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2014年11月22日土曜日

転倒者たち

 ギャラリー小柳で開催中の「UNSOLD」展を見てきました。杉本博司、ソフィ・カル、青柳龍太の現代美術家3人が去年、靖国神社で開かれた蚤の市に出店、そのときの売れ残り(UNSOLD)の品を並べるという展示です。作ったものではなく、すでに出来上がったものを美術館やギャラリーに陳列するというのは、もちろんマルセル・デュシャンに端を発しています。レディメイドはすでに美術史において確立した手法に見えますが、やった者勝ちの一発勝負の緊張感があって、当たり外れが大きいながらも、当たったときの面白さは格別です。陳列物を選ぶセンスと詐術的な価値転倒の妙味を包含したゲームの規則の洗練度がものを言うのでしょうか。15年ぐらい前にプラメン・デジャノフとスエットラーナ・ヒガーという2人組が、皿洗いのアルバイトで買ったものをギャラリースペースに並べるということをしていましたが、人を食った感じと垢抜けた雰囲気がありました。
 古物売買の現場は、まさに価値捏造のドキュメンタリーの趣があります。千円で仕入れたものに百万円の値を付けて売ることもできるわけです。とは言え古物業を営んでいれば、なんとなく相場観というものがまとわりついてきますから、あまり度外れた値段を付けると、何も言われてないのに居たたまれない気分になったりするものです。そこに何がしかの価値を付与することで、商品の価格を吊り上げるわけですが、そのステータスとなるものは、店の雰囲気であったり店主の人品であったりします。そこで「美は信用であるか」という例のテーゼが頭を擡げてくるわけですが、そんなことは知ったことではない、と言わんばかりなのが、この展示のなかなか痛快なところです。名の知れたアーティストによる出店というのは事前には告知されず、ごく秘密の裡に実行されたということですが、どことなくセットアップのようで胡散臭いのも、面白さに拍車をかけています


「追悼のざわめき」
土器、鉄、セルロイド、写真、麻布

1,200,000円




 
 

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