土師器は古墳時代の日々の生活で什器として使われた、いわば暮らしの器です。古墳時代は3世紀中頃〜7世紀末まで。区分ごとの編年研究はいろいろありますが、出土地が分からないので、商品の土師器がそのなかのいつ頃にあたるものかは判断しかねます。後に続く須恵器の製作に使われた窖窯(あながま)のように窯跡がほとんど遺っていないので、年代特定は難しいようです。800℃ぐらいの低めの温度で焼けるので、大袈裟な造作の必要がない簡易的な窯で済んだとのこと。土地から土地を移動する渡りの工人集団がいたのかも、という人もいます。
欠けた口、赤い土にわずかな焦げ目、篦による成型跡とほのかな雲母のきらめき。地味は粋の通り抜けという幸田文の言葉に倣えば、この土師器を持つことは、通人への最短の近道かもしれません。電車の待ち時間やカフェでの休憩時など、バッグから取り出して折々眺めやれば、人々の感嘆の吐息が聞こえてくるかもしれません。まさか実行する人もいないと思い適当なことを言ってますが、手元にあって飽きずに持っていられる土器だと思います。
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胴巾13×高さ13センチ |
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花をいける時は落しが必要です。直水を張れないことは
ないのですが、浸みてただの赤黒い物体になってしまい
ます。 |
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目が慣れてくると篦目がよく見えてきます。 |
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表面が地味な分、線の強さが際立つように思います。 |
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sold |
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