齢70を過ぎてそろそろ引退も視野に、という頃合いで催した前回の個展が思いもかけない形で小野寺さんの職人魂に火をつけたようで、地元にいては接点のない層の人々が、自分の作った漆器を真剣に選ぶのを目の当たりにして、なかなか枯淡の域になんか達していられないと思ったのかもしれません。まさに漆器業界のランディ・クートゥア、工芸世界のマノエル・ド・オリヴェイラといった趣きです。もっとも小野寺さんは職人ですから、毎年の新作で人の耳目を集めるというのではありません。並ぶ器はオールタイムベストなので、顔ぶれは同じと云えば同じなのですが、それでも質実堅牢な朱塗りの飯椀がずらりと並ぶ様を見れば、志ん朝の抜け雀が何度聞いても面白いように、同じものを持っているのにまた欲しくなるかもしれません。
と言いつつ、新しい作品にも挑戦しているのが小野寺さんの若々しいところで、今年鳴子に伺った時には、二月堂机や黒塗りのえらくカッコいい盆を見せてもらいました。このあたりの古典と創作の絶妙な加減も、楽しみにしていただきたく思います。7(土)・8(日)・9(月・祝)には小野寺さんが在店されます。東京の喧噪が苦手で来京の依頼にはなかなか首を縦には振らない人ですが、昨年の状況を見れば来ないわけにいきません。この機会に、半ば監禁状態にされた小野寺さんとぜひお話しをしてください。前回品物をお買い上げくださった方は、それをお持ちいただいて、ふだんどんなふうに使っているかを教えていただけると、小野寺さんもきっと東京にいることを忘れて話が止まらなくなることでしょう。
というわけで、どうぞ皆さま万障お繰り合わせの上お運びくださいませ。
今回のDMです。削ぎ落とされたデザインと漆器の豊穣なイメージの 対比が美しい仕上がりです。 |
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