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2014年11月25日火曜日

私の念願

11/27(木)は仕入のため14時30分の開店です。
11/29(土)は誰に頼まれたわけでもないのですが
出張に行ってまいりますので、店は臨時休業いたします。
何か仕入もできれば良いのですが、どうでしょうか。
なにとぞご了承くださいませ。

 俗に自転車操業とは、仕入と支払のサイクルをいっときたりとも休むことが許されない操業の喩えですが、自転車であっても操業されていればまだいい方で、漕ぐこともままならず、最初から倒れたままという者も中にはいることでしょう。いわゆる「あらかじめ倒れ続けた世代」です。「いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです」と言うカフカの顰みに倣って、いま思いつきで作ったので定義も決まってないのですが。ただ、競争を放棄した無気力な人を指すのではなく、いつも何か違うやり方を探していて、遅ればせに辿り着いた場所が実はみんなと同じ地点であることに気付いて、いっそう慌てふためいて足がもつれて転んでしまう者たちといった感じでしょうか。「不器用ですから」と言っても少しも格好がつかないので、倒れたままで考え続けている人たち。そんな人間にも優しい政治が、今度の総選挙を機に実現することを切に願います。と、取ってつけたように書いてしまいました。
 今週もどうぞよろしくお願い致します。


『私の念願』 柳 宗悦
不二書房 1942年6月30日初版
発行者:福島 武男
印刷者:興隆社 山縣 隆定
配給元:日本出版配給株式会社
定価:三圓八十銭 送料:三十銭

 




SOLD OUT



 
 
 




2014年11月22日土曜日

転倒者たち

 ギャラリー小柳で開催中の「UNSOLD」展を見てきました。杉本博司、ソフィ・カル、青柳龍太の現代美術家3人が去年、靖国神社で開かれた蚤の市に出店、そのときの売れ残り(UNSOLD)の品を並べるという展示です。作ったものではなく、すでに出来上がったものを美術館やギャラリーに陳列するというのは、もちろんマルセル・デュシャンに端を発しています。レディメイドはすでに美術史において確立した手法に見えますが、やった者勝ちの一発勝負の緊張感があって、当たり外れが大きいながらも、当たったときの面白さは格別です。陳列物を選ぶセンスと詐術的な価値転倒の妙味を包含したゲームの規則の洗練度がものを言うのでしょうか。15年ぐらい前にプラメン・デジャノフとスエットラーナ・ヒガーという2人組が、皿洗いのアルバイトで買ったものをギャラリースペースに並べるということをしていましたが、人を食った感じと垢抜けた雰囲気がありました。
 古物売買の現場は、まさに価値捏造のドキュメンタリーの趣があります。千円で仕入れたものに百万円の値を付けて売ることもできるわけです。とは言え古物業を営んでいれば、なんとなく相場観というものがまとわりついてきますから、あまり度外れた値段を付けると、何も言われてないのに居たたまれない気分になったりするものです。そこに何がしかの価値を付与することで、商品の価格を吊り上げるわけですが、そのステータスとなるものは、店の雰囲気であったり店主の人品であったりします。そこで「美は信用であるか」という例のテーゼが頭を擡げてくるわけですが、そんなことは知ったことではない、と言わんばかりなのが、この展示のなかなか痛快なところです。名の知れたアーティストによる出店というのは事前には告知されず、ごく秘密の裡に実行されたということですが、どことなくセットアップのようで胡散臭いのも、面白さに拍車をかけています


「追悼のざわめき」
土器、鉄、セルロイド、写真、麻布

1,200,000円




 
 

2014年11月20日木曜日

『工芸青花』発売

 本日11月20日に東京都新宿区矢来町に社屋を構える出版社の新潮社より『工芸青花』の第一号が発売されました。本体価格8,000円に消費税が加算されますから、現時点での消費税法で定められた税率によれば、8,640円分の貨幣との交換によって取扱各店舗にて入手が可能です。蓮實重彦『「ボヴァリー夫人」論』筑摩書房(税込6,912円)より高く、日本内経医学会『中国鍼灸史図鑑(全2巻)』国書刊行会(税込49,680円)よりは安い価格設定というわけです。
 四半期国内総生産の速報値によって、消費動向の悪化が明るみになった今、出版物としては比較的高額なこの本を果たしてどれだけの人が買うのかという懸念はありますが、現行の出版事情下での量的攻勢からの脱却を図る当誌の刊行は、大手の版元とは思えない企画と言えます。この値段ならハーゲンダッツの和栗味が35個ぐらい買えるんじゃないのか・・といった身近なものに換算することは御法度です。和栗味をそんなに食べたら飽きてくるはずですが、この本はいつまでも愉しむことができるように作られています。
 ここまで駄文を綴っておきながら、まだ内容には触れておりませんでしたが、下手な紹介よりも書名から察せられる風雅な感じから想像、妄想していただくのが良いかと思います。『工芸青花』とはいったい何の本なのか。少ない冊数ながら当店でも取扱っておりますので、ぜひ見にいらして下さい。


表紙は麻布張り、名物裂帖から選ばれた
           という文様が箔押しされています。       

 「青花」の書体は欧陽詢「九成宮醴泉銘」、
           欧文書体はエリック・ギルから採用。            

SOLD OUT

2014年11月17日月曜日

凡序美

11/21(金)が仕入で14時からの開店です。
ご了承くださいませ。

 昨日は初冬の晴天の下、有楽町東京国際フォーラムで開催された大江戸骨董市に出店してまいりました。出足が鈍くどうなることかと思いましたが、中盤になって盛り返してきました、と言いたいのですが、実のところあまり芳しいとは言えず、後半に差し掛かってようやく逆転の気配が漂ってきたかと言うとそうでもなく、結局のところ全体を通して冴えを発揮できずじまいでした。と言うと、ある局面でならば冴えたところを見せられるように聞こえますが、実際にはそんなことはありません。概ね凡庸で序破急に乏しい美学に徹するのが、当店の真骨頂と言えそうです。
 今週もよろしくお願い致します。

「セルロイドの力士」

昨日の骨董市での拾いもの          
遊び方は不明。ご存知の方、ご教示下さいませ。
古色を帯びたセルロイドが、およそ力士とは  
思えない儚さを映し出す。          
背中に張られた四股名も切ない。新海と寶川と 
書いてあります。              
   
       

凄まじい張り手争いがあったことを思わせる顔

三年先に強くなるための稽古    
当店も三年先の仕入をしたいものです

SOLD OUT

2014年11月12日水曜日

コントラスト

11/13(木)は仕入のため14時半頃の開店になります。
11/15(土)も仕入です。14時に開店いたします。
11/16(日)は有楽町東京国際フォーラムで開催される
大江戸骨董市に出店いたします。
皆さまのお運びをお待ちしております。

 六本木・白金のロンドンギャラリーで2カ所同時開催中の「仏教美術のよろこび」展を六本木の方だけ見てきました。逸品・名品・絶品と呼ばれ得るものが平然と陳列されていて、もはや眼にとって保養なのか毒なのか分からなくなりました。眼福という言葉では生ぬるいので、この状況を言い表すに足る造語を、文部科学省かどこかの民間団体が募集すればいいと思いましたが、展示は今月29日までですので今からでは間に合わないでしょう。
 例によって欲しいものはいくつかあったのですが、古美術商が展示するものですから、相応の対価を支払えば手にできる可能性はなくもないわけです。そこが博物館・美術館と違うところ。だからと言って、3千万円持って出かけてこれ下さいと言えば、少々お待ち下さいと包んで渡してくれるとも思えないので、商談に至るまでのこちらの知り得ないステップがあるのでしょう。
 六本木から八丁堀までは日比谷線で一本。凄いものを見た後は、当店にて小休止を。満漢全席の後の梅茶漬けといった感じでしょうか。




アルミの水筒 高さ15.5巾9厚さ5.3センチ
SOLD OUT
アルミの箱 縦10.7横7.5高さ2センチ  
SOLD OUT




 

 

2014年11月10日月曜日

ポンヌフの変人

11/13(木)・15(土)は仕入のため14時から開店いたします。
11/16(日)は有楽町東京国際フォーラムで開催される
大江戸骨董市に出店いたします。
皆さまのお越しをお待ちしております。

 初冬の晴天の下、店を開ける前に新橋のSL広場前で今日から開催されている古本市をのぞいてきました。SLと古本と青空・・過剰なまでに叙情的な道具立てが物悲しさを誘い、にじむ涙で物色に集中できませんでした。というのはもちろん嘘で、相当にあさましい風情で掘出し物はないかと本の山の間を右往左往。3冊ほど手にしたところで、空腹と時間切れにより離脱。新橋古本まつりは11/15(土)まで開催です。
 せっかくの新橋、それらしきランチを食してから店に行こうと、レトロな駅ビル内を彷徨っていると、名高い「カフェテラス ポンヌフ」が目に入りました。今にもドニ・ラヴァンとジュリエット・ビノシュが飛び出してきそうな店構え。ちょっと気圧されて、無難にナポリタンを注文。麺太め軟らかめ、ケチャップたっぷりの正統派です。他の人がオーダーしたハンバーグナポリタンの運ばれるところが視界に入ったのですが、山盛りにしたナポリタンにハンバーグがドテッと乗った命名に偽りなしの代物。まったくそのまま。圧倒的な即物主義。飲食におけるアルテ・ポーヴェラ。小細工なしの直球勝負が却って新鮮に映り、感に堪えなかった次第。
 では、今週もよろしくお願い致します。

『ジャン・ユスターシュ』
エスクァイアマガジンジャパン 
2001年3月7日初版
遠山純生編集

レオス・カラックスがリスペクトし、      
フィリップ・ガレルがオマージュを捧げてやまない
ヌーヴェル・ヴァーグの異才ジャン・ユスターシュ
の詳細が書かれたブックレット         

1,300円
       









2014年11月8日土曜日

灰色錫のそら

 とつぜんやって来た寒さになんの身構えもできず、生まれたての子やぎのように震えながら、千葉県八千代市大学町1-1に位置する秀明大学で開催されている学園祭「飛翔祭」に行ってきました。目的は、学生になりすましキャンパスに潜入して失われた青春を取り戻すことではなく、文学展として企画された「宮沢賢治展」を見るためです。当展示の目玉は、新発見の賢治自筆資料といわゆるブロンズ本と呼ばれる『春と修羅』。賢治以外にも同時代の周辺文献として、萩原朔太郎の無削除版及び与謝野晶子宛献呈署名入りの『月に吠える』や現存1部と云われる高村光太郎『道程』特製版、その他啄木、犀星、中也といった日本近代詩を彩る豪華メンツの稀覯本が、これ見よがしでなく当たり前のように陳列されている贅沢ぶりです。
 自筆資料は、同級生に宛てたハガキや書簡など。その筆致は、神話の世界の存在のような宮沢賢治が、東北の地で確かに生きて悩んでいたことの痕跡を生々しく表していると思いました。ブロンズ本というのは、聞くと頁が青銅で出来ているとんでもない代物に思いますが、実際は背表紙をブロンズの粉で塗りつぶしたものを称して、そう呼ぶそうです。「詩集 春と修羅 宮澤賢治作」と書いてあるのを恥ずかしく感じた賢治が、自分で塗りたくったと云います。自作の出来上がりを目にして何か屈折した感情を抱いた賢治が、わざわざ用意したブロンズの粉を本になすり付けている様は、想像すると感動的です。『「春と修羅」ブロンズ本』は、賢治の手の運動性を想起させるという意味で、おそろしく貴重な本というわけです。
 寒空の下を電車とバスに揺られて辿り着いた初めて降り立つ地。そこで見た詩集群は忘れられないものとなりました。

京成電鉄本線勝田台駅北口バス停付近
今回の自筆資料の旧蔵者、
成瀬金太郎宛のハガキ  
成瀬氏は賢治の     
  盛岡高等農林学校農学科第二部
  の同級生          



背表紙の3冊内左が普通のもの、
中と右がブロンズ本      

石川善助の没後刊行された『鴉射亭随筆』
賢治が追悼文を寄せている       
 石神井書林の内堀氏が、鶉屋書店の飯田氏に
 市場に出たら強く入札しろと教えられたのが
 この本ではなかったでしょうか。     


灰色の空と色づく葉っぱ