田氏に 市場に出たら強く入札しろと教えられたのが この本ではなかったでしょうか。 |
灰色の空と色づく葉っぱ |
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