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2016年5月16日月曜日

土器土器サンデー

20(金) 仕入のため開店は14時になります。

22(日)・23(月) 荒ぶる本堅地職人、相田雄壱郎氏による金継ぎ教室開催のため
18時に閉店。言葉がリゾームのように錯綜する相田氏のブログ「雄壱郎雑記」を
ぜひ読んでください。

28(土) 『詩について・対話篇 8回目』開催のため店舗営業は16時半まで。


 大江戸骨董市の出店申し込みに間に合わなかったせいで、苦しまぎれの取ってつけたような企画『あぶれ者の骨董市』が、昨日(15日)当店にて開催されました。国際フォーラムの骨董市の出店にあぶれるというのは、死活に関わる重大事なので、急遽実施することにしたのでした。突然の申し込み締切りだったので、他にあぶれた業者もいるだろうと同士を募ってみたのですが、一切音沙汰なし。聞けば、みなさん普通に申し込みは済ませてあって、いつも通り出店するとのこと。生き馬の目を抜く業界をサヴァイヴするだけあって、さすが誰もが盤石の備えだと感心しました。
 日曜日の八丁堀は、人跡未踏の土地のように人影が無いので、店舗での骨董市開催は無理があるだろうと半ば諦め気分でしたが、意に反して多くの方に足を運んでいただきました。どうやらフォーラム出店者のみなさんが、お客さんにこちらにも行くようにと案内してくださったようで、まさしく有り難さに涙溢るる事態でした。
 
 
せっかくなので、店内のディスプレイを骨董市っぽくしてみた
のでした。中津川フォークジャンボリー的な不穏さを醸し出す
ために、BGMは加川良。                 


新潟県の馬高・三十稲場遺跡出土の縄文土器片の
つかみ取り大会を実施。大会といっても参加者は1名。
いい土器片をごっそりゲットしていきました。

 というわけで、なんとか日銭を得ることができたのでした。ご来店のお客様、宣伝告知にご協力くださった皆さまに感謝申し上げます。
 

 さて、来月6/9(木)〜12(日)は『点店』というイベントを開催いたします。新富町・八丁堀・新川・東日本橋に点在する古道具を売買する店舗が、身を寄せ合って一つの祝祭空間を形づくる壮大かつささやかな企画。スケジュールの調整をしていただけましたら幸いです。


逆光は教草・じんたの各氏と共演。というか狂宴。

 では、今週もどうぞよろしくお願い致します。









 

2016年5月10日火曜日

八八八

15(日) 大江戸骨董市の出店にあぶれてしまったので、店舗で
『あぶれ者たちの骨董市』を開催予定。他にあぶれた業者の方が
いらしたら、ぜひ当店でご一緒に。

22(日)・23(月) 会津若松の人間風車、相田雄壱郎氏による金継ぎ教室開催のため
18時に閉店。体中に国産漆が流れていると言われる相田氏のブログ「雄壱郎雑記」を
ご一読のほど。

28(土) 『詩について・対話篇 8回目』開催のため店舗営業は16時半まで。


 ひとつ一から出直さなくてはと急に思い立ち、どうせならいっそ五千年ぐらい前から出直そう、ということで長野県茅野市の尖石縄文考古館に行ってきました。新宿から高速バスで3時間、上諏訪まで行き、中央本線でひと駅茅野に戻り、そこからメルヘン街道バスで20分。降り立てば、すでに標高千メートルを越えた地なので、清澄な空気が辺りに漲っています。八ヶ岳山麓の台地に広がる尖石遺跡は、ここら一帯のみならず縄文文化全体を象徴する遺跡と言われています。
 

とても素敵な物件。突然の渡辺篤史の来訪にも
 なんら慌てる必要はない。          

当地で出土した土器を惜しげもなく並べて
います。並べまくっています。     

 考古遺物の展示を見ていつも思うのは、もし「スタートレック4」的なタイプワープでこの時代に行ったとしたら、果たして集落のみんなとうまくやっていけるかということです。ドングリばかりじゃなくてたまにはグラタンとか食べたいなーなどと、わがままを言うつもりはもちろんありませんが、分担作業をこなせずに迷惑をかけてしまいそうで気が引けます。イノシシ猟は危ないから土器作りに廻そうと、首長的な人にせっかく気を遣ってもらったのに、土の捏ねもろくに出来ずに、イラついた親方に石斧でぶん殴られやしないかとヒヤヒヤしたり。争いのない相互扶助の社会と言われる縄文文化ですが、現代人の鈍い感性に、さすがの彼らも少しムッとしやしないかと心配です。

遺跡の名前のもとになった尖石。当時は  
磨製石斧を作るときの砥石として使っていた
    のではという説もあります。           


 それにしても、これだけの豊穣な遺物が土の下に眠っていたのを思うたびに、不思議な気持ちになります。文字なき世界の詩句であり音階である土器や土偶の文様・造形のすべてを目にしたとき、かつて知られることのなかった壮大なオーケストレーションが全貌を顕わすのではないか、という夢想に浸ってしまいます。あまり夢想に浸りすぎたため、考古館の近くにある温泉でサウナに入り、尻をヤケドしてしまったくらいです。
 
尻をヤケドしたのでは?と思わせる造形。

大河原邦男の造形センスを五千年前に
先取り。             

 先日の八戸えんぶりのイベント、今回の八ヶ岳、そして八丁堀。この「八」の頻出は、何かの予兆でしょうか。今後の末広がりの暗示ならばいいのですが、八方ふさがりだと困ります。などと考えながらバスで新宿に戻り、思い出横丁に寄って岐阜屋でワンタンメンを食べてから家に帰りました。
 というわけで、今週もどうぞよろしくお願いいたします。




 



2016年5月5日木曜日

デイドリームネイション

8(金) 行商や仕入などで開店は15時頃になりそうです。

15(日) 大江戸骨董市の出店にあぶれてしまったので、店舗で
『あぶれ者たちの骨董市』を開催予定。出店業者様募集中です。

22(日)・23(月) 会津の暴れ馬、相田雄壱郎氏による金継ぎ教室開催のため
18時に閉店。血で書かれていると言われる相田氏のブログ「雄壱郎雑記」を
ぜひ。


 


 世間が大型連休と呼び慣わす状況においては、昼時の八丁堀界隈もいつもと違う様子です。人の気配もなく、風もなく、じりじりと降り注ぐ陽の光だけが、かろうじてここがうつつの世界であることを知らせてくれます。でなければ、自分が白昼夢に迷い込んだまま出られなくなった夢の旅人だと信じてしまいそうです。もっともこんな商売を続けていること自体、夢から抜け出せなくなった証しなのかもしれません。
 視線を走らせれば、網膜を横切る青い閃光。と思ったら、ゆで太郎の看板でした。昼ご飯を食べようにも、開いてる店といえば、コンビニかゆで太郎ぐらい。仮に他に開いている店があっても、もはやコンビニかゆで太郎しか使ってないので、特に不便はないのですが。
 日常の喧噪から離脱したいというのならば、これほどふさわしい場所はないかもしれません。皆さまのお越しをお待ちしております。


夢への扉の向こう側には・・。

 











2016年5月4日水曜日

予め祝うこと

15(日) 有楽町東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店の予定でしたが、
油断していたら定員満数になってしまいました。
そこで書肆逆光店舗にて『あぶれ者たちの骨董市』を開催いたします。
15(日)の大江戸骨董市にあぶれてしまった業者で出店希望の方がいらしたら、
メールでご連絡ください。

6/9(木)〜12(日) 中央区銀河英雄伝説『点店』の三回目が開催されます。
皆さまのお運びをお待ちしております。

サンパウロ育ちのマイク・クリーガーがソフトウェア開発を担当した
インスタグラムに店舗の商品を少しずつアップしています。
あわせてご覧ください。こちらから→👃 


 詩人に最も残酷な月と詠われた4月の最終日、日本各地の民俗芸能の情報をネットで発信する「仔鹿ネット」の発表会『仔鹿のまなざし』が当店にて開催されました。第一回目となる今回は青森県八戸市の「えんぶり」について。田畑の地ならしに使う柄振り(えぶり)が名称の由来というだけあって、田楽から派生した五穀豊穣・無病息災を祈る芸能です。現在のえんぶりには、多分に明治近代以降の西洋体育的な動きが加味されているかもしれませんが、それでも所作のところどころに、民族の最古層から響いてくるものが感じられ、怖いようなかっこいいようなものを見た気になります。
 今回の映像は、サイトを運営する高橋亜弓さんが、2月に行われたこの祭りの取材のために、数日間現地入りして撮ってきたものです。見るという行為は全てを公平に視界に収めることができないわけで、ということはつまり撮影された画像とは、撮った人間の身体性や生活史の刻印であり、その視線の質的な厚みこそが、イベントタイトルにも使われている「まなざし」と言えるのかもしれません。
 30以上あるえんぶり組の中、高橋さんが張り付いたのは八太郎と呼ばれる組です。縁を取り持ったのは、韓国太鼓を学ぶチェ・ジェチョルさんと八戸を拠点に活躍するアートコーディネーターの今川和佳子さん。ジェチョルさんは、八太郎の高橋常男通称たかつねさんが踊る恵比寿舞の素晴らしさに魅せられて、ついに今年のえんぶりに参加してしまった人です。恵比寿舞というのは、大衆芸能として後になってえんぶりにくっついたものだそうで、たいていの組では子供が担当するこの舞を、八太郎組ではたかつねさんが踊ります。型に沿った子供達の踊りとは違って、酸いも甘いも噛み分けたたかつねさんの舞は、登場するや一挙に場の空気をさらいます。まさに民俗芸能界のロバート・ジョンソンと言っても過言ではありません。
 映像を見ていると、こうして場面が映っているのは、高橋さんがかつてそこにいたからだ、という当たり前の事実に不意に驚かされます。居合わせた現場の親密な空気を、高橋さんのまなざしは確かに捉えていて、それが仔鹿ネットの映像がありきたりのドキュメンタリーと一線を画す点なのだと思いました。
 というわけで、仔鹿ネットの今後の活動になにとぞご注目ください。そして、言祝ぎが大いに振り撒かれた後のめでたい逆光にもぜひお運びください。


たかつねさんへの愛が昂じるあまり、背中に
たかつねさんの図像が憑依した仔鹿ネットの
主宰者高橋亜弓さん。          


ふだん訳の分からないものが並んでいるテーブルには
当日八戸の市場から直送された旨いものどもが犇めき
あっています。                 

隅でおそらく塩辛を取り分けていると思われるところの
ジェチョルさん。                 

人々。

たかつねさん&孫。唐突に実現した舞による
即興セッション。            
  

 
 


2016年4月26日火曜日

四月の風

27(水)・29(金) 漆まみれの人生劇場「雄壱郎雑記」でお馴染み、
相田雄壱郎氏による金継ぎ教室開催のため18時閉店

30(土) 日本全国の民俗芸能を独自の目線で紹介する「仔鹿ネット」の
発表会を当店にて緊急開催。題して『仔鹿のまなざし』。第一回目は
八戸のえんぶりについて。参加ご希望の方はこちらから→入っていただき、
予約フォームよりご応募ください。「参加予定」をクリックするだけでは
予約完了になりませんので、ご注意のほど。

6/9(木)〜12(日) 中央区に星くずのように散らばる古道具店をつなぐイベント
点店』がまたもや開催されることになりました。
今回は第三回目、4店舗9業者の参加です。

マサチューセッツ生まれのケヴィン・シストロムが開発したインスタグラムに
店舗の商品を少しずつアップしています。あわせてご覧ください。
こちらから→👃

どうぞよろしくお願いいたします。


 突然、もはやどうにもならない!という思いで胸がいっぱいになり、あてもなく店を飛び出すも、小腹が減ったので、ゆで太郎でかきあげ丼セット(500円)を食べたら、我に返りました。単に空腹だったようです。途中、理容「花菱」の店先で、店主のおじさんが丹精込めて育てた藤の植木が、満開になっているのを見ました。
 

植えてから20年、花を咲かせるようになって15年
ぐらいだそうです。             


 都内で藤の名所といえば亀戸天神ですが、盛りの時期はレッスルマニア開催時のマディソン・スクエア・ガーデン並みの混雑で、とても花見と洒落込むどころではありません。
規模の大小を云々しなければ、小さいながらも見事な藤の木を見られる八丁堀二丁目に足を運び、その後当店で古本なり古道具なりを物色したらいいじゃないですか!と声高に且つ捨て鉢気味に叫びたくなる4月のある日、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
 すでに月末に差し掛かりましたが、予定しているイベントが上記の通り二つあります。ひとつは、すでに第一回目が先月に行われた金継ぎ教室です。漆工界のディック・マードック、相田雄壱郎氏が講師を務めるワークショップ。こちらは定員満数になっております。
 もうひとつが、今も残る民俗芸能を求めて、全国津々浦々を駆け巡り記録する「仔鹿ネット」という情報サイトの発表会です。今後回を重ねていく予定ですが、まず一回目は青森県八戸市の「えんぶり」。田植え踊りから派生した、五穀豊穣などを寿ぐ予祝芸能と呼ばれるものです。田植えのときに使う柄振(えぶり)が転訛してえんぶりになったと言われています。打合せの時に断片映像を見せてもらいましたが、観光行事化していると言われながらも、不思議な洗練と仄かな気味悪さを垣間見ることができて、目が離せなくなりました。

こんなふうに見ると確かに観光行事のようですが・・ 
むやみに大きな烏帽子を被っての踊りは、理不尽なほど
身体的負荷も大きいはずです。           

レミー・キルミスターを偲んでのヘッドバンギング?
と思わせるほどに激しい舞。           

この道化役の洗練ぶりは要注目です。

 というわけで、残りわずかな4月もどうぞよろしくお願いいたします。

 

 


 


 

2016年4月11日月曜日

いざ最悪の方へ

17日(日) 有楽町東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店
22日(金) 仕入のため14時開店
27日(水)・29日(金) 筆鋒鋭い「雄壱郎雑記」が好評の相田雄壱郎氏による金継ぎ教室開催のため18時閉店

なにとぞよろしくお願いいたします。


 長野県松本市まで行商に行ってきました。日帰りでは苛酷なので、高速バスで前日入り。途中、諏訪近辺の事故で一般道へ迂回。低速バスになってしまいましたが、街中にありながら山懐にいだかれて尚且つ湖に近いという、豊かな土地柄を窺い知ることができて、これなら縄文人の住みたい土地ランキングの上位に入るのも頷けるなーと思った次第です。
 定刻から1時間遅れで松本に到着、宿に荷物を預けてから城下町散策に出かけました。まずは腹ごしらえですが、野麦で蕎麦食って直後にマサムラでお茶という暴挙に出てしまいました。これが松本マジックというやつでしょうか。
 その後バスで松本民芸館へ。『雑器の美 日本のやきもの』という企画展を今月17日まで開催中です。洗馬、染屋、入道といった、いきなり目の前に出されても何焼きか言い当てられそうもないものばかり並んでいました。特筆すべきは、ここを訪れるすべての人を震撼させずにはおかない、松代の「ひよこの水やり」でしょう。なんでまたこんなものが地球上に産み出されてしまったのか、大いなる疑問符を消し去ることができません。


これが伝説の「ひよこの水やり」。



 陳列されているものが駒場に比べると遥かにユルいので、見ている間は薄笑いを禁じ得ないのが、ここのいいところかもしれません。展示物撮影可というのも素敵です。

シーサー

奪衣婆

松本民芸館外観

 いい陽気だったので、復路はとぼとぼと花見がてら歩いてみました。来るときにバスから見えた松本城の桜もすごかったのですが、そこらに植わっている樹もモッサリと花をつけて、まさにこの日が見頃といった感じでした。


いつだってトンガっている常念岳を    
見つつ花吹雪に塗れながら歩いていました。

モサモサ

国宝


 さて次の日の蚤の市は、木工作家三谷龍二氏のギャラリー「10センチ」にて開催。当店史上稀に見る大惨敗で、松本の地にくずおれたまま二度と起き上がることも適わないので、このまま三谷さんに食わせてもらって生きていくことも考えましたが、なけなしの気力を振り絞って、またもマサムラへ。ベビーシューとショートケーキを食べたら割とあっさり復活しました。




 というわけで、今は八丁堀に戻っております。今週もよろしくお願い致します。


仕入も少しできました。








2016年4月8日金曜日

嗚呼鳴子

9日(土) 臨時休業
10日(日) 長野県松本市大手二丁目にある木工作家三谷龍二氏のショップ『10センチ』脇の空き地で開催される10センチノミの市に出店
17日(日) 有楽町東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店
27日(水)・29日(金) 「雄壱郎雑記」でおなじみ相田雄壱郎氏による金継ぎ教室開催のため18時閉店

どうぞよろしくお願いいたします。


〜前回までのあらすじ〜
 鳴子温泉までの道中で、ひとりみちのく膝栗毛を繰り広げる八丁堀の古物業者。途中駅から乗り込んだ列車内で、ついにこの旅の黒幕と合流するのだった・・。

 駄文に引きずり回されて、本当なら12行ぐらいで済みそうなネタがいつまでたっても終わらず。もう無理やりにでも今回で終わらせます。これと言って意味のない三部作、ついに完結です。
 列車に乗り込んで中を見回すと、ひとり掛けの席に座っているA氏がすぐに見つかりました。ボックスシートに移って向かい合わせに座り、車窓の外の名前も知らない山を目で追っていたら、鳴子温泉に到着。まずは腹ごしらえに、駅からほど近い一軒の蕎麦屋に入りました。すでに何度もこの地に赴いているA氏行きつけの老舗です。ゆで太郎以外の蕎麦屋に動揺したのか、割と高い鴨せいろを注文してしまいました。
 宿泊する旅館が迎えを出してくれるとのことなので、いったん駅に戻り、ローマ闘技場のようなすり鉢状の作りになった待合室に行きました。大画面TVを見られる設えになっているのですが、温泉の硫黄成分でTVがすぐに故障してしまうので、今では外されたままになっています。懐かしのふるさと創生事業の交付金で設置されたとのことですが、もらったお金を上手く使いこなすというのは、やはり難しいものでしょうか。

「なる子ちゃん」の看板だけがやたらと
     目立つ鳴子温泉駅前。            

 しばらくすると迎えの車が到着。側溝から立ち上る湯気の間を抜けて、今夜の宿を目指します。山に抱かれた隠れ家のような宿だと聞きましたが、たしかに広い敷地に簡素な看板がひとつあるだけで、それを見落としたら普通の民家のようです。まったく隠れ家ぶってないところが、真の隠れ家なのかもしれません。部屋に通されて座り込むと、頭頂葉に留まっていた疲労が全身に下りてきて、そのまま永遠の眠りにつきそうでした。
 A氏が自分を鳴子に連れ出したそもそもの理由は、この宿のすぐ近くに工房を構える漆芸家のO氏に引き合わせるためなのです。引き合わせてどうするつもりなのかは、A氏にいろいろ画策があるようなので、また追ってお知らせすることになると思いますが、まずはわけの分からないものに囲まれた空間から脱出して、現役の凄腕の職人の話でも聞いておけという配慮かもしれません。どんな話であったか、いちいち描写していたら、13章ぐらいになってしまいそうなので割愛します。朱塗の飯椀をひとつ頒けていただいて宿に戻りました。

欅の本堅地。 
店で撮ったので、塗り肌に外の     
     山口封筒店が映り込んでいます。         
かつて柳宗理が「ご飯が美しく見える」と
    大人買いしていったそうです。         

 次の日、A氏は別件で石巻へ。ひとり残されるも、帰りも夜行バスなので、それまで時間をつぶさなければいけません。しかしA氏の根回しと宿の主人のご好意で、チェックアウト後も部屋にいてよし、更に温泉入り放題、時間が来たら駅まで送るという国賓のような待遇を得ることになりました。ここはお言葉に甘え、つげ義春魂を全開。ひとしきり部屋でごろごろしてから、温泉にダイブ。鳴子は駅前こそ硫黄の匂いに満ちていますが、場所により違った泉質を持つ温泉郷だそうで、実際この宿の湯は単純泉の弱アルカリ性です。ぬるめなのでいくらでも入っていられて、いっそここで暮らそうかと思ったほどです。
 湯から出た後はそぞろ歩き。お腹が空いたのですが、周りには外食できるところが見当たりません。一軒ある中華料理屋は休み。ようやく見つけたのが、トラック野郎御用達みたいな、ふだんは見過ごしがちな構えの店ですが、勇気を出して入って塩ちゃんぽんを食べました。

この地面の盛り上がりは古墳です。 

伊達政宗の時代に戦の目印にと植えられた
との謂れがある杉のひとつ。      


 日が暮れて、ご主人に駅まで送っていただき、オススメの蕎麦屋で天ぷら蕎麦を食しました。外に出てぶらぶらしていると、オフシーズンの夜の温泉街の侘しさで鼻血が出そうになりました。さっきいい気になって、お湯に浸かり過ぎたのかもしれません。

夜のこけし屋。

 この旅で得た教訓は、夜行バスを使うのは、せいぜい行き帰りのどちらかにしておいた方がいいということでしょうか。とにかく凄まじく疲れましたが、関東では入手できない飯椀を得ることができたのは素晴らしい収穫でした。
                                 (おすぃまい)