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2016年4月8日金曜日

嗚呼鳴子

9日(土) 臨時休業
10日(日) 長野県松本市大手二丁目にある木工作家三谷龍二氏のショップ『10センチ』脇の空き地で開催される10センチノミの市に出店
17日(日) 有楽町東京国際フォーラムの大江戸骨董市に出店
27日(水)・29日(金) 「雄壱郎雑記」でおなじみ相田雄壱郎氏による金継ぎ教室開催のため18時閉店

どうぞよろしくお願いいたします。


〜前回までのあらすじ〜
 鳴子温泉までの道中で、ひとりみちのく膝栗毛を繰り広げる八丁堀の古物業者。途中駅から乗り込んだ列車内で、ついにこの旅の黒幕と合流するのだった・・。

 駄文に引きずり回されて、本当なら12行ぐらいで済みそうなネタがいつまでたっても終わらず。もう無理やりにでも今回で終わらせます。これと言って意味のない三部作、ついに完結です。
 列車に乗り込んで中を見回すと、ひとり掛けの席に座っているA氏がすぐに見つかりました。ボックスシートに移って向かい合わせに座り、車窓の外の名前も知らない山を目で追っていたら、鳴子温泉に到着。まずは腹ごしらえに、駅からほど近い一軒の蕎麦屋に入りました。すでに何度もこの地に赴いているA氏行きつけの老舗です。ゆで太郎以外の蕎麦屋に動揺したのか、割と高い鴨せいろを注文してしまいました。
 宿泊する旅館が迎えを出してくれるとのことなので、いったん駅に戻り、ローマ闘技場のようなすり鉢状の作りになった待合室に行きました。大画面TVを見られる設えになっているのですが、温泉の硫黄成分でTVがすぐに故障してしまうので、今では外されたままになっています。懐かしのふるさと創生事業の交付金で設置されたとのことですが、もらったお金を上手く使いこなすというのは、やはり難しいものでしょうか。

「なる子ちゃん」の看板だけがやたらと
     目立つ鳴子温泉駅前。            

 しばらくすると迎えの車が到着。側溝から立ち上る湯気の間を抜けて、今夜の宿を目指します。山に抱かれた隠れ家のような宿だと聞きましたが、たしかに広い敷地に簡素な看板がひとつあるだけで、それを見落としたら普通の民家のようです。まったく隠れ家ぶってないところが、真の隠れ家なのかもしれません。部屋に通されて座り込むと、頭頂葉に留まっていた疲労が全身に下りてきて、そのまま永遠の眠りにつきそうでした。
 A氏が自分を鳴子に連れ出したそもそもの理由は、この宿のすぐ近くに工房を構える漆芸家のO氏に引き合わせるためなのです。引き合わせてどうするつもりなのかは、A氏にいろいろ画策があるようなので、また追ってお知らせすることになると思いますが、まずはわけの分からないものに囲まれた空間から脱出して、現役の凄腕の職人の話でも聞いておけという配慮かもしれません。どんな話であったか、いちいち描写していたら、13章ぐらいになってしまいそうなので割愛します。朱塗の飯椀をひとつ頒けていただいて宿に戻りました。

欅の本堅地。 
店で撮ったので、塗り肌に外の     
     山口封筒店が映り込んでいます。         
かつて柳宗理が「ご飯が美しく見える」と
    大人買いしていったそうです。         

 次の日、A氏は別件で石巻へ。ひとり残されるも、帰りも夜行バスなので、それまで時間をつぶさなければいけません。しかしA氏の根回しと宿の主人のご好意で、チェックアウト後も部屋にいてよし、更に温泉入り放題、時間が来たら駅まで送るという国賓のような待遇を得ることになりました。ここはお言葉に甘え、つげ義春魂を全開。ひとしきり部屋でごろごろしてから、温泉にダイブ。鳴子は駅前こそ硫黄の匂いに満ちていますが、場所により違った泉質を持つ温泉郷だそうで、実際この宿の湯は単純泉の弱アルカリ性です。ぬるめなのでいくらでも入っていられて、いっそここで暮らそうかと思ったほどです。
 湯から出た後はそぞろ歩き。お腹が空いたのですが、周りには外食できるところが見当たりません。一軒ある中華料理屋は休み。ようやく見つけたのが、トラック野郎御用達みたいな、ふだんは見過ごしがちな構えの店ですが、勇気を出して入って塩ちゃんぽんを食べました。

この地面の盛り上がりは古墳です。 

伊達政宗の時代に戦の目印にと植えられた
との謂れがある杉のひとつ。      


 日が暮れて、ご主人に駅まで送っていただき、オススメの蕎麦屋で天ぷら蕎麦を食しました。外に出てぶらぶらしていると、オフシーズンの夜の温泉街の侘しさで鼻血が出そうになりました。さっきいい気になって、お湯に浸かり過ぎたのかもしれません。

夜のこけし屋。

 この旅で得た教訓は、夜行バスを使うのは、せいぜい行き帰りのどちらかにしておいた方がいいということでしょうか。とにかく凄まじく疲れましたが、関東では入手できない飯椀を得ることができたのは素晴らしい収穫でした。
                                 (おすぃまい)







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