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2014年6月7日土曜日

野生の思考

 「Impasto | インパスト 厚塗り 町村勝己」展が中央区八丁堀のギャラリープラグマタで始まっています。今回も隙を縫うようにして展示を見てきました。プラグマタは当店の1つ上の階にあるので、思い立ったら、それこそ一陣の旋風のように見て帰ってくることができるのです。ただ小さいビルですので、あまりに急激なモーションは、打撲や建物の損壊を誘発するおそれがありますので、くれぐれもご注意くださいませ。
 展示タイトルの通り、町村さんの作品の特徴は器にごってりと盛られた化粧土です。とはいえ、くどい感じはなく黒の素地がむしろすっきりとした感じを与えます。が、実はその素地も黒く化粧を施されているのだそうです。幾重にも塗られた土の厚みが、持った時に手に跳ね返ってきて、心地よい持ち重りをもたらします。用の器の具象性とオブジェの抽象性を兼ね備えた、絶妙な存在感を持った作品です。
 
 写真は店内準備中の時のもの。完成形は実物でご覧いただきたく思います。身の廻りにあるもので装飾して、展示の世界観を表現するオーナーのペトロスさんの言わばブリコラージュの手腕が楽しめます。







開放系

 昨日は開店前に、仕入とレジャーを兼ねて、東京古書会館で開催中の古書即売会へと行ってきました。人はなぜこんなにも古本を購入しないではいられないのか、と思い悩んでしまうほどに、山積みの本を買い込んでいる姿を多数目撃しました。きっとすべての人が買った本のすべてを読むわけではなく、むしろ一度も目を通されることのない本も多く存在するのだと思います。甚だしい無駄遣いのような気もしますが、これはどこか、インターネットを特に見るでもないのに、いつまでもつなぎっぱなしにしている状況に似ていると思いました。デジタルであれアナログであれ、とりあえずいつでもアクセス可能の状態にしておいて好きな時に接続できるようにしておかなければ気が済まないみたいな。それは電力の浪費であり場所塞ぎなわけですが、当人にしてみれば、自分の中にある外部との連続線を切断したくないという、なんとなくの心持ちがあるのだと思います。
 というわけで、当店も開かれた外部として皆さまに多くのアクセスをいただきたく思っているのですが、端からは閉じてるのか開いてるのか、よくわからない有様です。店自体はたいてい開いておりまして、鋭意営業中です。雨の日の暇つぶしに、ぜひお越しください。

『ブックストア ニューヨークで最も愛された書店』
リン・ティルマン 宮家あゆみ訳 晶文社
2003年1月30日初版 帯 
かつてN.Y.に存在した独立系書店の顛末記
SOLD OUT

『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』
ジェレミー・マーサー 市川恵里訳 河出書房新社
2010年5月30日初版 帯 カバー溝凹みあり
「見知らぬ人に冷たくするな変装した天使かもしれないから」
がモットーのセーヌ川のほとりの書店の話                             SOLD OUT     

『オデオン通り アドリエンヌ・モニエの書店』
アドリエンヌ・モニエ 岩崎力訳 河出書房新社
2011年6月30日復刻新装初版 帯
ジョイス、ヴァレリー、ベンヤミンらが通った伝説の書店
SOLD OUT











 
 
 

2014年6月5日木曜日

偶成

 本日午前、関東甲信・北陸の梅雨入りが発表されました。梅雨入り宣言すると得てして空梅雨だったという年も多いですが、今年は宣言通り早々に梅雨らしい長雨が続くようです。鬱陶しい梅雨が明ければ猛暑がやって来て、しばらくは残暑が続き、今どきは10月の初めぐらいまでは暑かったりしますから、早く10月中旬あたりになってほしいものです。
 雨が降り続けば空気もじっとりとして、気分もふさいできて、休みの日も家に閉じこもりがちになります。そんな時こそ部屋でゆっくりと小説など読んでみるのはいかがでしょうか。と、とってつけたように本屋の売口上ようなことを言ってしまいました。
 音楽療法で「同質の原理」というのがあって、落ち込んでいる時に明るい音楽を聴くのは逆効果で、むしろ短調の悲しげな音楽を聴いた方が、沈んだ気持ちと同調して心が安らぐのだそうです。その理屈で、梅雨の鬱陶しさとマッチする小説を選んでみます。
 
『秋立つまで 他三編』嘉村礒多
岩波文庫 2001年2月22日第5刷
リクエスト復刊帯       
SOLD OUT


 嘉村礒多(1897〜1933)は、いわゆる私小説という自分の身辺に起きたことを題材にした小説を書く人の中でも抜群に陰鬱です。嘉村の小説は、妻子を故郷に棄て駆け落ちした女性と主人公(つまり嘉村本人)との極貧生活を書いたものがほとんどで、そこには郷里の親族との確執や己の因果な性格が生み出す悲しみが非情で苛烈な筆致で描かれています。その絶望かげんに圧し潰されそうになりますが、これ以上ない切羽詰まった状況に及んだところで、とつぜん切断されたように小説は終わります。読む者は茫然とするしかありません。
 

 葛西善蔵(1887〜1928)は嘉村の師匠にあたる人です。葛西の作風も私小説ですが、文章は嘉村よりずっと野放図で明るい感じがします。生活苦で我が子を連れて家を追い立てられるあたりは、本来ならばかなり悲惨なはずですが、いちいち行動が世間の尺度から度外れているので、読むとかなり笑えます。嘉村の勝手に思い詰めて、変なふうに行き詰まるところも実は笑えますが、葛西善蔵の場合は、素っ頓狂で頓珍漢な倫理感とそれに基づく行動が爆笑を誘います。
『子をつれて 他八編』葛西善蔵
岩波文庫 1995年10月5日第8刷
リクエスト復刊帯       
SOLD OUT
   同質の原理によれば、悲しみに浸りすぎていると戻ってこれないおそれがあるそうですから、あまり嘉村礒多ばかり読んでいるのは危険でしょう。嘉村→葛西の順番で読むのがいいと思います。小中学生の皆さんは、梅雨が明ければすぐに夏休みが始まりますね。読書感想文にはぜひこの2人の小説をおすすめいたします。


2014年6月4日水曜日

夢の果て

 東京都千代田区一ツ橋に拠点を構える、出版を主な生業とする株式会社から、本日1冊の漫画単行本が刊行されたことが、サイト上でニュースの1つとして取り上げられていました。漫画1冊で何をそんなに騒ぎ立てるのかと言えば、どうやらその発行部数が桁外れで、初版の時点ですでに400万部を超えるのだそうです。しかもそれほどの大部数発行も今回で11巻連続ということですから、気狂いじみて見える強気も実は、完璧に勝算ありの営業戦略なのでしょう。
 その漫画は、海賊である主人公の少年の成長譚を主軸に据えつつ、他のさまざまな海賊たちが各々の志向にもとづいた駆け引きをしながら困難な海路を乗り越えて、海賊の王になる資格を得るための宝を目指すという体裁をとっています。架空の世界のお話ですから、漫画を真に受けて、「将来は海賊になって、武装した船舶で沿岸周辺の町や村から収奪行為をしたいです!」という子供は現れないと思います。この漫画を読んで培われた情熱は、どんなふうに育つのでしょうか。「古本王に俺はなる!!」と叫ぶ子供がいたら面白いと思いますが、そんな王はやめときなさいよとも言いたくなります。


土製耳飾 縄文時代
直径5厚さ1,2センチ 
当店の在庫の中では、比較的お宝度が高いでしょうか。
SOLD OUT




参考文献『耳飾と古代のモード』
神奈川県立埋蔵文化財センター
財団法人かながわ考古学財団 

2014年6月3日火曜日

楽しい知識

 天気予報で言うところの「平年」とは、過去30年の平均値なのだそうです。今年の夏は平年に比べて暑くなると言われると、去年もおととしもあんなに暑かったのに、この上まだ暑くなるつもりかよ!と地球に対して息巻きたくなりますが、30年のスパンを考慮に入れれば、そんなものかとも思います。ここ数年は気候の上で、毎年なにかしらの異常事態が起きているようですが、この異常を数値に繰り込んだ「平年」が更新されれば、異常は平常になるわけです。
 古本業界に伝わるいくぶんか前の話を聞くと、売れすぎで品物がなくなって店が開けられないとか、車を毎年買い換えているとか、ついにビルを建ててしまったなど、サクセスにまつわる小ネタが満載です。今の状況からは考えられないことばかり。つまり、業界の平年が更新されてしまったわけです。ベテランの方々は、お先真っ暗のようなことを言いますが、後発隊から見れば今が普通です。普通の日々を大切に、ていねいな暮らしを心がけていきたい・・とか言ってると、そのうち犬死にするはめになるので、なにか策を打たないといけないわけですが。



『地球の上に生きる』アリシア・ベイ=ローレル
        深町真理子訳 草思社
  2006年10月24日新版第17刷 帯 カバー上少ヨレ
   SOLD  OUT
    




 

2014年6月2日月曜日

まわり道

 商いというのは正直一本で進んでいけば、いずれ信用というかけがいのないものを得ることができる、長い目で見てそれが結局は大きな得になるはずです。しかし世知辛い昨今だし、そんな鷹揚なことを言える徳も備わってないとすれば、生き延びるために少々の狡猾さを持ち合わせていなければならない。それなら、機を見て敏の頭の回転と行動力があるのかと言えば、断じてない!と言わざるを得ないのです。では、果たしてこの世で最もズルい生き物はなんだろう、できれば少しは見倣いたいものだ・・。そんな割とどうでもいいことを小さなビルの一室でぼんやりと考えて続けています。
 地球上でもっともズルい生き物、それはパンダではないでしょうか。あれはズルすぎます。ごろごろ転がっているだけで、三食を保証され24時間注意を払われ手厚い庇護を受けている。なにより多くの人たちからの寵愛を一身に浴びている様は、本人たちにしてみれば鬱陶しいのかもしれませんが、承認欲求にまみれた人間から見れば、羨ましいことこの上ありません。
 ではパンダに倣って、早速店内をごろごろと転がってみるべきでしょうか。そうすると、どうあっても向かいのビルのサラリーマンの皆さんの視界に入ってしまうでしょう。いかに他人に無関心なコンクリートジャングルでも、あからさまな不審行動を目にすれば、一応は警察に通報せざるを得ない。駆けつける警官。怪しげな物品に囲まれながら転げまわる姿から不審者と特定、その場で警察へ連行。その後ブログの文章を解析され、やはり不審者と特定。何罪なのか判然としないまま刑務所へ収監。なるほど、たしかにこれで三食昼寝付きは保証されたわけです。しかし古本・古道具で身を立てるというところからは、ずいぶんと迂回してしまいました。



地球上で最も狡猾な生物
一般の人間には決して手の届かない世界

パンダという呼称はレッサーパンダとジャイアントパンダの
2種を含みます。今回はジャイアントパンダ限定です。  
古染付五寸皿
明末〜清初 直径15,1センチ
1箇所虫喰いではない小ホツあり
SOLD OUT


パンダ関連グッズがないかと探しましたが、
見当たらず。同じ中国産ということで。  

宝物

 有楽町の東京国際フォーラムで開催された大江戸骨董市をのぞいてきました。日差しの強さが真夏のようで、おとといと昨日の暑さがそのまま累積したような体感温度でした。yahooの天気予報を見ると、東京の気温はおとといが29℃、昨日が32℃ですから、単純計算で今日は61℃あったわけです。暑いはずです。そんな地球上でも稀なほどに過酷な環境下にあっても、市は多くの人で賑わっていました。
 全国でも屈指の動員数を誇る市ですから、そのぶん出店者も多く、集まってくるものも多種多様です。「昔みたいにおもしろいものが出なくなった」と、知った風な紋切型は気にせず、仔細に見て廻れば、この手の催事ではかなり楽しめると思います。
 ものを見るのも楽しいですが、ものを買う人を眺めているのも同じぐらい楽しいものです。湯呑みや小皿なんかはいくらでも使い勝手がありますが、たまに何か得体の知れない機械の一部のような鉄の塊を手にして思案顔の人がいたりします。何に使っていたものか店主に聞いても「さあ。何か機械の一部でしょう。」と見たままのことしか言いません。値段を聞くと「2,500円」と微妙に高い。しかしその人は、鉄の塊を撫でさすりながら空を見つめて瞑想状態に入り、しばし自分の心と対話をしてから「これください。」と言ったりするのです。いったいそんなものを何に使うのか、買って家に持ち帰ってどうするのか、その人の部屋に16ミリカメラを設置して定点観測したくなります。そしてそのフィルムをもとにフレデリック・ワイズマンのようなドキュメンタリーを製作したい・・。
 さて、自分はといえば、今日は小さな鉋を手に入れました。刃が少し欠けているので、ポッケに入れて持ち歩いているときに職務質問されても、凶器準備集合罪に問われないというところがすぐれものです。樫の木味も抜群です。


小さな鉋
長さ9 巾3,9 厚さ1,5 刃巾3センチ
刃は1枚。押えの刃は元から無いタイプです。
 木目は追い柾目のようです。         
SOLD OUT