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2017年10月2日月曜日

葡萄、漆、人生

10/5(木)・6(金) 展示会の搬入・陳列作業のためお休み
10/7(土)〜15(日) 小野寺公夫の仕事『漆の声、木の文法』

 売上げの多少の如何を問わず、パフェを食べることをあらかじめ宿命づけられた者たちが集う場所、大江戸骨董市。日曜日、素晴らしき秋晴れの下、有楽町まで行商に出かけてまいりました。当店にとっては、8月第1週目以来の有楽町です。久しぶりの出店で、大切なことをいろいろと忘れている気がしたのですが、もう何を忘れているのかさえ思い出せないので、そんな憂い事は潰れた銀杏の匂いが混じる秋の風ともに空へと放り投げてしまいました。たくさんの方にお運びお買い上げいただき感謝申し上げます。
 というわけで、比較的意気揚々と浅草フルーツパーラーゴトーへ。夏の盛りに出向いたときには、2回ほど完売による早じまいに遭ってしまい、こちらも久しぶりです。この時期はぶどうのパフェ。初物七十五日ということで、旬のものを食べて長生きでもしようという腹づもりですが、浮世の厳しさに身を窶してるくせに、このうえ長く生きてどうするのかというペシミズムも頭をよぎります。しかしテーブルへと運ばれる葡萄たちの輝きを目にすれば、そんな思いは瞬殺されます。
 注文したのは『ルビーロマンの入った14種のぶどうのパフェ』税込1,680円。三段に構成され、各位置に的確にそれぞれのぶどうが配置されています。一段目を見ても、ナイアガラ、ロザリオ・ビアンコ、クイーンニーナ、巨峰、甲斐路、スチューベンと、巨峰以外は人生で一度も聞いたことのない品種ばかり。今回はカウンターに座ったので、パフェの出来上がるまでがよく見えました。完璧な分業体制によってパフェが徐々に構築されていく厨房の様子は、まるでルネサンス期の職人の工房のようでした(見たことありませんが)。

 三段といえば、10/7(土)より当店にて開催される小野寺さんの漆器は、いわゆる本堅地と呼ばれる輪島流儀の下地による堅牢さを備えています。下地とは漆を塗る前の木地を丈夫で平滑にするための作業で、この下地付けを三回行うのを三辺地と言います。
 と、パフェの話を無理やり自分の店の展示会に結びつけたりして、浅ましい商魂が見えすいておりますが、漆器(特にお椀)の丈夫さは下地にかかっているので、そのあたりを気にしてみると、漆器の見方も少し変わってきて楽しくなるかもしれません。塗り立てのお椀なんかは、どれもピカピカしてて同じに見えそうですが、下地付けに手間がかかっている器は、張り詰めたような力感が漲っています。漆のことで気になっていることがあったら、満を持して来京される小野寺さんにぜひ尋ねてみてください。

命の塊のような、まぶしいほどの煌めき。


写りが悪くてすみません。去年買って1年〜1年半ほど
使っている小野寺さんのお椀です。使い込むうちに茜色に
変わっていくと言いますが、当初の色をもはや覚えていません。
送られてくる新しいものを見れば、その変化に驚くでしょうか。


骨董市ですだちをいただきました。人生の酸いも甘いも
噛み分けた同業氏からです。            

 

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