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2016年2月14日日曜日

バケモノガデタ スグコイ

ただいま書肆逆光では伏木庸平『うぶの渦』を開催しています。
延々と刺し続けられる刺繍糸が形づくる異形の美。20日(土)迄。


 珍渦虫の正体判明と重力波の観測成功に世間がにぎわう中で、それらに負けず劣らず驚嘆に値するものとして人の口の端に上っているのが、ただいま当店で開催中の伏木庸平個展『うぶの渦』です。
 伏木庸平の作品の要諦は、ごく簡単に言えば、布や紙などの支持体に刺繍糸を縫い付ける造形物ということでしょうか。ただ、その縫い付けようがあまりに過剰なために、糸のテンションで支持体は捩れ波打ち、動物の内蔵のような奇妙な地勢のような形を見せています。一度視覚に入れば、うねる表面の連続を追ってしまい、容易に視線を外すことはできません。作品だけ見れば、棟方志功と深沢七郎が合わさったような作者を連想しますが、実際はいたってハイセンスな青年で、POPEYEのシティボーイの部屋特集に載っていたって不思議はないぐらいです。こうしたギャップもまた人を惹き付ける要因になり得るかもしれませんが、それをギャップと感じるのはこちらの勝手な思い込みで、本人にしてみれば、実生活と作品は連続線上にあると言いたいところでしょう。
 これだけの強度の作品でありながら、製作と云えば手元で刺繍糸をひたすら刺していくだけなのですから、実に地味な行程です。製作をことさら特別な行為として考えず、テレビを見ながら、居酒屋で呑みながら、誰かと世間話をしながら縫い続けることもあると作家は言います。日常と分断されない営為の中で、こんな物がおもむろに産み出される驚き自体が、物を作ることの原初性を提示しているようにも思えます。
 森美術館、横浜美術館、日本民藝館、東京国立近代美術館など、いま見るべき展示のひとつに加えていただければ幸いです。皆さまのお越しをお待ちしております。



陽が落ちてからのキャンドルによる
イルミネーション。バレンタインの
デートスポットにも最適。    

高島野十郎的な、ゲルハルト・リヒター的な。


 


 
 
 
 
 
 


 

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