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2016年7月29日金曜日

須恵器フラスコ形瓶

 理科の実験で使ったフラスコみたいな形なのでフラスコ瓶という、そのままの名前です。仔細に眺めていると、けっこう作り方の手の内が見えてきます。胴部分は完全な球形ではなく片側が扁平なので、そこを下にして轆轤で引き上げたことが窺えます。そしてもう片側を碗蓋を被せるようにふさいでから、胴部に穴を開け頚をくっつける。概ねそんな感じだろうと予想して物の本を読むと、実際ほぼその通りのようです。
 時代は7世紀末〜8世紀にかけて。須恵器でも杯の類いは時期による形の変遷が見やすいそうですが、こういう丸い胴に長い頚を付けた壷は、厳密な編年を言い切ることはまだできないとのこと。産地は東海地方限定だそうなので、猿投か尾北あたりで焼かれたのでしょう。埼玉や横浜でも副葬品として出土しているので、各地に流通していたようです。口縁部に溝があるので、革の切れっ端でも被せて麻ひもでくくって、酒や水などを入れて持ち歩いたのかもしれません。奈良時代のシェフィールドのスキットルか、スタンレーの水筒といったところです。
 底部に穿孔を埋めた跡があり、そこから水が染み出てくるので、すでに水筒としての用途は成しません。仮に漏れがなくても、発掘土臭がすごくて飲料物をそこから飲む気にはなりません。落しを入れて花器として使うのが定番ですが、他に斬新な使用方法があればご教示ください。
 

自立しないので麻の輪っかを噛ませています。
高さ23.0×胴径15.8センチ



釉垂れの数に比例して値段も上がりますが、
これは幸いにして一つもありません。   

見た目のわりにサラサラの手触り。
薄くかかった灰が仄かにきらめきます。

横にすると素っ頓狂な感じ。

発掘時に開けられたと思しき穴を樹脂のような
もので埋めています。三条の閃光の如き窯印が
かっこいいです。             

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